毛沢東生誕130年 習近平氏はなぜ「毛沢東への崇拝」を嫌うのか
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国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が12月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。12月26日に生誕130年を迎えた毛沢東について解説した。
毛沢東生誕130年
飯田)12月26日で「新中国建国の父」である毛沢東の生誕から130年を迎えました。故郷の湖南省韶山には多くの人が集まり、「造反有理」を連呼していたという報道もあります。
神保)ご存知の通り、習近平氏個人に対する権力集中が既に進んでいるわけです。ただし、中国共産党の始祖であり、建国の父である毛沢東への崇拝については例外であるということで、(北京で開かれた記念イベントでは)習近平氏自身が式典にも出て、毛沢東に対する尊敬の念を表しています。ただ、進みすぎてしまうと毛沢東への崇拝を通して、習近平氏に対する異議申し立てなどが行われかねないわけです。
「習近平批判につながりかねない」ということで毛沢東への過度な崇拝を嫌う習近平氏
神保)毛沢東はいろいろな象徴なのですが、特に資本家と地主層を打倒して、貧富の差を許さなかったところに着目すると、「いまの指導部はまだ足りないのではないか」というメッセージを暗に発することもできる。場合によっては「習近平体制に対する根本的な批判を、毛沢東への崇拝運動を通じて行う」という、10年以上前に薄熙来氏が行った手法ですよね。
飯田)重慶で行われた。
神保)あのような嫌なイメージが出てきかねないので、「毛沢東に対する過度な崇拝もやめて欲しい」ということではないでしょうか。
エコノミストが「来年の経済の見通しは悪い」と言えない現在の状況
飯田)他方、前日はクリスマスでしたが、「クリスマスは祝うな」と指導されているらしいですね。
神保)「では何を祝ったらいいのだ」という感じですが、やはり何かの偶像崇拝に対する過度な警戒感があるようです。その他のいろいろ風習がありますが、銅像が撤去されたり、イベントを盛大に行って喜ぶ姿を見せないなど、みんな疑心暗鬼になっているのがいまの中国社会の特徴ではないかと思います。
飯田)経済は相当厳しくなっていますが、経済を論評することも、あまり過度に行ってはいけない。
神保)昔の中国による言論空間の拡大は、経済や環境問題だったと思うのです。しかし、百花斉放でいろいろな形で議論し、中国をよくしていこうということ自体、いまはできない感じになっています。エコノミストが「来年の経済見通しは悪いですよ」「不動産が危ないですよ」と言えないような状況なのだと思います。
他方、EVや新産業の分野は着実に進んでいる
飯田)この閉塞感や不満がどう形を変えていくのか、気になりますね。
神保)言論空間や社会的な活躍の安全圏がどんどん狭まっているので、「ここなら安全だ」というところで、大きめにマージンを取って暮らすしかないわけです。私も10月に北京へ出張しましたが、かつてからの友人が夜、一緒に飲みたがらないのですよ。そこで軽口をたたくこと自体が自らの危険につながりかねないので、私も無理強いして話すのを避けた感じはあります。
飯田)疑心暗鬼のような環境から何かイノベーションが生まれるかと言うと、なかなか難しいですよね?
神保)いまは特にそうですね。改革派とされる人々は暮らしにくい世の中だと思います。他方、EVや新しい産業では着実に進んでいる分野もあるので、全部その方向で中国を見ない方がいいとは思います。
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