今年4月デビューした「えちごトキめき鉄道」の観光列車「えちごトキめきリゾート・雪月花」。
定員45人・2両編成の「赤いディーゼルカー」が、週末を中心に上越妙高~糸魚川間を1往復しています。
上越妙高を10:19に発った糸魚川行は、妙高高原まで行ってから直江津を経て、かつての北陸本線「日本海ひすいライン」へ。
途中、名立(なだち)では、貨物列車を先に通すため12:54~13:06まで「12分」停車します。
停車中に「実は名立が記念撮影に最適!」と教えてくれた「雪月花」の車掌さんと運転士さんをパチリ!
名立は「日本海ひすいライン」では貴重な海が見える駅。
旧・北陸本線を引き継いだ「日本海ひすいライン」はトンネルが多い路線です。
それというのも直江津と糸魚川の間は地すべりが多く、国鉄時代に長大トンネルを建設して安全を確保してきた歴史があります。
「雪月花」は貨物列車の退避と組み合わせたダイヤを作成、「停車時間」によって飽きさせないようにしている工夫は見事!
(参考:新潟県ホームページ)
名立駅を出てスグ入る「頸城(くびき)トンネル」は11キロあまりの長いトンネル。
このトンネルの名物は、なんとトンネルの中にある「筒石(つついし)駅」。
駅舎のある地上から290段の階段を下りた所にホームがあります。
JR時代から「筒石駅」の列車発着時には、駅員さんがその都度、長い階段を上り下りして安全確認を行っています。
「雪月花」はちょっぴり速度を落として「筒石駅」を通過していきました。
わずかに「北陸新幹線」と並行する区間では、新幹線があっという間に抜き去っていきました。
実は「雪月花」、恐らく「はくたか561号」の通過時間を見計らって減速しており、これも上手いことダイヤを合わせてる!
何気ない車窓を全て「エンターテイメント」に昇華させていると言っても過言ではありません。
この「エンターテイメント」のキーパーソンとも言えるのが「雪月花」の車掌・樋浦さん。
国立大学の落語研究会出身ということもあって、しゃべりの「間」が非常にイイ!
思わず「箱根登山電車の落合さんを研究されたんですか?」と訊いちゃいましたが、あくまでもオリジナルの”樋浦流”とのこと。
もちろん「雪月花」の乗務に当たっては、アナウンスコメントを練りに練っているとか。
樋浦車掌のアナウンスを聞くだけでも「雪月花」に乗る価値があるというものです。
さて、前回ご紹介した直江津駅弁「ホテルハイマート」の立売りケースにちょっとレアな駅弁が入っていました。
それは「甘海老天丼」(1,050円)。
実はこの駅弁、公式発表では「予約制」となっており、それも午前10時からの販売となっている駅弁です。
ただ、6~7月と「雪月花」乗車時や平日の直江津駅をチェックした印象では、少数ながらレギュラーで調製が行われている様子。
恐らく遅い時間に駅弁売場を訪れても入手は難しい駅弁・・・、そんな駅弁は「見た時に買っておく」のが鉄則!
甘海老5尾に塩たらこ、椎茸などの天ぷらも入った珍しい「天丼」駅弁。
天つゆ、塩は好みで選べるように両方付いています。
時間が経ってもフヤッとなり過ぎずしっかり食べられるのは「冷めても美味い」を基本とする「駅弁屋の天丼」ならではです。
丼物のようにサラサラっとかきこむなら、天つゆのほうが食べやすいでしょう。
日を改めて、直江津駅に伺って立ち売りをやっていた方にお話を訊きました。
立ち売りの背景には、そもそも「駅弁をどこで売っているかわからない」という声もあるからなんだそう。
確かに観光列車の利用者ですと、積極的に駅の売店の場所を探してまで駅弁を買おうという人はまずいないハズ。
その意味では、列車から見える所で「スグに買える」というのは重要なポイント。
「会いに行ける駅弁屋」ではなく「会いに来てくれる駅弁屋」じゃないと・・・という訳なんですね。
上越妙高の発車からおよそ3時間、アテンダントさんが「お土産」を持ってやってきました。
観光列車の「お土産」は各社で行われていますが、「雪月花」のお土産は2つから選べるのが面白いところ。
この日は「上越産のお米」と「雪月花オリジナルコーヒー」から選択。
迷うところですが、お米は荷物が重くなるという理由で「コーヒー」をチョイス。
糸魚川発の列車で東京方面に帰るだけ・・・という時ならお米もアリだったかも!?
「えちごトキめきリゾート・雪月花」は定刻通り13:30、終点の糸魚川に到着、本当に「あっという間」でした。
赤い色には興奮効果があるとも言われますが「雪月花」の赤は本当にテンションが上がります。
加えて「妙高の山並み」と「日本海」という対照的な車窓、地元産にこだわった本格フレンチと立ち売り駅弁。
そして何より、鉄道と乗客への愛が溢れる素晴らしい「もてなし」が時が経つのを忘れさせてくれます。
「えちごトキめきリゾート」の名にふさわしい、「トキめき」のある3時間が約束されていると言っていいでしょう。
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/