日本一の湯の町の「夢」がたっぷり詰まった駅弁!~別府駅「別府湾弁当 たみこの夢」(1,080円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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再び883系電車の特急「ソニック」に乗って、JR別府駅にやってきました。
別府といえば、とにもかくにも「温泉の街」!
大分全体では「4,381本」の源泉(都道府県1位)がありますが、うち「2,291本」が別府市にあるんです!!(平成27年3月末時点)
そんなわけで「別府駅」の駅名標にも「温泉マーク」がセンターに・・・。
私が小さい頃に読んだ寝台特急「富士」の乗車記が書かれた本にも「温泉マーク」があったので、別府駅の「温泉マーク」は国鉄時代からの伝統なんでしょうね。

参考「大分県ホームページ」
http://www.pref.oita.jp/site/onsen/onsen-date.html

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別府駅に降り立つと、駅前に「手湯」なるモニュメントがゴボゴボ!
この「手湯」がそのまま源泉名で、44.2℃、ph6.8、成分総計1,393mg/kgのナトリウムー塩化物・硫酸塩温泉。
キチンと細かい「温泉分析表」まで抜かりなく掲示してあるのは立派!
しかも普通の温泉地だったら、ココに一軒、宿が建って客を呼べるくらいちゃんとしたお湯。
そんな素晴らしいお湯をモニュメントに使っているのですから、もう温泉好きにとって別府は「夢」みたいな場所なんです。

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さて、別府では至る所で温泉が湧いているのですが、そのシンボル的な場所といえば、駅から歩いて10分ほどの「竹瓦(たけがわら)温泉」。
明治12(1879)年に作られ、建物の屋根が竹葺きから瓦葺きに改築されていったため「竹瓦温泉」の名がついたと伝えられています。
現在は昭和13(1938)年に建設された、唐破風造(からはふづくり)の豪華な屋根と、高い天井のロビーが特徴の建物。
朝6:30から夜22:30まで営業していて、普通のお風呂にはなんと「100円」で入ることが出来ます。
20代の頃、四国の八幡浜から「宇和島運輸フェリー」の夜行便で移動し朝5時まで船内休憩、港からぶらぶら歩いて「竹瓦温泉」の一番風呂を満喫したこともありました。

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そして「竹瓦温泉」の目玉といえば、何といっても「砂湯」!
朝8:00~夜22:30まで利用可能で1回利用「1,030円」、専用の浴衣を着て砂の上に横たわると、砂かけさんが温泉熱で暖められた砂をかけてくれます。
時期によって変わりますが10分から15分程度、砂に埋まると体じゅうから汗が噴き出してきて素晴らしく爽快!
「砂湯」に使われている温泉は52.5℃、ph8.1、成分総計1,275mg/kgの「ナトリウム・カルシウム ・マグネシウムー炭酸水素塩・塩化物泉」。
浸かるお湯ではなく、砂を温め、湯上りに砂を落とす程度にしか使わないお湯に、クオリティの超高いお湯が使われているのがスゴイ!!!

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そんな「竹瓦温泉」の目の前に1軒のカフェがあります。
お店の名前は「TAKEYA(たけや)」。
湯上りに一服するにはちょうどいい所なんですが、このカフェ「駅弁屋」さんでもあるんです!

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作られているのは「別府湾弁当 たみこの夢」(1,080円)。
実はこの駅弁、販売方法がちょっと異色なんです。
原則はJR九州の「みどりの窓口」などで、2日前までに「駅弁引換券」を購入します。
そして当日、別府駅から歩いて「TAKEYA」へ行って、実物と引き換えることが出来る仕組みになっています。(月曜をのぞく10:00~14:00の間に引換)
但し、これとは別に別府駅改札外の「キヨスク別府名品蔵」に、1日にごく少数の「たみこの夢」が並ぶので、運がいいと購入することが出来ます。

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今回は「竹瓦温泉」の湯上りに「TAKEYA」にお邪魔しました。
「駅弁」なので本来は列車内で食べるのがスジですが、お腹が空いていたのでそのまま店内でいただくことに・・・。
店内でイートインすると、みそ汁&水などを出してくれるんですよね。
基本が予約制ということもあり、1,000円ちょっとの価格帯ながら掛け紙、とじ紐付きの手の込んだ造りになっています。
地元の方言で「たみこの夢」の薀蓄が色々書かれた掛け紙を外しますと・・・?

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「別府湾ちりめん」と銘打ったじゃこ飯が美味しい!
特に九州エリアの駅弁を食べ続けていると、普通の白いご飯の駅弁が少ないので、ありつけるとホントに嬉しいんですよね。
実は「たみこの夢」を開発する際も、そこは意識して、他がやっていない「白いご飯」にしたのだそうです。
これにとり天、豊後牛、どんこなどの大分名物と”母さんの味”のような煮物がよくマッチしていて、どこかホッと出来る駅弁です。
さらに、ただの口直しだけでなく、カレーパンと柚子練り羊羹が「おやつ」として付いているのも、ちょっと面白い!

それにしても「たみこの夢」って・・・いったいどんな夢なんでしょうか?
駅弁を開発したのは、昭和9(1934)年生まれで、今年82歳の「水口民子(みなくち・たみこ)」さん。
実はニッポン放送でお送りしていた旅番組で、平成22(2010)年に水口さんのインタビューをしたことがあり、オンエアでは20秒程度お届けしました。
そこで今回は、未公開部分(ほとんど)を書き起こしてお届けしたいと思います。
なお、一部内容は、平成22(2010)年当時のものとなりますのでご了承ください。

●今や大人気の「たみこの夢弁当」ですが、そもそも作るきっかけは何だったんですか?

町づくりのメンバー(NPO)の中の1人の方に「お弁当を作って売ったら?」と声をかけられたんです。
そして、その一部を“募金“に充てたら…と。
名前は「たみこの夢」で「民子さんには夢があるでしょ?」と声をかけられたんです。
その考えに「乗った!」と直感で思ったんです。

●その「夢」とは何ですか?

夢は「壊れかかった竹瓦アーケード(日本最古ともいわれる大正時代建築の木造アーケード)を修復したい」ということです。
それにはお金が要りますから、募金活動をしていたんです。
でも、イロイロな所に募金箱を置いたり、多方面で募金をしていかないと修復はできないんです。
それで弁当を作って、頑張ろうと思ったんです。

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●それから5年(2010年当時)・・・反響はいかがですか?

皆さんから「あぁ、食べたかった。こういうお弁当を欲しかった。
おふくろの味のようなお弁当だ」といった感想を貰っています。
そしてリピーターとして、また買いに来て下さったり、お礼のはがきをいただくこともあります。
それが私の(弁当作りの)最高の原動力ですねぇ。

●おかずとか、弁当の中身でこだわっている所はありますか?

季節のお野菜ですね。
最近はあまり季節感が無くなったでしょう。
春だと竹の子とか蕨、フキが出るとか、そういう季節感は取り入れています。
あとは「地産地消」で、別府湾で獲れた小魚とかちりめんとか、大分牛(豊後牛)を使うとか。
もちろんお野菜も地元のお野菜でね。
既製品にない味を出しています。

●ということは、季節によって中味は変わるということですか?

少し違います。少しだけですけどね。

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●今は別府駅でも売り出しているんですよね?

イロイロ交渉の結果、キヨスクさんが「ぜひ!」ということで、向こうから頼まれましたので、私も頑張ろうかなという気持ちになりまして。
個数は少ないですが、置かせていただいています。
でもね、キヨスクさんに置いてるってだけでも、いい意味の宣伝になるんですよ。
パッと思い立って、お店に来られても1つもないんですよ。完全予約制ですから。
そういう時にはキオスクさんへ行っていただいてまだあるようなら…とも言えますし。
(ふと手にとって)味わってみて、またよければ、注文していただけますしね。
いろんな意味で中継点みたいな感じで、あそこに置いていただけるのはプラスだと思っています。

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●この駅弁には「夢」が詰まっていますよね。

そして“物語”があるでしょう。
やはり、竹瓦アーケードを残そうという物語がありますから、人の心を動かすんじゃないかぁと思います。

今回、6年ぶりに再訪して「たみこさん」にお会いすることは出来ませんでした。
実は「たみこさん」、数年前に転倒して足を悪くされ、お店に立つことが叶わないのだそうです。
現在は「たみこさん」が何度も実食を繰り返してOKを出したレシピで、以前から一緒に駅弁を作っていたお嫁さんが「たみこの夢」を作っています。
お嫁さんによりますと「たみこさん」は「またお店に立ちたい!」という「夢」を持ってリハビリを頑張っておられるとのこと。
「たみこさん」は齢80を超えて、また新たな「夢」に向かっているのです。

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普通「駅弁」というと列車に乗る時に買うものというイメージがあります。
でも「美味しい駅弁」なら、途中下車の動機にもなります。
別府駅弁「たみこの夢」では一歩進めて、駅からさらに出て「人を街へ出す」きっかけにしているのが興味深いところ。
「地域を元気に!」を標榜しているJR九州ならではの駅弁ともいえそうです。
そういう意味では、駅弁はまだまだいろんな面白そうなコトが出来そうな「夢」のある存在なのかも。
だからこそ、駅弁は「130年」以上続いてきているんだと思います。

湯めぐりすると、「夢」を感じられる街・別府です。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

【ごあいさつ】
はじめまして、放送作家の望月崇史(もちづき・たかふみ)と申します。
ニッポン放送には、昔の有楽町の社屋の頃から、かれこれ20年お世話になっています。
最近では、月~木・深夜24時からの「ミュ~コミ+プラス」で放送された、
ルートハンター」のコーナーに、5年ほど出演させていただきました。

そんな私がライフワークとしているのが「駅弁」の食べ歩き。
1年間に食べる「駅弁」の数は多い年でのべ500個。
通算でも4500個を超えているものと思います。
きっかけとなったのも、実はニッポン放送の番組。
2002年~05年に放送された「井筒和幸の土曜ニュースアドベンチャー」の
番組ウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載することになり、
本格的に「全国の駅弁をひたすら食べまくる生活」に入りました。
以来、私自身のサイトや、近年は「ライター望月の駅弁いい気分」というブログで
「1日1駅弁」を基本に「駅弁」の紹介を続けています。
”駅弁生活15年目”、縁あってニッポン放送のサイトで連載させていただくことになりました。
3つの原則で「駅弁」の紹介をしていきたいと思います。

①1日1駅弁
②駅弁は現地購入
③駅弁のある「旅」も紹介

「1日1駅弁」ですので、日によって情報の濃淡はありますが、
出来るだけ旬の駅弁と鉄道旅の魅力をアップしていきますので、
ゆるりとお付き合い下さい。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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