視力低下や視野欠損が起こる疾患『網膜静脈閉塞症』を解説 症状・治療法・気をつけるべきこととは

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12月25日(水)、東京医科大学臨床医学系眼科学分野臨床講師・川上摂子氏が、ニッポン放送のラジオ特別番組『第50回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』にゲスト出演。網膜の血管が詰まって血流が途絶え、視力低下や視野欠損が起こる疾患『網膜静脈閉塞症』について、症状や治療法などを解説した。

視力低下や視野欠損が起こる疾患『網膜静脈閉塞症』を解説 症状・治療法・気をつけるべきこととは

『網膜静脈閉塞症』について解説する東京医科大学臨床医学系眼科学分野臨床講師・川上摂子氏(写真右)

『網膜静脈閉塞症』とは、どのような病気なのか?

目の奥には網膜といって、カメラで言うところのフィルムの役割をする部分があります。網膜には血管があるのですが、首の動脈から分かれた血管が視神経の内部を通って、網膜に辿り着きます。

目に入ってくるほうが動脈で、出ていくほうが静脈ですが、その静脈が閉塞して詰まってしまうのが『網膜静脈閉塞症』です。

この病気になると、網膜の出血や、網膜の真ん中にある黄斑と呼ばれる部分にむくみが起きて、ぼやけて見えたり歪んで見えたりして、物の見え方がおかしくなります。

ラジオをお聴きの方には、ドライバーの方も多くいらっしゃると思うのですが、車の運転に例えると、高速道路の出口が詰まるとその手前で渋滞が起きるのと一緒で、血流に滞りが生じます。

通常血液は、しっかりした血管の壁に守られてスムーズに流れていくわけですが、血流が滞ると血管に負荷がかかり、血管壁が障害されてしまうために、出血やむくみが起きてきます。

血管の周りにある網膜の細胞は非常に繊細なので、このように余計なものが漏れてくると、ダメージを受けるのです。

病気の原因はどういったものか?

ご高齢で動脈硬化がある方に多いので、高血圧・糖尿病・高脂血症があると要注意です。ただ、若い方にも見られることがあり、その場合は、血管の炎症や血栓ができやすくなる全身の病気が隠れていることがあります。

調査によると、日本では、「40歳以上の約2%の方に、『網膜静脈閉塞症』が見られた」と報告されています。

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こんな見え方になったら注意が必要

「歪んで見える」「ぼやけて見える」「視界の中で見えにくい部分がある」といった変化があったら、注意が必要です。

老眼のせいだと思って放っておいてしまう方もいますし、片目の視力が落ちていても、もう片方の目が見えているとその目が補ってしまうので、発症しても気づかない方が時々いらっしゃいます。

一旦病気になると、目の組織がダメージを受けるので、完全にもとに戻すのが難しいことも多々あります。どのぐらい見づらくなるかは、病気の程度によって様々ですが、「人の顔が判別しにくい」「文字が見づらい」など、日常生活に様々な支障をきたします。

長い目で見て、視機能を守るためには、定期的に眼科で検査を受けて、早期発見と治療に努めることが大切です。

眼科ではどのような検査を受けるのか

眼科に行ったら、まず、「いつから、どのような症状があったのか」を詳しく聞いていきます。また、体の病気の有無もお聞きします。高血圧の方によく見られる病気ですので、血圧も必ず確認します。

ご本人が「大丈夫」とおっしゃっていても、気づいていないだけのこともありますので、私はその場で測るようにしています。

目に関しては、視力を測ってから、眼底検査で診断をつけます。ほかには、OCT(光干渉断層計)による検査で網膜の断層写真を撮って黄斑のむくみの状態を調べたり、場合によっては、「蛍光眼底撮影」といって、造影剤を静脈注射したあと眼底の写真を撮って血管の具合を調べたりもします。

眼底検査をするときは、瞳孔を開く目薬を使います。診察が終わってからも、半日ぐらいはぼやけて見づらくなりますので、検査のあとは、運転や細かい作業は控えていただきます。

眼科は検査がたくさんありますので、時間に余裕を持って、受診していただけるとありがたいです。

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どのように治療するのか?

黄斑のむくみに対しては、抗VEGF薬を目の中に注射することが多いです。血の巡りが極端に悪いケースでは、将来悪い血管が生えて、目の中に出血が起きることもありますので、レーザーを使用する場合もあります。

目の注射というと皆さん怖がるのですが、黒目の脇の白目から注射しますので、針が見えて怖いということはありません。

点眼麻酔もしますし、注射の際はかなり細い針を使います。「絶対に痛くない」と言うと嘘になりますが、患者さんにお伺いすると「目を照らすライトが眩しい」「消毒の薬が目に染みる」などのほうが気になるようです。

治療の効果について

どのぐらい視力が保てるのかは、病気の程度によって決まる部分も多く、視力低下が残る場合もありますので、まずは予防が大切です。

残念ながら『網膜静脈閉塞症』になってしまった場合は、治療をしたほうが、経過がこじれにくくなることが期待できます。長い目で見て、目の働きを守るためには、治療を勧められたら積極的に受けたほうがいいかと思います。

普段から気をつけたほうがいいことは?

高血圧や糖尿病は、「脂質異常症」といった生活習慣病が危険因子となります。当たり前のようですが、普段からバランス良い食事や適度な運動など、規則正しい生活に気をつけることが重要です。

定期的に検診を受けて、病気が見つかった場合は放置せず、必要な治療を受けることが大切です。また、喫煙している方には、禁煙をおすすめしています。

目に関しては、両目で見ていると気づかないので、時々片目ずつで見て、見づらいかどうかセルフチェックなさるといいと思います。障子の桟やエクセルの票のように、マス目を見ると気づきやすいです。

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インタビューを担当した熊谷実帆アナウンサーとの2ショット

本日のテーマが『網膜静脈閉塞症』でしたので、その話が中心となりましたが、目にはほかにもいろいろな病気があります。治療により視力が回復するものもありますが、そうでない病気もあります。

「いいタイミングで治療ができた」という場合はよいのですが、「分かっていれば予防できたのに…」「もっと早く治療できればよかったのに…」というのが、一番残念です。

また、目の病気は、全身の病気と繋がっていることもありますので、見え方だけでなくお体を守る上でも、気のせいにして放置せずに、積極的に医師へご相談いただければと思います。

(東京医科大学臨床医学系眼科学分野臨床講師・川上摂子)

記事監修:中外製薬株式会社

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ラジオ・チャリティ・ミュージックソン

12/24正午 ~ 12/25正午 24時間生放送

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ニッポン放送「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」は、“目の不自由な方へ音の出る信号機”を贈るためのチャリティキャンペーンで、毎年11/1~翌年1/31に展開しています。

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