群馬・南牧村「シカ肉を特産に」元地域おこし協力隊員の新たなる挑戦

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7月1日、全国の自治体で最も高齢化率の高い村(高齢化率68.37%)として知られる群馬県南牧村で、有害鳥獣として捕獲されるシカをジビエ(食材となる野生鳥獣肉)として出荷し、地域資源として有効利用することを目的とした食肉加工処理施設「ナンモクジビエ」が完成した。

完成した「ナンモクジビエ」建物外観

完成した「ナンモクジビエ」建物外観

県内の野生鳥獣肉は東京電力福島第1原発事故を受けて国の出荷制限が続いていたが、適切に管理・検査する体制が整ったとして、出荷制限を解除する対象施設に。群馬県内ではこれで2施設目となる。

施設を設立したのは、南牧村の元地域おこし協力隊員でナンモクジビエ代表の宮﨑大輔氏。2020年に東京から移住してきた宮﨑氏は、「東京にいる時から狩猟に興味があり狩猟免許を持っていたが、東京では思うように活用できず失効してしまった。こちらに地域おこし協力隊として来たのを機に取り直し、そこで有害鳥獣駆除員の活動を知って自分でも何かできないかと思い、駆除活動を始めた。その駆除したシカが毎日となるとどうしても捨ててしまう。それがもったいないと感じ、何かに活用できないかずっと思っていた」と語る。

ナンモクジビエ 宮﨑大輔代表(右)と宮崎テオドーラ副代表

ナンモクジビエ 宮﨑大輔代表(右)と宮崎テオドーラ副代表

模索をしている中、一年後に地域おこし協力隊として来た今は妻である宮﨑テオドーラさんがシカに興味を持っているのを知り、彼女自身もわな猟免許を取得して一緒に回るうちに、2人なら諦めていた食肉処理場ができるのではないかと思い、役場の方々に相談した。

宮﨑テオドーラさんは「長い間抱いていた夢が現実になったので、大変でも楽しい。解体の練習や研修にも通っていた。いずれは皮製品なども作っていきたい」と述べ、「この仕事は命を頂くことでもあるが、野生鳥獣による農作物の被害が深刻になっていて大変だった。農家さんから感謝されることが嬉しいし、それがモチベーションになっている」と笑顔で話した。

南牧村猟友会 奥沢隆則会長

南牧村猟友会 奥沢隆則会長

南牧村猟友会の奥沢隆則会長は「このような施設が出来ると皆が協力できるし、財産にもなる」と活動を応援している。南牧村振興整備部の奥平直生部長は、「シカは有害駆除で毎年300頭から400頭くらいが捕獲され、処理にも困っていた」とのこと。そして「2人が鳥獣被害に取り組んでいて、村の特産品をつくりたいという意識も高かったので応援したいと思った。地産地消とシカ肉の利用もできないかという村の意向も重なって南牧村創業等促進事業補助金を活用した」と述べた。

左から 南牧村振興整備部 藤村美穂主任主事、岩井秀司主幹、奥平直生部長

左から 南牧村振興整備部 藤村美穂主任主事、岩井秀司主幹、奥平直生部長

南牧村振興整備部の岩井秀司主幹は、「(宮﨑さんは)人が食べるシカ肉はもちろん、それ以外にペットフードにしたり、シカの皮などで製品をつくったりしていて面白い」と言い、藤村美穂主任主事は「宮﨑さんの若さと人柄もあって、猟友会の方も協力的」と話した。

これから本格的に県内外の飲食店への出荷や、近くの道の駅などでの販売を目指している。

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