「金継ぎ(きんつぎ)」と呼ばれる日本の伝統技術をご存じでしょうか?
簡単にいうと、「割れてしまった器などを修復する技術」なのですが…
5年前の東日本大震災以降、ひときわ注目を浴びるようになったのだそうです。
詳しいところを、専門家の方にお伺いしましょう。
荻窪のブックカフェ『6次元』の店主で、「金継ぎ作家」のナカムラクニオさんに、わざわざお越しいただきました。
──ナカムラさん。まずは、「金継ぎ」とはなんぞや… というところを、詳しく教えて頂けますか?
「金継ぎ」とは、室町時代から今に伝わる、日本ならではの修復技術です。
割れたり欠けたりした陶磁器などを、漆で補修し、金で飾り付けます。
お鍋や木のお椀など、ガラス以外のものなら、基本的にはなんでも修復が可能です。
外国では、割れてしまった食器は縁起が悪いとの理由から、使わずに捨ててしまいます。
でも、日本では、割れたり欠けたりしても、直して大事に使います。
最大の特色は、単に修復するだけでなく、さらに芸術的、美的価値を高める… という点。
割れて修復した痕を「景色」と呼ぶのですが、昔の茶人はこれを「川の流れ」などと呼び、そこに、日本ならではの侘び寂びの美を見たのです。
新品の茶器を割って、わざわざヒビを作り、あえて金継ぎを施すことさえあります。
要するに、「新しいピカピカのお茶碗を使うのは野暮」というわけです。──今日は、実際にナカムラさんによって金継ぎが施された、江戸時代の古伊万里のお皿をお持ちいただきましたが、これはもう、元のお皿とは全く別物の芸術品ですね。
むしろ、美しさが増しているようにも見えるのですが… 。ありがとうございます(笑)
──そもそもナカムラさんは、どういう経緯で“金継ぎ師”となったのですか?
もともと古道具や茶器に興味があり、そういうものにまつわる著作も出していました。
6年ほど前から金継ぎの技術を覚え、ワークショップとして実践。
「安く早く、手軽にできる」金継ぎ技術の普及活動を始めました。
本来、金継ぎは、時間も費用もかかるものです。
高価な「本漆」を使うと、器が乾くまで、最低でも1年はみないといけません。
さらに費用も、最低1万円。10万円かかる例も、けして少なくありません。
これでは大変なので、「新漆」と呼ばれる東南アジアの“漆風”の木を使います。
本漆のような出来栄えとはいきませんが、乾燥期間は大幅に短縮できます。
さらに、費用も、何千円という単位で済みます。
私の場合、器を直したいという人たちを一ヶ所に集めて「金継ぎのイベント」を開催、1500円~2000円程度の材料費だけを負担して貰い、金継ぎの技術を教えています。
そうすれば、皆さんがご自身で大切にしていた器を直せるからです。── 5年前、東日本大震災が発生しました。
あの大震災のあと、ナカムラさんの“金継ぎ技術”が、大変に喜ばれたそうですね?日本人にとって、思い出深い漆器や湯呑は、形見であったり、お守りであったりします。
それが割れてしまうのは、たいへんに切ないこと… 。
震災後、一定の時が経ち、ご遺族の心の傷がある程度癒えた頃、被災地に行きました。
割れてしまった形見の品が修復できたときの嬉しそうな顔は、忘れることができません。
なにより驚いたのは、たくさんの直筆の手紙をいただいたこと。
「形見の品だけではなく、自分自身が修復された気持ちになりました。」
そんな文章を綴っていた方もいらっしゃいました。──今年は、熊本地震も発生しました。来てくれという声も多いそうですね?
正直いうと、一刻も早く行きたいのですが、いまだ余震が続いていますよね。
東日本大震災の際の経験則から言うと、熊本の皆さんは、まだ、湯呑に想いを馳せる段階ではないと思います。
ですから、皆さんの生活がある程度落ち着いてから、現地に赴こうと思っています。
ただし、熊本の方々に、これだけは言わせてください。
「割れてしまった親の形見があったら、絶対に捨てないでください」
「直りますし、直せますから… 待っていてください」と。──「金継ぎ」、不覚にも私、存じ上げませんでした。
ナカムラクニオさんが技術の普及活動を行っている、話題の「金継ぎ」。
興味のある方は、ナカムラさんご経営のブックカフェ「6次元」のホームページをご覧になってみてください。
日本が世界に誇る修復技術、「金継ぎ」の普及につとめている、ナカムラクニオさんでした!
6月1日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より