
この記事を見てくださっている方の中に、「加藤さん」という名字の方はいるでしょうか。以前行われた、ある生命保険会社の調査では、加藤さんは全国におよそ90万人いて、名字のランキングでは、鈴木さんや田中さんなどに次いで10位だそうです。
今回は、そんな全国の「加藤さん」の集まり、「加藤会」を立ち上げた男性のお話です。

加藤会のマークが入ったジャンパーを羽織った加藤会BOSSさん
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
東京・白金台に「清正公前」という交差点があります。これは近くの加藤清正公を祀ったお寺にちなんだ名前ですが、加藤清正公の生まれは、太閤・豊臣秀吉と同じ、名古屋のJR名古屋駅の近くです。実は愛知県は、全国で最も「加藤さん」が多い都道府県でもあります。
その名古屋に、今年1つの会社が生まれました。会社の名前は、「株式会社加藤会」。トップを務める加藤貴文さん、通称・加藤会BOSSさんは、名古屋生まれ、名古屋育ちで、普段はイベント関係のお仕事をされています。
少年時代のある日、川原で友達同士、「水切り」を競っていた加藤さんは、敢えて利き腕ではない腕で投げてもらうルールを作ってみました。すると、場がワッと盛り上がって、自然とみんなの顔に笑顔が溢れます。
『いつものことでも、ちょっとひと工夫すると、何か楽しいことが起こるんだ!』
そう感じた加藤さんの周りには、自然と人の輪が出来ていきます。学生時代には、イベントのアルバイトをきっかけに、結婚式の司会を務めると、違う名字の人が繋がって、ご縁が広がっていくことに喜びを憶えるようになりました。
その後、会社勤めを経て、フリーのイベントディレクターとして独立した加藤さんは、2018年のある日、名古屋・栄で、中学時代の仲間と「呑み会」で盛り上がっていました。
男性3人、女性1人の計4人。たまたま時間の都合がついて集まった4人が、なんと全員「加藤さん」でした。
「加藤さんしばりの呑み会、略して『加藤会』って、面白いかも!?」
意気投合した4人は、「加藤会」の設立を宣言しました。

加藤会のマークが入ったジャンパーを羽織った加藤会BOSSさん
「加藤会」を立ち上げ、加藤会BOSSと名乗るようになった加藤さんは、1か月に1回「加藤会」を開いて、その都度、メンバーが新しい「加藤さん」を連れてくることを会のルールとします。
まずは街頭で「加藤さんを探しています!」というボードを掲げて立ってみましたが、思いのほか、次の「加藤さん」探しは難航、友人からも呆れられました。しかし、SNSを活用してみると、多くの人が集まり出します。
さらに、加藤さんは、名古屋だけでなく、東京や大阪にも進出。最初は呑み会を開いて、キーマンとなってくれた方を中心に「支部」を設立していきます。「加藤さん」しかいないボウリング大会や「加藤さん」しかいないゴルフコンペを開くと、加藤ばかりが並んだスコアに、それはもう、大いに盛り上がりました。
一方で「加藤会」をきっかけに、家族のきずなが深まることも起こるようになります。例えば、普段は一緒に暮らしていない加藤さんの兄弟が、それぞれ打ち合わせもなしに加藤会の集まりに申し込んで、会場でお互い顔を見合わせてビックリしたこともあれば、お父さんと年頃の娘さんで「加藤会」に参加するケースも出てきました。
加藤会のイベントが盛り上がる理由について、加藤会BOSSさんはこう分析しています。
「参加者がみんな加藤さんなので、最初から下の名前で呼び合うことができるのが大きいと思います。普通の集まりより、壁が一つ少ないんですよ」
たとえ、世代や価値観が違っても、「加藤」という共通点があることで、遠い親戚のような感覚が生まれて、加藤会はあったかい空気に包まれるといいます。
そんな「加藤会」が今年春、新しい一歩を踏み出しました。「株式会社加藤会」として、法人化を果たしたのです。法人化したことで、さっそく新たなご縁にも恵まれました。
今年9月、愛知県などが主催した「ドローンサミット」というイベントがありました。実はこの会場に、「株式会社加藤会」がつなぎ役となることで、加藤会メンバーの一人、長野県伊那市に住む加藤さんが営むドローンの会社の出展が叶いました。加藤さんと加藤さんが力を合わせて、ビジネスチャンスを生んだり、世の中のためになる取り組みをしていきたい……、法人化にはそんな思いもあるそうです。
そして、加藤会BOSSさんは、もっと大きなことを仕掛けたいと夢を語ります。
「いつか、加藤会のメンバー1万人が参加したイベントを、著名な加藤さんにもご参加いただいて、名古屋・バンテリンドームで開きたいんです!」
「加藤に生まれてよかった」と思える世の中を目指して、「株式会社加藤会」の飛躍は始まったところです。
https://www.katokai.com/





