『高野豆腐店の春』藤竜也×麻生久美子、父娘愛を体現した人情ドラマ
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1134回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、現在公開中の『高野豆腐店の春』と『#ミトヤマネ』をご紹介します。
映画館で観たい!『高野豆腐店の春』 ~藤竜也、俳優人生60周年を飾る主演映画
大豆と水、にがりだけでつくられる豆腐。シンプルなのに味わい深く、ヘルシーだけれど栄養価は高い。いまでは世界中の人々に愛されている、日本食の代表選手とも呼べる食材です。
本作は、そんな豆腐にまつわる映画なのですが、先にお伝えしておきますと、本作のタイトルは「こうやどうふ」ではありません。
「たかのとうふ」店という小さな豆腐屋さんを営む父娘の日常を描いた、ハートフルな物語です。
『高野豆腐店の春』のあらすじ
尾道の下町に店を構える、高野豆腐店。店主の高野辰雄は娘・春とともに、まだ夜が明けないうちから作業場に立ち、地道に豆腐をつくり続ける日々を送っている。
ある日、かかりつけの医師から、心臓の調子がよくないことを告げられた辰雄。もともと患っている病とはいえ、気がかりなのは、出戻りの一人娘・春のこと。
そこで辰雄は、理髪店の繁や定食屋の一歩など、昔ながらの仲間たちに協力してもらって、春の再婚相手を探すことを決意。本人には内緒で、お見合い作戦を企てるが……。
『高野豆腐店の春』のみどころ
主演を務めたのは、『それいけ!ゲートボールさくら組』に続き、今作が2023年2作目の主演映画となる名優・藤竜也。
“愚直で職人気質”と聞くと、“頑固な親父さん”を想像する人も多いかも知れませんが、藤竜也が演じる辰雄はとてもチャーミング。8月27日に82歳の誕生日を迎え、俳優生活60周年。長年のキャリアに裏打ちされた温かみのある演技で、観客を魅了します。
そして娘・春役には、藤竜也とは26年ぶりの共演となった麻生久美子。
2人で黙々と豆腐をつくるシーンからは、セリフはなくとも二人三脚で店を守ってきた“歴史”を感じさせられ、まるで本当の親子のよう。
共演には中村久美、徳井優、菅原大吉、山田雅人、日向丈、小林且弥といったベテラン俳優たちが顔をそろえ、作品を賑やかに盛り上げています。
本作の舞台となっている広島県尾道市は、小津安二郎監督の『東京物語』や、大林宣彦監督の『転校生』をはじめとする“尾道三部作”など、日本映画の名作が生み出された“映画の聖地”として知られている場所。
瀬戸内海を一望できる風光明媚な町。そこに住む人々の暮らしを丁寧に紡いだ本作を、豆腐に例えて言うなれば……。あえて薬味は添えずに、醤油を少しだけ垂らしていただく冷奴!?
うん、大豆の甘みとにがりの風味。豆腐本来の旨味がたまりませんよね。そんな素朴な味わいに満ちた人情ドラマを、是非スクリーンで。
コチラも映画館で観たい!『#ミトヤマネ』 ~SNS社会の光と影を描いた新感覚スリラー
絶大な人気を誇るカリスマ・インフルエンサーの「ミトヤマネ」。誰でもミトの顔になれるという「ディープ・フェイク」アプリとのコラボ案件を引き受けたことから、事態は思わぬ方向へ動いていく……。
生成AI、SNS、ディープ・フェイク。目覚ましいスピードで変化するネット社会に蔓延る恐怖を描き出した『#ミトヤマネ』。
どこまでが現実で、どこからが虚構なのか。SNSの存在が当たり前となってしまった現代に生きる私たちにとって、見逃せない意欲作。
主演・玉城ティナのドール的な美しさは、特筆ものです。
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『高野豆腐店の春』
シネ・リーブル池袋、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開中
出演:藤竜也、麻生久美子、中村久美、徳井優、山田雅人、日向丈、竹内都子、菅原大吉、桂やまと、黒河内りく、小林且弥、赤間麻里子、宮坂ひろし
監督・脚本:三原光尋
製作:桝井省志、太田和宏
プロデューサー:桝井省志、土本貴生、山川雅
エンディングテーマ:エディ藩
企画・製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ
配給:東京テアトル
(C)2023「高野豆腐店の春」製作委員会
公式サイト https://takanotofuten-movie.jp/
『#ミトヤマネ』
2023年8月25日(金)から全国ロードショー
出演:玉城ティナ、湯川ひな、稲葉友、片岡礼子、安達祐実、筒井真理子
監督・脚本:宮崎大祐
音楽:valknee
製作幹事:メ~テレ、CHIPANGU
制作:MAM FILM
配給:エレファントハウス
(C)2023 映画「#ミトヤマネ」製作委員会
公式サイト https://mitoyamane.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/