世界の自動車業界に詳しいジャーナリストの井上久男氏が11月15日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。電気自動車(EV)への切り替えに乗り遅れたとも指摘される日本の自動車産業の未来を巡り、「EVシフトは産業革命で既得権者との戦い。大胆な業界再編が必要だ」と解説した。
井上)EVシフトを巡り、前のめりの国と後退する国が生まれていますが、私は産業革命が起きているのだと考えています。産業革命が起こると、既得権者と新たな利権者が戦う対立構図が生まれます。現在のEVシフトも同様で、その綱引きが起きているのだと思います。
例えば、アメリカのバイデン大統領はEVシフトを推進してきましたが、実際にはアメリカのEVシフトは後退しています。アメリカのビッグ3(3大自動車メーカー)で最近、労働者のストライキが起きましたが、要因は国内のインフレによって労働者が賃金アップを求めたことです。また、経営陣がEVシフトに舵を切ると、ガソリン車に比べて必要な自動車部品の数が3割ぐらい減りますから、「我々の仕事がなくなるのではないか」と不安にかられた労働者の抵抗でもあります。
イギリスで18~19世紀に起こった産業革命の際には、失業を懸念した労働者が「ラッダイト運動」と呼ばれる紡織機の破壊を繰り返しました。誤解を恐れずに言うと、アメリカのビッグ3で起きた労働者のストライキは、現代版のラッダイト運動なのではないかと、私は感じています。
日本の自動車メーカーが今後、世界競争に勝つために最も必要なことは、大胆な業界再編です。今のままでは、生き残れるのはトヨタだけになる可能性があります。ホンダと日産が経営統合するなどしないと、日本の自動車産業の将来は厳しいと思います。そうした業界再編ができれば、日本の自動車産業は生き残っていけるでしょう。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)