小豆餅と銭取~浜松駅「出世大名家康くん弁当」(1,050円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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JR東海道線と大井川鐵道が接続する金谷駅から、211系電車の普通列車浜松行で東海道線を下ります。
静岡エリアの東海道線は各駅停車が基本ですが、列車が少ないエリアでも20分おきの運行。
駅自体、旧東海道の宿場町に1つずつが基本なので、普通列車でも駅数も少なめです。
普通列車が乗り放題になる「青春18きっぷ」のシーズンは、乗り継ぎのいい列車こそ混雑しますが、少しずらせば概ね快適。
時には牧之原の茶畑を眺めながら、のんびりと東海道を下るのもいいものです。

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金谷から終点・浜松まではおよそ40分。
浜松といえば、最近は「出世の街」をキーワードに町おこしを仕掛けています。
「出世の街」というのは、徳川家康が29歳から45歳まで浜松城を本拠とし、後の天下取りへの足がかりになったことに因んだもの。
その家康の足跡を辿るべく、今回は浜松駅のバスターミナル15番のりばから発車する「遠州鉄道」バスの40系統に乗り込みます。
目指すは、浜松駅の観光案内所の方に教えて貰った「葵町」バス停。

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浜松駅から遠鉄バスで「葵町」までは20分あまり。
国道257号・姫街道沿いにあるバス停の東側、桜並木のある通りに回り込むと「小豆餅(あずきもち)駅跡」という杭が建っていました。

実はココ、昭和39(1964)年まで走っていた遠州鉄道奥山線の「小豆餅」という駅があった所。
この「小豆餅」という地名は、家康が元亀3(1572)年、三方ヶ原の戦いで武田信玄に大敗し、浜松城に逃げ帰る途中、この辺りの茶屋で「小豆餅」を食べたという伝説によるもの。
無くなった鉄道は二度と帰ってきませんが「あずきもち~あずきもち~」という車掌さんのアナウンスを一度聞いてみたかったものです。
ちなみに今も浜松市中区には「小豆餅」という地名があり、1丁目から4丁目まであります。

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実はこの伝説には続きがあります。
「小豆餅」を食べていた家康に、武田軍がさらに追い打ちをかけてきました。
家康はお金も払わず一目散に逃げだしますが、これでは済まないのが茶屋の老婆。
老婆は家康を追いかけて、ちゃんとお金を払ってもらったのだそう。
その場所とされる辺りが、今は「銭取(ぜにとり)」という地名になっています。
昔の遠州鉄道奥山線にも「銭取駅」があり、今はその近くの姫街道沿いに遠鉄バスの「銭取」バス停が・・・。

ただ、昔の奥山線でも小豆餅~銭取間は2駅、今の「葵町~銭取」間はバスで4分、実距離は2キロほど。
2キロを追いかけた老婆、30歳前後の家康が逃げ切れなかったというのも考えにくい。
その意味でも、コレはやっぱり「伝説」なんでしょうね。

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「銭取」から再び浜松駅行のバスに揺られて「市役所南」バス停で下ります。
スグそばには「家康公鎧掛松」と「浜松城」の天守閣が見えてきました。
銭を払った後も逃げ続けた家康が、浜松城に帰って鎧を脱いで、この松に掛けたという伝説があるのだそう。
なお、現在の松は3代目で、初代の松は浜松城のお堀の近くにあったといわれています。
今年の大河ドラマでも家康は鍵になる人物、来年の大河は浜松が舞台ですので、このエリアの注目度も高まりそうですね。

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そんな家康ゆかりの駅弁といえば、浜松駅弁「自笑亭」の「出世大名家康くん弁当」(1,050円)。
「出世大名家康くん」とは、浜松市のイメージキャラクターで”福市長”。
いわゆる”ゆるキャラ”のイベントでも人気1位を獲得した”出世”キャラです。
このキャラクターを前面に打ち出す形で、駅弁も2010年代に入ってから登場。
浜松の名物を少量ずつ盛り込んだご当地幕の内系駅弁です。

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【お品書き】
・しらすコロッケ(遠州灘沖の「しらす」、浜名湖産の「海苔」を使用)
・煮玉子
・自家製肉団子(自笑亭人気の食材)
・ふぐの天ぷら
・キャベツ餃子抹茶天(浜松名物・餃子)
・あさり煮

・俵御飯4種
うなぎ御飯(自笑亭秘伝のタレで炊き込み)
みかん御飯(「青島みかん」しぼり汁使用)
茶飯(抹茶の粉で炊き込み、茶葉載せ)
しらす御飯(遠州灘沖の「しらす」を使用)

・しそ巻き(浜松名物)
・漬物
・家康くん大福

浜名湖のうなぎ御飯もさることながら、遠州灘の「しらす」がご飯におかずにいい味!
黄色いみかん御飯も違和感なく、サフランライス感覚でいただくことが出来ます。
目下、実は浜松名物の餃子を食べられる唯一の浜松駅弁でもあります。
そして〆は「家康くん大福」、あんこが入ってますから「小豆餅」でもありますね!
小豆餅と銭取のエピソードを思い浮かべながら、家康気分満載でいただきたい浜松駅弁です。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

【ごあいさつ】
はじめまして、放送作家の望月崇史(もちづき・たかふみ)と申します。
ニッポン放送には、昔の有楽町の社屋の頃から、かれこれ20年お世話になっています。
最近では月~木・深夜24時からの「ミュ~コミ+プラス」で放送された、
ルートハンター」のコーナーに5年ほど出演させていただきました。

そんな私がライフワークとしているのが「駅弁」の食べ歩き。
1年間に食べる「駅弁」の数は多い年でのべ500個。
通算でも4,500個を超えているものと思います。
きっかけとなったのも、実はニッポン放送の番組。
2002年~05年に放送された「井筒和幸の土曜ニュースアドベンチャー」の
番組ウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載することになり、
本格的に「全国の駅弁をひたすら食べまくる生活」に入りました。
以来、私自身のサイトや、近年は「ライター望月の駅弁いい気分」というブログで
「1日1駅弁」を基本に「駅弁」の紹介を続けています。
”駅弁生活15年目”、縁あってニッポン放送のサイトで連載させていただくことになりました。
3つの原則で「駅弁」の紹介をしていきたいと思います。

①1日1駅弁
②駅弁は現地購入
③駅弁のある「旅」も紹介

「1日1駅弁」ですので、日によって情報の濃淡はありますが、
出来るだけ旬の駅弁と鉄道旅の魅力をアップしていきますので、
ゆるりとお付き合い下さい。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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