さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今年は、渥美清さんの没後20年。
そこで今回の「しゃベルシネマ」では、立川志らくさんが渥美清さんの魅力を語る、トークショーの模様をお届けします。
俳優・渥美清の魅力に、落語家・立川志らくが迫る!濃密なトークイベント!!
映画『男はつらいよ』シリーズをはじめ、いまなお愛され続けている国民的俳優 渥美清さんが亡くなって20年。渥美さんと言えば、やはり「寅さん」のイメージが強いですが、ほかにも沢山の作品に出演し、名演技を残しています。そこで渥美清さんの大ファンを公言されている落語家の立川らくさんをお迎えしたトークショーが行われ、八雲ふみねが司会を務めました。
若い時は邦画よりも洋画派で、日本映画で好きな俳優フランキー堺さんだったと話す、志らくさん。
ですが、師匠の立川談志さんが渥美さんと親交があり、さらに周囲に渥美さんを敬愛する人が多かったことから『男はつらいよ』を観ることに。すると「全48作品を3回繰り返して観るほどハマってしまって。そのうちに“寅さん博士”と呼ばれるようになりました」とのこと。
あの山田洋次監督が「映画を監督した自分より寅さんに詳しいんじゃないか」と仰った…というエピソードにはオドロキです!
そんな“寅さん博士”であり、“渥美清さん博士”である志らくさんオススメの映画とシーンをお客様と一緒に観ながら、トークは進んでいきます。まずは『男はつらいよ』以外の作品群から志らくさんがチョイスしたのは、『拝啓天皇陛下様』(1963年公開)と『キネマの天地』(1986年)。
『拝啓天皇陛下様』からは、主人公が天皇陛下にカタカナで手紙を書くシーン。
そして『キネマの天地』からは、娘の主演映画を観ながら息を引き取るシーン。それぞれ観ながら、志らくさんが独自の見解を語って下さいます。
その中で特に印象深かったのが「渥美さんはどの役をやっても渥美さん」という話。「例えば志村喬さんは技巧派俳優で、役によって全くの別人になれる名優。でも『キネマの天地』の時なんて、ほら、見た目は寅さんそのものでしょう?!」と解説すると、会場の渥美清ファンのお客様から大きな笑いが。
「ビジュアルを変えたり芝居を変えたりしなくても、ちゃんと寅さんじゃなくてほかの人物に見えてくる。渥美さんは何をやっても渥美さんなんだけれど、全部うまい。観客の創造力をかき立てるんですね。そんな役者は他を探してもいない」と言う志らくさんの言葉に、お客様も大きく頷いてらっしゃいました。
寅さんは、実は○○マスター?!
続いて『男はつらいよ』シリーズからは…。第15作『寅次郎相合い傘』(1976年)から浅丘ルリ子さん演じるリリーを柴又駅まで迎えに行くシーン、そして第32作『口笛を吹く寅次郎』で竹下景子さん演じる朋子との別れのシーン。どちらも柴又駅での名シーン。「顔で笑って心で泣いて…」という、渥美清さんのきめ細やかなお芝居が胸を打ちます。
「リリー(浅丘)と寅さんは心から愛し合っていて、それが言葉じゃなくて伝わってくる。日本人なら痛いほど気持ちが分かるシーン。そして、竹下さんとのシリーズは、寅さんがいちばん結婚に近づいた作品。心から(朋子と)一緒になってほしいと思った、切なすぎるシーンですね」と、作品への思いを語る志らくさん。
その一方で「第30作を過ぎたあたりから、寅さんは他人に恋愛指南したりするんですよ。自分は女性に振られてばかりで一度もうまくいってないのに…」と、寅さんの意外な恋愛マスターぶり(?!)を志らくさんが指摘すると、会場は大爆笑。
でも、そういうお茶目なトコロも寅さんの可愛らしい部分ですよね。
渥美清さんがこの世を旅立ってから、20年。その存在の大きさゆえでしょうか、いまも私たちのそばにいるような感覚があります。すると「いまは旅に出ていて、ある日ひょっこり帰ってくるんじゃないか…。そんな印象がありますよね」と、志らくさん。「死んで20年経っても、こうして語られる俳優さんは、渥美さんくらいじゃないでしょうか。倍賞千恵子さんも佐藤蛾次郎さんも、(渥美さんが)死んだとは思っていないと今でも仰ってますよ」。
今回のフォトセッションは、ファンの皆さんも参加。寅さん愛に包まれた、和やかなトークイベントとなりました。
今年は『男はつらいよ』、そして渥美清さんにまつわる様々な催しが行われています。6月には渥美さんの主演作『あいつばかりが何故もてる』が初のDVD化。また昨年、私も倍賞千恵子さんとのトークショーで参加させていただいた「寅さんサミット」が、今年も葛飾区柴又で11月26日、27日に開催されます。
まだまだ私たちが知らない渥美清さんの魅力に出会えそうですね。
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/