外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が3月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。3月18日に韓国・ソウルで開催した第3回「民主主義サミット」について解説した。
「民主主義サミット」が韓国で開幕、岸田総理もオンラインで出席へ
民主主義の価値観を共有する国や地域の首脳らが参加する第3回「民主主義サミット」が3月18日、韓国・ソウルで開幕した。2021年に米バイデン大統領の呼びかけで始まったサミットであり、3日間の日程で行われる。2024年のテーマは「未来世代のための民主主義」。各国首脳らが参加する本会議は20日夕方、オンライン形式で開かれ、岸田総理も出席する予定。
宮家)ブリンケン国務長官がサミット出席のため、久しぶりにアジアに帰ってきます。彼は去年(2023年)の10月ごろから、ずっと中東に張りついていましたが、やっと一段落したのでしょうか。たまにはアジアにも来てくれないとね。
民度があり、豊かな国でなければ民主主義はできない
宮家)民主主義について議論するのは、もちろん我々にとっては当たり前ですが、なかなか世界に広がっていかないところが不思議です。もっとも民主主義は、簡単にできるものではありません。まず、暴力を使わない。言論だけで、しかも自由に話させ、切磋琢磨して投票に勝ち、議席を獲り、数合わせをする……これは大変なエネルギーを使いますし、よほど国民の民度が高くないとできませんよ。しかも国が豊かでなければいけない。「民主主義サミット」とは言いますが、参加国は意外と少ないですよね。
飯田)手元に表がありますが、北米からはアメリカ、カナダが参加。中南米からは、エクアドル、ガイアナ、コスタリカなどが参加します。
宮家)欧州は意外と少ないですね。
飯田)EU、エストニア、スウェーデン、アイルランド、チェコ、リトアニア、ポーランド、ルーマニアですね。
宮家)アジアからはインドネシア、モンゴル、フィリピン、インド、ニュージーランド、オーストラリア。アフリカも少ないですよね。要するに民主主義は、限られた豊かで民度の高い国でないと維持できないのです。グローバルサウスの多くが、もしくはロシアや中国があのように非民主的になるのは、実は仕方ないことなのかも知れません。
我々が享受している自由、民主主義がいかに貴重なものか
宮家)逆に我々は民主主義サミットだけでなく、いま我々が享受している自由、民主主義がいかに貴重なものか、使い捨てなどできない大事な価値だということを、もう1回考えて欲しいのです。今回のような会議はもちろん大事ですが、1回失ってみればわかりますよ。(民主主義がなければ)このような番組だって放送できないのですから。
飯田)言論の自由がありますものね。
宮家)この飯田さんの番組が閉鎖されるような社会になったら、目も当てられません。そういう意味でも「民主主義」は大事なのです。「なくなったときのことを考えてください」と思いますね。
「決していいシステムではないけれど、これよりいいものはない」と達観するまで時間が掛かる民主主義
飯田)ある意味、グローバルサウスの国々では「経済を取るか、民主主義を取るか」というような状況になりますよね。
宮家)豊かでなければできないので、(両方を選ぶ)余裕がないのでしょう。いつも言うことですが、民主主義とは決してベストな指導者を最善のタイミングで選ぶシステムではないのです。往々にして外れてしまう。外したくないのであれば、優秀な独裁者が短期間だけ正しいことを適格に行えばいいのですが、独裁主義はだいたい腐敗して長くなるものです。民主主義とは、結局10~20年先になって振り返り、「当時は間違ったことをせずに済んでよかった。決していいシステムではないけれど、これよりいいものはない」と達観するまで時間が掛かると思います。グローバルサウスの多くの国には、そのような余裕がないのですよ。
帝国は民主主義では維持できない
飯田)かつて「開発独裁」という言葉がありましたね、
宮家)短期間では成功しても、中長期的には国民の豊かさにつながらないと思います。
飯田)人口規模のような問題もあるのでしょうか? 例えばシンガポールはリー・クアンユー氏の時代に繁栄しましたよね。
宮家)繁栄しましたが、あそこも真の民主主義ではないですからね。
飯田)まさに開発独裁でした。
宮家)そうかと思えば台湾など、中国大陸のように他民族ではなく海で囲まれ、ある程度は守られているため、民主主義の実験ができる地域もあるのです。
飯田)そもそもは国民党の一党独裁だったところから……。
宮家)中国大陸のように、少数民族がたくさんいて、その人たちが民族自決や自治権の拡大を言い出したら、帝国は維持できないですよね。帝国では、基本的に民主主義を行うのは無理です。
飯田)ガチガチに縛らなくてはいけない。
宮家)それが中国やロシアですね。その意味では、雑多な要素が多々あるのに民主主義国家として成立するインドネシアやインドなどの例もあるので、できるところはできるのですよ。「ロシアも中国もよく考えてごらん」と思います。「きちんと成立している国もあるんだぞ」と言いたいですね。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。