旧統一教会の解散命令請求 宗教団体に頼らざるを得ない「選挙運動のやり方」も議論するべき

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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が10月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。旧統一教会の解散命令請求について解説した。

旧統一教会の解散命令請求 宗教団体に頼らざるを得ない「選挙運動のやり方」も議論するべき

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)日本本部(東京都渋谷区) 2022年7月20日  JIJI PRESS PHOTO / MORIO TAGA 写真提供:時事通信社

旧統一教会の解散命令、東京地方裁判所に請求へ

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題で、盛山文部科学大臣は10月12日、臨時の記者会見を開いた。教団の行為は民法上の不法行為に該当し、著しく公共の福祉を害するなどとして、解散命令の請求を正式に決定し、13日にも東京地方裁判所に請求すると表明した。

飯田)昨日(12日)、宗教法人審議会が行われ、この問題について議論し、方針が決まりました。安倍元総理の暗殺事件から出てきた話でもあります。1つの節目を迎えるのでしょうか?

松井)そうですね。ただ、与党内では「なぜ、こんなに時間が掛かったのか」と思う側面もあるでしょう。おそらく、これでけじめをつけたので、支持率反転になると思っているのかも知れません。

飯田)解散命令を請求することで。

松井)自民党内にも関係議員はとても多くいたし、深い関係を持った人たちもたくさんいたけれど、「けじめをつけた」ということにしたいのでしょう。

飯田)けじめはついたと。

松井)私自身は刑法事案だけでなく、悪質な民法事案であっても、組織ぐるみで国民や経済社会に大きな影響を及ぼすような活動が行われていれば、宗教法人に対して国がある程度の措置を行うのはいいことだと思います。結論から言うと、私は今回の措置に賛成です。

解散命令請求のタイミングが政局主導で行われていないか ~時間が掛かったために支持率回復には寄与していない

松井)しかし、気になるのは、タイミングが政局主導で行われているのではないかということです。

飯田)このタイミングが。

松井)両面から見て中途半端だったのは、旧統一教会問題が政治構造的な問題として浮上したときに、時間が掛かったので、それほど支持率の回復には寄与しないような気がするのです。

政治と宗教の関わりを考え直すべき

松井)他方でもう1つは、今後の政治と宗教の関わりについてです。かつて私も身を置いていたのでわかりますが、いまの時代、労働組合なども含めて組織の縛りが効かないなかで、例えば「教団としてこの人を応援する」となると、宗教団体は政治を支持する団体としては大切な存在なのです。

飯田)なるほど。

松井)自民党だけではなく、民主系でもそうです。自民党と創価学会の関係もありますが、創価学会と微妙な関係にある新宗連(新日本宗教団体連合会)などの宗教団体と、いまの野党の関係もあります。

選挙運動におけるポスター貼りや電話掛けなどの動員は宗教団体に頼らざるを得ない現状

松井)実は自民党も、そこは水脈を持っているのですが、やはり政治運動を組織的に行う上ではとても貴重な存在なのです。

飯田)具体的な例で言えば、告示日になり「この日からポスターを貼れます」というときに、ポスターを貼るための動員をお願いするなど。

松井)そうなのです。だから、選挙の仕方も含めて考えなければいけません。組織的に動員力を持っているのは、民主党系であれば労働組合の方々なのですが、ここも最近は組織率が下がっています。そうなると、「いつまでやるのだ」ということになりかねないのです。

個人の後援会の会員だけではストレスの掛かる電話掛けはできない

松井)電話を掛ける「電話掛け」という人がいます。いまどきは詐欺的な電話も多いので、知らない電話が掛かってきたら誰だって「ガチャン」と切ってしまうでしょう。

飯田)そうですね。

松井)ものすごくストレスが溜まる作業です。それを誰かが行うときに、個人の後援会の会員さんだけでできるかと言うと、できないと思います。「では誰がやってくださるのか」と考えると、そういう組織に頼らざるを得ないのです。

宗教団体に頼らざるを得ない選挙運動のやり方を考え直すべき ~「選挙をどう変えるか」という議論も合わせて行わなければならない

松井)「政治と宗教団体の構造的な関係」から考えなければいけません。「そういう方々に依頼しなければいけないような選挙運動をこの際、見直しませんか」という議論を、同時に進める必要があると思います。

飯田)宗教団体に頼らなければならない選挙運動のやり方を。

松井)旧統一教会については、背景となる経済被害が酷かったし、日本の国益を損ねる部分があったので、何らかの対応が必要だと私も思いますが、両者の構造問題にも目を向けるべきです。日本の政治における「選挙をどう変えていくのか」という議論を合わせて行わないと、何か問題が出てきたところを潰していくだけでは……。

飯田)対症療法だけではいけない。

松井)政治と宗教の関係を自民党だけの問題として、「野党は関係ない」というようなことを言ってはダメです。自分たちも付き合っているわけですから。

選挙のやり方自体を変えることを与野党超えて議論しなければならない

飯田)90年代に政治改革があり、金権政治の問題があったけれど、結局は小選挙区比例代表並立制に移行した。ある意味、「投票の仕方の問題」にいつの間にかすり替わっていました。公職選挙法やメディアとの関係も含めて、この辺りについては手つかずのまま終わってしまいましたね。

松井)「政策面での討論会は選挙運動中はできない」という状況にありますが、相変わらずポスターは1枚1枚貼るし、チラシを配るには証紙をすべて貼らなければいけません。そういう管理をしているのです。

飯田)うちわでも貼らなくてはならない。

松井)「証紙を貼る人をどこから動員するか」となると、宗教団体にお願いせざるを得ない。「そういう活動自体を変えよう」ということを、与野党を超えて議論するべきです。

従来の選挙の仕方では国民も若者も白けてしまう

松井)エストニアで行われているような電子投票のやり方は、意外と他の国もできていないのです。130万人ぐらいの国ならできるのですが。

飯田)電子投票が。

松井)1億人以上の国でもシステムとして可能なのか。銀行のシステムトラブルの問題がありますが、「そういうことがあったらどうするのだ」と言う人もいますから。

飯田)投票者が本当に本人かどうかの認証を、ネット上で完全に確認できるのか。

松井)いろいろな問題がありますが、政治と若い人たちの関係を見ていると、変えていく必要があると思います。こんな従来型の選挙のやり方では、国民も若い人たちも白けてしまうのではないでしょうか。

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