数量政策学者の高橋洋一が9月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。国債を売る動きが強まり、2014年1月以来の水準である0.72%まで上昇した長期金利について解説した。
国債の長期金利、0.72%まで上昇 ~2014年1月以来の水準
9月12日の債券市場では、日銀の金融緩和策の修正が視野に入ってきたという見方から日本国債を売る動きが強まり、長期金利は午前中に0.72%をつけ、2014年1月以来の水準まで上昇した。
飯田)国債は「売られると価格が下がり、金利が上昇する」という関係にありますが。
高橋)価格と金利の話は、少し混乱しませんか?
飯田)混乱しますね。金利が上がったというのは、どういうことなのか。株価が下がったということなのですよね?
高橋)国債の取り引きだと確かにそうなのだけれど、なぜ国債を売るのかと考えると、国債を売って他のいろいろな長期資金の需要に応じるというだけなのです。
飯田)国債を売るということは。
お金を借りる人が増えれば当然、金利は高くなる ~国債が売られると金利が上がる
高橋)要するに、設備投資のために国債を売るというような話です。価格の話を入れるとわかりにくくなるので、本当は金利の話だけで考えた方がいい。どんなときに金利が高くなるかと言うと、「お金を借りる人が増えれば当然、金利は高くなる」というくらいに覚えていた方がいいです。価格の話を一緒にすると混乱してしまうので、金利の話だけで考えればいいのです。
飯田)お金を借りる人が増えれば金利は高くなる。
金利が上がるのは景気がよくなっている証拠 ~金利をある程度抑えておくと、金利が低いのでさらに設備投資し、より成長する
高橋)金利が上がること自体は、景気がよくなっている証拠です。そういう意味では、それほど変ではないのですよ。
飯田)金利が上がるということは。
高橋)ただ、国債金利は長期的に見れば、成長率とあまり変わらないので、上がるのは普通です。それをある程度抑えておくと、実は成長するのです。金利が低いから、さらに設備投資をしたくなって、より成長するという形になります。
飯田)いま金を借りておけば有利だと考える。
高橋)お金を借りて、それ以上に稼げることがわかったら、だいたい借りるでしょう?
金利を上げてしまうと「儲からないから」と設備投資をやめる動きも出てくる ~金融政策は重要
高橋)稼げるかどうかは成長率に近い話なのだけれど、「成長率と金利」が「どういう関係になっているか」を見て判断するということです。
飯田)なるほど。
高橋)だから上がるのは普通です。でも、(金利が)上がってしまうと「ビジネスがあまり儲からない」と考えて、やめる人も出てきてしまう。
飯田)金利が上がると。
高橋)だから金融政策が重要なのです。設備投資がやりやすくなります。
長期金利の変動幅の上限を1.0%ではなく0.5%に抑えていれば、より景気への刺激になったはず ~金利幅の変更が早すぎたのではないか
高橋)7月ぐらいに変動幅を上げてしまったでしょう?
飯田)日銀が。
高橋)0.5%から1.0%に引き上げました。もし0.5%に抑えていれば、まだ長期金利は0.5%なのです。そうすると上がっていないから、より景気への刺激になったはずです。
飯田)0.5%に抑えていたら。
高橋)金利幅の変更が少し早すぎたのではないかと思います。幅を変更すると景気に応じて上がってくるけれど、実は景気刺激効果は弱くなります。
飯田)金利幅を変更すると。
高橋)そういう意味で、10年国債のイールドカーブ・コントロール(YCC)の変更に関して、「0.5%から1.0%に上げたのは引き締めだ」と私は言ったのです。「やはりそうでしょう」という感じですけれどね。
短期金利も上げるとなると引き締めに ~物価上昇は約3%までOK
高橋)さらにマイナス金利も上げる。いま言ったのは10年金利の話です。0年金利は、いま少しマイナスなのです。
飯田)もっと短いところ。
高橋)短いところと長いところ、両方で決めているのだけれど、マイナス金利も少し上げるとなると、これは引き締めですよね。そういう意味で、「なぜ引き締めるのだ?」と思います。インフレ目標に関連して金融政策は動きますが、物価が2%……2%というのは、プラスマイナス1%ぐらいまではオッケーだから、3%ぐらいまではいいのです。
飯田)多少オーバーシュートしても。
高橋)4%ぐらいになっても構わない。「ビハインド・ザ・カーブ」という言い方をしますが、「イールドカーブのあとに遅れて政策しろ」という意味です。だいぶ上がってから、あとで金利を上げればいいという考え方が普通です。
飯田)あとで金利を上げればいい。
高橋)少し先取りしすぎています。特にマイナス金利の話をいまから言い出しているということは、先取りしすぎていると思います。
国民よりも金融機関を見ているから金融引き締めを早くしようとする日銀
高橋)なぜそんなことを日銀が言うかというと、要するに金融機関の方に目が向きすぎているのです。
飯田)日銀が。
高橋)金融機関は、金利が上がる方が絶対に儲かるからそう言うのだけれど。
飯田)国債をたくさん持っているから。
高橋)少しでも引き締めを遅くした方がより成長しますが、より成長するということは、実は労働者や国民の方を見ているということです。それよりも金融機関の方を見ているから、こういう話が出てくるのではないでしょうか。
長期金利が上がると住宅ローンにも影響
飯田)長期金利が上がってくると、固定型の住宅ローンなど、いろいろなところに影響が出ますね。
高橋)もう上がっているのではないですか?
飯田)既に上がっているという報道もあります。
高橋)変動金利も上がると思いますよ。
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