長万部駅「かにめし」(1,000円)~海線&山線の分岐点・長万部の名物!【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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キハ261系特急「スーパー北斗」

キハ261系特急「スーパー北斗」

函館~札幌間で、毎日12往復運行されている特急「スーパー北斗・北斗」号。
この日は、キハ261系の新塗装車が充当された「スーパー北斗9号」に乗車しました。
「スーパー北斗9号」は函館を10:48に出ると五稜郭、新函館北斗、大沼公園、森、八雲、長万部、洞爺、伊達紋別、東室蘭、登別、苫小牧、南千歳、新札幌に停まり、終着・札幌には14:41着。
2つ目の新函館北斗では、東京6:32発の北海道新幹線「はやぶさ1号」に接続します。
広い北海道、函館から札幌まで乗り通すと「3時間53分」の旅となります。

長万部駅

長万部駅

函館からおよそ1時間半、この日は12:20着の「長万部(おしゃまんべ)」で下車。
難読地名として知られる「長万部」ですが、鉄道好きにはよく知られた駅です。
それというのも”山線と海線”の分岐駅だから。
函館本線は本来「函館~旭川間」を結ぶ路線で、長万部からはニセコ、倶知安、小樽を経由して札幌へ向かいます。
特に長万部~小樽間は山間部を走り、勾配がきついことから、通称「山線」と云われています。
一方、特急列車は道のりは長いものの、勾配が緩く都市も多い、海沿いの室蘭本線、通称「海線」回りで、千歳線に入って札幌へ。
長万部は、機関区などが置かれ、長年「鉄道の町」として繁栄してきました。
そんな長万部の繁栄の歴史を今に伝えるのが・・・。

かにめし本舗かなや

かにめし本舗かなや

何と言っても「駅弁」です!
人口およそ5,700人の町・長万部で駅弁が売られているのは「鉄道の町」としての文化遺産!!
長万部駅を出て国道5号の旧道を渡った左手に見えてくるのが、この地で駅弁を調製する「かにめし本舗かなや」です。
「かなや」はドライブインなども展開、様々な営業努力で長万部の「駅弁」文化を守っています。
昼どきには、ドライバーも少し車を停めて「駅弁」を買い求めていく様子が見られます。

かにめし

かにめし

「かなや」を訪れた多くのお客さんが買い求める駅弁といえば「かにめし」(1,000円)!
昭和25(1950)年から販売されている65年以上のロングセラー駅弁です。
戦後の食糧難時代、「かなや」が「茹で毛ガニ」を販売したことが「かにめし」誕生のきっかけとなりました。
およそ50の試作品を作り、長万部駅や機関区で働いていた人たちに試食してもらいながら、試行錯誤を繰り返して出来た「かにめし」。
「かにめし」の商標を開放したことで、今や「かにめし」は駅弁の枠を超え、町の名物となりました。

参考:長万部観光協会

かにめし

かにめし

この日は確実な入手のため、長万部到着前に予約(電話:01377-2-2007)を入れておいたので「かにめし」を手に取るとまだ温かい!
しかも昔ながらの駅弁らしく「かにめし」は、掛け紙と経木の折詰が健在なのです。(木材は「シンゴン」を使用)
もちろんこれは、カニの下に盛り付けられた白いご飯の水分を吸い取ってもらうため。
駅弁を手にしてしっとり湿った掛け紙だと、そこから掛け紙は単なる包装を超えるんですよね。
「この1枚の紙もしっかり仕事してるなぁ」という愛しさのようなものを感じてしまいます。

かにめし

かにめし

「かにめし」のカニは、筍と一緒に水分がなくなるまで炒られた”フワ&シャキ”な食感が特徴。
崎陽軒「シウマイ弁当」、三新軒「鮭の焼漬弁当」をはじめ、駅弁における「筍」って一種の”神バイプレイヤー”なんですよね。
名脇役の俳優、野球の2番打者、駅弁の筍、この3つを「三大いぶし銀」と呼びたいくらい!
焦げる直前まで煮込んだという椎茸は「カニの足」をイメージ。
ワカメ・ひじきなどを使ったオリジナルの佃煮も食欲をそそってくれます。

長万部「かなや」の「かにめし」は、特急「スーパー北斗・北斗」の車内販売でも購入できます。
下り・札幌行は「北斗3号~スーパー北斗15号」まで、上り・函館行は「スーパー北斗4号から16号」まで。
原則、長万部到着「1時間前」までに客室乗務員の方に申し出ておくと、席まで持ってきてくれます。
新函館北斗から乗車の場合は、10分程度しか時間がありませんので、乗車したらスグに客室乗務員さんを探しておくのがお薦め。
頼み忘れた場合は、私の経験上ですが、多めに積み込んでくれることがあるので、ワゴンが来たら訊いてみるのがいいかも。

凍てつく真冬の寒さの中、少し寂しい乗換駅、長い待ち時間、思わず手を伸ばした駅弁から伝わる温もり・・・。
この温もりがどれだけの旅人たちの心を癒したか・・・想像するだけでも「かにめし」食べたくなってきたでしょ?

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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