ジャーナリストの須田慎一郎が9月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。インドネシアで開催されるASEAN関連会合について解説した。
ASEAN関連会合が9月4日からインドネシアで開催
インドネシアの首都ジャカルタでは9月4日~7日までの日程で、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合が開かれる。ASEAN以外では日本・インド・韓国などの首脳も参加。日本からは岸田総理大臣が参加する。
飯田)ASEAN関連会合では、日本から岸田総理、中国から李強首相、アメリカからはバイデンさんが来る予定でしたがスキップし、ハリス副大統領が参加します。
須田)ASEAN関連会合については、日本やアメリカがどう位置付けているかをきちんと理解することが必要です。先に日米韓3ヵ国の首脳会談が開かれましたよね。
日米韓の連携と「クアッド」を車の両輪にして進める ~経済安全保障に関連して周辺地域を固めるのがASEAN関連会合に関する日本やアメリカの基本的なスタンス
須田)これはバイデン大統領の強い意向で開かれたものです。実を言うと、あまり日本では報道されないのですが、「『クアッド』と対をなすものだ」とアメリカは意識しています。
飯田)クアッドと対をなす。
須田)日本・アメリカ・オーストラリア・インドの枠組みは「民主主義の弧」とも言われており、軍事というよりも、経済面に軸足を置く形の中国包囲網なのです。
飯田)経済面に軸足を置く。
須田)それだけだとインド太平洋地域においては不足しているので、日米韓3ヵ国の連携を組み合わせ、これを車の両輪にして進めていこうというのがアメリカの基本戦略です。
飯田)日米韓の連携と組み合わせて。
須田)日米韓首脳会談では、経済安全保障がいちばん大きなテーマでした。それに関連して周辺地域を固めていこうというのが、ASEAN関連会合に関する日本やアメリカの基本的なスタンスだと考えてもいいのではないでしょうか。
アメリカ側はナンバー3格にレモンド商務長官 ~対中国のハイテク規制の中心だった
飯田)お盆明けの時期に3ヵ国が集まりました。アメリカは夏休みシーズンではないかと思ったのですが、ASEANよりも前にやっておくことが大事だったのですね。
須田)ここを固めることが大事で、特にアメリカ側の配置を見ると、トップはもちろんバイデン大統領です。そして、両脇にナンバー2格として国務長官がいる。
飯田)ブリンケンさん。
須田)そしてナンバー3格は意外なことに、商務長官なのです。
飯田)レモンド氏。
須田)対中国のハイテクリスク規制の中心になっていた方なので、その辺りを考えると、これが経済安全保障であることは明白なのですね。
飯田)確かにレモンド氏は、その直後ぐらいに中国へ行っていました。
須田)それを受け、中国に対してプレッシャーを掛けに行ったと言っていいと思います。
ASEAN諸国でも、「民意が反映されているかどうか」が1つのポイントになる ~価値観を共有する国との連携が必要
須田)これから注目する必要があるのは、通信や半導体、IT分野でどのようにASEANと連携していくのかということです。「クアッドは民主主義の弧」と申し上げましたが、価値観を共有する国との連携が必要です。私はASEANも「丸ごと」とはならないのだろうと思います。
飯田)ASEANで考えると、共産党が政権を取っているベトナムのような国もあるし、民主主義の国もある。あるいは選挙は行っているけれど、一党支配的なシンガポールのような国もあります。ここを民主主義で捉えようとすると少しぼけてしまうから、別の価値観で進めていくという感じですか?
須田)いや、いわゆる軍事クーデターが起きて民主主義が機能していないところに対し、どう向き合っていくのかが今後のテーマになると思います。
「法による統治」が確立しているかどうか
須田)民主主義と言っても、権威主義との対峙という点で、きちんと民意が反映されているかどうかが1つのポイントになります。政治体制がどうこうではないのです。ロシアや中国などの権威主義国と対峙するという意識、イメージだと思います。
飯田)政治体制云々ではなく、同志国のような考え方になりますか?
須田)もう少し言えば、法による統治(Rule of Law)が確立しているかどうか。つまり、先進国的な西側諸国と言えども、概念で付き合いができるのか、貿易ができるのかというところだと思います。
飯田)決めたルールをきちんと守れるし、恣意的にそれを変えたりしない。
須田)そうです。
ASEANのなかで分かれていく
飯田)そういう価値観であれば、支配体制云々ではなく、ビジネスがしっかりとできるのかどうかが大事になる。
須田)そうですね。
飯田)その辺りで徐々にASEAN内でも分かれるところがあり、中国と近い国もあれば、距離を置く国もありますよね。
グローバルで技術的に優れている西側の通信陣営に入るのか、ローカルで技術的に劣る中国の通信陣営に入るのか ~「双方に互換性はない」というのがアメリカの戦略
飯田)距離を置く方の国と話していく形になるわけですか?
須田)例えば今後の具体的なイメージとして、通信の分野で言うと「6G」の世界に入っていくわけです。
飯田)通信規格が。
須田)技術的に優れているのは、アメリカや日本です。グローバルで先進的な技術を持った西側の通信陣営と、中国のように技術的には劣るローカル陣営、「どちらを選ぶのですか?」ということです。そして「双方に互換性はない」という体制になります。
共通の価値観・ルールを守るのであれば中国企業も西側の通信陣営に入ることができる
須田)国家情報法に支配されているような陣営は、ハッキングや情報漏洩のリスクを伴いますから、「今後は互換性を持たない方向になる」というのがアメリカの基本的な戦略です。国民経済的に考えると、やはり成長性が高いのはアメリカ陣営になるわけですから、そちらを選ばざるを得ない。
飯田)そうですね。
須田)選ぶにあたっては、共通の価値観・共通のルールでやりましょうと。それさえ守れるなら、例えば中国企業だってこちらの陣営に入ることはできるのです。ただ、国内には(国家情報法のような)法律がありますから、現実問題として入ることはできませんが。
中国を完全に排除するわけではない ~しかし、中国がこれまでのやり方を変えることはない
飯田)中国企業も、中国政府に情報を抜かれることがなければ、競争として入ってくるのは全然構わない。ただ、それでは中国でビジネスができなくなってしまうから、実際には難しいですね。
須田)完全に排除するわけではなく、「門戸は開きますよ」ということです。ただ、中国共産党も中国政府も、「いままでの自分たちのやり方は間違っていた」というところに思い至ることはないでしょうが。
飯田)仕組みを変えてまでビジネスをあと押しするよりは、締め付ける方向になっていくかも知れない。
須田)とは言っても現実問題として、半導体が入ってこなくなり、中国サイドは日本やアメリカに泣きついているわけですからね。
一帯一路でのスリランカのように最終的には「美味しいところをすべて持っていかれてしまう」ことをリアルに理解しているASEAN各国
飯田)もう1つ、ASEAN各国、あるいはアフリカ諸国もそうかも知れませんが、将来的に儲かることはわかっているし、安全なのは西側かも知れない。でも、やはり西側陣営は最初のコストが高いのです。中国側のシステムであれば、金銭的な援助もあるし、そちらに行かざるを得ない国もあるかも知れません。そういう国はどうフォローしていきますか?
須田)一帯一路で見えてきたように、「債務の罠」があります。最終的には「美味しいところを全部持っていかれる」という事例が、スリランカなどの国々で起こっているわけです。
飯田)そうですね。
須田)初期投資に関しては金を出してくれるけれど、結局は自国の経済が乗っ取られるということを、リアルにわかっているのではないかと思います。
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