政策アナリストの石川和男が5月12日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。物価高の主な要因としても指摘される、直近の過度な円安進行と日米金利差の行方について議論した。
日銀の植田総裁は9日、参議院の財政金融委員会に出席し、円安が経済や物価に与える影響について「インバウンド関連を含む輸出企業にはプラスになる」と述べる一方、「輸入価格の上昇を通じて、実質所得を引き下げる影響が出る。急速かつ一方的な円安が進むと、わが国経済にとってマイナスであり望ましくない面がある」と指摘。「基調的な物価上昇率について為替変動が影響する、あるいはそのリスクが高まる場合には、金融政策上の対応が必要になると考えている」と言及した。
直近の急激な円安進行の要因として指摘されるのが日米の金利差で、現在は5%台前半。この金利差を解消するには、米国が下げるか日本が上げるかの二択になる。この行方について、ゲスト出演した岩手保健医療大学理事で経済評論家の濵田敏彰氏は「米金利が市場が予測していたほど下がらない中、日本の金利が上がるか。日銀が注目しているのは、消費者物価指数の“中身”の変化。1~2年前の物価上昇の要因は、おもに輸入物価や穀物、石油の値上がりによるものだった。今はエネルギー価格が落ち着き始めた一方で、サービス価格が上がってきている。つまり、外食の値段が上がった、ホテルの値段が上がった…そういう価格の上昇に変わってきた。人手不足で人件費が上がり、人件費が上がるということは、みんな物を買える力を持つということ。みんなが欲しがる商品に対して、モノが足らなければ、今日より明日の方が値段が高くなる…ということで、みんながモノを積極的に買い始める期待していたインフレが起きると、日銀は金利を上げる」と指摘。ただ、長期的な円安トレンドの要因については「日本の財政構造に対する国際的な信用力が、少しずつ落ち始めていることも反映されている」とクギを刺した。
日銀が金利を上げた際の影響については「まず、マイナス面として変動の住宅ローンは短期金利に連動しているため、変動の人は住宅ローン金利が上がる。もう一つは、日銀が大量に持っている国債の発行元である政府としては、新規国債についてはその金利に合わせて上げていかなければならない。つまり、国の借金の利払い費が増えることになる。さらに、日銀は政府から大量の国債を買うために、一般の民間銀行から預かった当座預金のお金で国債を買っている。ふつう、当座預金に金利は付かないが、この数年間、日銀は金利を付けている。その金利を上げなければいけないなどの影響がある」と述べた。
一方で濵田氏は「日銀が金利を上げるためには、国民の所得が上がり、みんなが購買を進めて物価が上がっている前提があるわけで、当然、所得が上がれば税収も増えるだろうし、いい循環ができる可能性がある。例えば、住宅ローン金利が上がったら負担が増えると考えるのは、所得が変わらない前提。所得が増えればローン金利が上がっても、給料も増えているから返せるという話。そんな大きな問題にはならないと思う」と言及。国の借金の利払い費が増える懸念についても「国の収入と支出のバランスの議論がある。国債の利払い増加とともに税収がどうなるか。今、1%金利が上がると1年間に約2兆円の国債利払い費が増える。景気が良くなり税収が伸びたからと言って、安易な減税政策やバラマキ政策などをしなければ回っていく」との見方を示した。
石川は「日銀は何もやみくもに金利を上げるわけではなく、そのあたりのデータもきちんとみたうえで上げる判断をする。日銀にとって金利を上げるのは、あくまで手段。経済が良くなったんだから、さらにそれをよくしていこうという意味で、その局面で初めて金利を上げようという判断になる」と述べた。
番組情報
政策アナリストの石川和男が、暮らしに欠かせないエネルギー問題の様々な“見方”を提起。
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※2024年4月6日(土)までは『石川和男のエネルギーリテラシー』