効率重視「かんばん方式」の弱点が露呈 トヨタ国内全14工場で稼働停止

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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也と元経産省官僚で政策アナリストの石川和男が8月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。システム不具合で国内全14工場の稼働が停止したトヨタ自動車について解説した。

効率重視「かんばん方式」の弱点が露呈 トヨタ国内全14工場で稼働停止

新型カローラフィールダーを組み立てるセントラル自動車宮城工場の生産ライン=2012年5月11日 宮城県大衡村 写真提供:産経新聞社

トヨタ国内全14工場で稼働停止

トヨタ自動車はシステムの不具合を受け、グループ会社を含む国内14のすべての工場で稼働を停止する事態となった。仮の復旧作業を進め、8月30日から12の工場で稼働を再開させる。

飯田)部品の発注処理ができなくなったということです。

野村)すぐに頭をよぎったのは「サイバー攻撃ではないか」という懸念だと思います。トヨタは正式に「サイバー攻撃とは考えていない」と発表していますが、去年(2022年)の3月には、いわゆるランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の被害があり、稼働停止したではないですか。

効率のよい製造プロセスであるトヨタの「かんばん方式」 ~そこをサイバー攻撃されるとすべてが止まってしまう

野村)今回はどうであったかを考えなければいけないのですが、そこに通じて存在しているのは、「非常に効率のいい製造プロセスを構築している」ということです。

飯田)効率のいい製造プロセス。

野村)昔のように、部品がどこかでだぶつくことなどがないのです。「必要なものだけ必要なときに即時に流す」という仕組みになっているから、どこかで止まってしまうと、一気に全部が止まってしまう。

飯田)まさにそれがトヨタの「かんばん方式」ですよね。

野村)今回はどうかわかりませんが、逆に部品に関するところをサイバー攻撃されると、すべてが止まってしまうのです。

飯田)それがバレてしまった。

今後は「どれだけ早く復旧できるか」が求められる ~「復旧させる力をどれだけ回復するか」が今後の経営課題

野村)そのような場合、今度は復旧力が求められるのです。こういうことが起こったときに、いまは「どれだけ早く復旧できるか」という競争に入っている。

飯田)どれだけ早く復旧できるか。

野村)いままで日本は効率性を追求してきたけれど、復旧力が弱かった部分があるので、復旧させる力をどれだけ回復するか。それが今後、いちばんの経営課題だと思います。

「価格を少し上げるけれど、何かあったときは復旧に当てさせていただきます」という価格政策も今後は必要 ~キーワードは「事業再生計画と復旧力」

飯田)その辺りのことは当然、政府側も考えていますよね?

石川)今回は国内全14工場が停止するという異常事態であり、確立的にはものすごく低い状況です。サイバーテロではないかと言われていますが、原因究明はこれからです。

飯田)原因が何かは。

石川)仮にサイバー攻撃であれば、サイバーセキュリティに対する投資も必要になると思いますが、私なりに付言させてもらうと、効率よくスリム化されたもの自体はすごくいいのです。

飯田)かんばん方式のように。

石川)いいことなのだけれど、いざ何かあると「ガタガタ」とすべてが崩れてしまうリスクをどう考えるのか。1つは、多少なりとも価格に転嫁して、保険システムのようなものをつくる。

飯田)何かあったときのために。

石川)「価格を少し上げるけれど、何かあったときは復旧に当てさせていただきます」というようなことを言えるかどうか。これは価格転嫁や保険の仕組みなど、いろいろな種類があると思います。

飯田)価格転嫁の仕組みの他に。

石川)ITが進んでいけば、サイバー攻撃されるリスクも出てきます。世の中の進展に応じて臨機応変に動くことも、ある種の価格政策です。

飯田)価格政策。

石川)おそらく日本の企業は取り組んでいると思いますが、トヨタは今回、それを体感する時期なのかなと思います。

野村)稼働を止めたままにしておくと、「やはり弱いな」と思われてしまうので、もう1段レベルの高い事業継続計画にしないといけません。しかも石川さんがおっしゃったように、被害が拡大していますからね。「事業再生計画と復旧力」がキーワードだと思います。

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