2023年度補正予算案 「大迷走」と須田慎一郎が指摘
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ジャーナリストの須田慎一郎が11月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2023年度の補正予算案について解説した。
2023年度の補正予算案、衆院本会議で審議入り
政府の経済対策を裏付ける2023年度補正予算案が11月20日、衆議院本会議で審議入りした。与党側は今週中の衆院通過と11月中の成立を想定。野党側は即効性に欠けるとして追及する構え。
飯田)今回の補正予算案は、13兆2000億円あまりの規模になっています。
供給能力を総需要が僅かながらも上回り、「平時」とする政府
須田)結論から言うと、大迷走していますね。これは本当に必要なのかどうかですが、私に言わせれば必要です。ただ、政府サイドは公式見解として、「経済は平時に戻った」という大前提に立っています。「平時」の根拠としては、今年(2023年)の4~6月期の統計で「供給能力を総需要が僅かながらも上回った」と示し、平時と認定しています。しかし、平時であれば補正予算を使って景気対策を行う必要はないのです。
物価高対策として支出すれば総需要が供給を上回り、さらに物価高になってしまう
須田)何のために景気・経済対策を行うかと言うと、需要が供給能力を下回っており、要するに景気が悪いので公的セクターが需要を穴埋めするため、景気対策として補正予算を執行するのです。平時であればやる必要がないので、苦肉の策として考えられたのが物価高対策です。しかし、物価高対策で支出するのはいいのですが、それだと総需要が供給を上回るので、さらに物価高になってしまう。矛盾しています。
飯田)確かにそうですね。
須田)私に言わせれば大迷走で、やっている意味がわかりません。4~6月期の需要と供給のバランスを見ると、明らかに供給能力に関してサバを読んでいる。低く見積もっているのです。本来であれば、もっと供給能力は上です。なぜ下振れしているのかと言うと、やはり長引く不況に加え、直近3年間のコロナ禍の影響があり、各企業・生産者が供給能力を絞っているのです。とある試算によると、14~15兆円ほど絞っていると言われています。
「これ以上の財政出動はしない」と財務省サイドが言いたいために「平時」と言っている
須田)本来ならもう少し供給能力が上で、「需給ギャップは15兆円程度ある」という有力な指摘もあります。だからいまは景気が悪く、賃金が上がらず、雇用も拡大していかないという局面にあるのです。本来であれば、「需要が少ないから景気対策を行う」という建て付けにしなければいけないのに、財務省サイドが「これ以上の赤字国債は発行しない。これ以上の財政出動もしない」と言いたいが故に、「平時」と言っているのです。しかし、平時であるなら(景気対策を)行う必要はありません。さまざまな矛盾が噴出しているのです。
飯田)岸田さんなり官邸側としては、「もう少しやりたいのだけれど」という感じなのでしょうか? それとも、党が頑張っているのでしょうか?
須田)その辺りの認識もきちんと行われているのかどうか。
飯田)一本に整合されているのかと考えると、各々バラバラなことを言っている状況なのですね。
基金で積んでは景気対策としての効き目がない
須田)中途半端な中身になっています。基金で積んでしまうと、景気対策としては全然効きません。
飯田)13兆2000億円という規模を見ると、大きな額に思えますが、基金として積むと実際には出てこないお金が多いのでしょうか?
須田)基金にしておき、「複数年度にまたがる予算として使い勝手をよくし、年度末に国庫に返納されないようにする」ということを言いたいのだと思いますが、基金は使うときにチェックが必要であり、使いにくいのです。コロナ対策費も基金で積みましたが、数兆円規模で使い残しがあるではないですか。それを今度は防衛費の増額に使い回してみたり、「使わないように、使わないようにするために」このような形を取っているのです。
なぜ有効需要を穴埋めしないのか
飯田)少し前まで「予算規模は真水でいくら」という話が出ていましたが、こうして13兆2000億円あまりを積んでも、逃げ水というか、幻のようになってしまいますよね?
須田)おっしゃる通りです。真水=一般歳出ベースですが、それがどの程度の規模になるのか、注目を集めるようになりました。総事業費ではなく真水というところで、その真水を嵩増ししようとしているのが今回の補正予算です。非常に中途半端で、15兆円に比べれば13兆2000億円では足りないのですよ。やらないよりは遥かにマシですが、本当に効果がないので、なぜ使えるようにしないのでしょうか。
飯田)基金で積んでおき、それを繰り延べるようなやり方は、もう1つ財布をつくるような話です。裏金とまでは言いませんが、最終的に健全なのでしょうか?
須田)なぜ景気が悪いのかと言うと、有効需要が少ないからです。これは経済のイロハのイです。なぜ有効需要をきちんと穴埋めしないのか。そう考えると、今回の補正予算はまったく期待できない補正予算になります。
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