日常に潜む“難病”のサイン!失明のおそれもある血管の病気「高安動脈炎」「巨細胞性動脈炎」とは

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12月25日(土)、東京女子医科大学医学部内科学講座 膠原病リウマチ内科学分野 教授・基幹分野長 針谷正祥氏が、ニッポン放送のラジオ特別番組「第47回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」にゲスト出演。“難病”といわれる2つの血管の病気「高安(たかやす)動脈炎」「巨細胞性動脈炎」について紹介。病名すらあまり知られていないこの病気を1人でも多くの人に知ってもらう為、代表的な症状や治療方法、どこに受診したらよいのかを説明した。

日常に潜む“難病”のサイン!失明のおそれもある血管の病気「高安動脈炎」「巨細胞性動脈炎」とは

■「高安動脈炎」「巨細胞性動脈炎」とはどんな病気なのか?

どちらの病気も血管の壁に炎症が起こる「血管炎」といわれる病気の仲間です。私たちの身体には様々な太さの血管が張り巡らされています。「高安動脈炎」「巨細胞性動脈炎」はどちらも大動脈などの大きな太い血管に炎症が生じ、その血管が細く狭くなったり、逆に広がったりして、脳や心臓、腎臓といった臓器に障害を与えてしまう病気です。

■原因不明の2つの病気。日本ではどれくらいの患者さんがいる?

最近の疫学調査によると、「高安動脈炎」の患者さんは全国で約5,000人と言われており、その9割が女性で10~30歳代で発症することが多いです。

「巨細胞性動脈炎」は全国で3,000人くらいと報告されています。高齢者の方に多く、50歳以上で発症するとされています。どちらの病気も、原因は分かっておりませんが、免疫の異常が関わっていると考えられています。

日常に潜む“難病”のサイン!失明のおそれもある血管の病気「高安動脈炎」「巨細胞性動脈炎」とは

■どちらの病気も「風邪に似た症状」から始まることが多い

高安動脈炎、巨細胞性動脈炎の共通する最初の症状として、発熱、頭痛、全身がだるい、食欲が低下など、風邪に似た症状から始まることが多いです。しかし、風邪薬を飲んでいても熱がなかなか下がらずにずっと続き、長く診断がつかないこともあります。

▼「高安動脈炎」について

別名「脈無し病」とも呼ばれていて、長く続く血管の炎症によって手に行く動脈が狭くなって、手首で脈をとれない、あるいは脈をとりにくくなる場合があります。また、首の動脈が狭くなると、脳に行く血液が減ってめまいや立ちくらみを起こしたりします。

 

心臓から出る太い血管である大動脈に炎症が起こると、大動脈瘤とよばれる血管のこぶができたり、心臓の出口の弁のしまりが悪くなって血液を送りだす能力が低下したりします。

▼「巨細胞性動脈炎」について

強い頭痛や、食事のときに顎が疲れるといった珍しい症状がみられます。

どちらの病気でも眼に行く血管が障害されると視力が急激に低下したり、失明したりする恐れがあります。これらの症状で病気を疑い、血管の状態をMRI、CT、PETなどで評価して診断していきます。

■「高安動脈炎」「巨細胞性動脈炎」の治療方法は?

多くの患者さんはステロイド剤による治療で、血管の炎症を鎮めることが可能です。最近では治療薬の進歩もあり、ステロイドをより少なく使いながら治療することも可能になってきました。そのため、昔と比べると患者さんの治療経過はとても良くなっています。ですが、血管が狭くなってしまったり、あるいは血管が拡がってこぶが出来てしまったりすると、なかなか戻りにくいということがあるため、他の病気と同じように早期診断と、専門医による早期の治療開始が重要になります。

日常に潜む“難病”のサイン!失明のおそれもある血管の病気「高安動脈炎」「巨細胞性動脈炎」とは

■「高安動脈炎」「巨細胞性動脈炎」を疑うサインとは?

どちらの病気もどの血管に炎症が起こるかによって色々な症状が出ます。例えば、3週間以上熱や風邪のような症状が続く場合に、それに加えて次のような症状があれば、リウマチ・膠原病内科や循環器内科などの専門医を受診することをお勧めします。

▼若い女性に多い「高安動脈炎」の場合

シャンプーをしたり、ドライヤーをかけたりすると、腕がだるくて休んでしまう、洗濯物を干していると腕がつらくなる、電車のつり革を長く持っていられない、などの症状がみられることがあります。

他にも、頭が痛い、めまいがする、首が痛い、しつこい肩こり、などの症状がみられることがあります。お子さんでも見られる病気ですので、微熱や元気がない状態が続いている場合は小児リウマチ専門医を受診すると良いです。

▼高齢者の方に多い「巨細胞性動脈炎」の場合、

頭の片側の頭痛が続く、ブラッシングをすると頭皮がピリピリする、ご飯を食べていると顎が痛くなって、噛み続けられなくなる、急に片方の視力が低下し、見えにくくなる、などの症状がみられることがあります。

日常に潜む“難病”のサイン!失明のおそれもある血管の病気「高安動脈炎」「巨細胞性動脈炎」とは

 

高安動脈炎、巨細胞性動脈炎は、患者さんの数が少ない珍しい病気であるために、一般の病院のドクターが病気についてご存知でないこともあります。そのために、診断が遅れ、気づかれないままに病気が進んでしまっていることがあります。この放送を通じて、一人でも多くの方にこの高安動脈炎、巨細胞性動脈炎という病気があることを知ってほしいと思います。(東京女子医科大学医学部内科学講座 膠原病リウマチ内科学分野 教授・基幹分野長 針谷正祥)

記事監修:中外製薬株式会社

 

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