日比谷・有楽町が映画の街に! 「第34回東京国際映画祭」レポート

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1023回】

画像を見る(全22枚) ※写真は、フェスティバルアンバサダーの橋本愛  (C)TIFF2021

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

34回目となるアジア最大の映画祭、東京国際映画祭。今年、2021年よりメイン会場が六本木から日比谷・銀座・有楽町エリアへと移転。コロナ禍でありながらも、映画館でのフィジカル上映を基本としたスタイルで実施されました。

イザベル・ユペールをコンペティション部門審査委員長に迎えた本年、東京グランプリ/東京都知事賞に輝いたのは、コソボの女性監督カルトリナ・クラスニチによる『ヴェラは海の夢を見る』。

そして観客賞は、松居大悟監督の『ちょっと思い出しただけ』が受賞。多様性あふれる作品が集結し、映画界に新たな息吹をもたらしました。

そこで今回は、八雲ふみねならではの視点で「第34回東京国際映画祭」を振り返ります。

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

街ぐるみで映画祭を盛り上げる!

日比谷・銀座・有楽町に移ったことで、“街歩き”をしながら映画祭ムードを楽しむことができるようになった東京国際映画祭。

JR有楽町駅前広場では、東京国際映画祭の特設ブースが展開され、大型ビジョンでの映像放映やSNS映えするポスターボードも掲出。オリジナルグッズの販売も行われました。

「第34回東京国際映画祭」の開催初日となった10月30日は、東京都では飲食店への時短営業が解除されてから初めての休日。秋晴れのもと、街には多くの人で溢れており、まるでコロナ前の賑わいが戻って来たかのようでした。

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

また日比谷ミッドタウンには、50周年を迎え、ジャパニーズ・アニメーション部門で特集された「仮面ライダー」シリーズの歴代ライダーがズラリ。ショッピングに訪れたファミリーやカップルも足を止めて、楽しげに見入っていらっしゃいました。

世代を超えて愛されている“日本を代表するヒーロー”たち。ひときわ存在感を放っていましたよ。

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

こちらは、ニッポン放送のすぐそばにある、丸の内仲通り。“東京のニューヨーク5番街”とも呼ばれているこの通り沿いには、東京国際映画祭のフラッグが。木々の間から覗く鮮やかな黄色いフラッグが、風に揺れて秋の有楽町を彩ります。

また街のあちらこちらに点在する映画祭上映館やギャラリーなどのスポットへと誘う、「映画とアートの街めぐり」と称したSound ARアプリのLocatoneを活用したガイドツアーを展開。

ニッポン放送吉田尚記アナウンサーと、映画祭上映作品『フラ・フラダンス』に出演する美山加恋さんにナビゲートされて街を歩くと、いつもとは一味違った風景が見えて来るのも不思議ですね。

こうした“街ぐるみ”での取り組みによって、フェスティバル感を味わえるのも、昭和の時代から“映画・劇場の街”として栄えて来た日比谷・銀座・有楽町ならではと言えるでしょう。

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

映画ファンの食指が動く厳選ラインナップ!

昨年(2020年)と比べて映画祭全体の上映枠が少なくなったものの、その分、より厳選されたラインナップとなった「第34回東京国際映画祭」。

オープニング作品はクリント・イーストウッド監督50周年記念作『クライ・マッチョ』。クロージング作品はブロードウェイ・ミュージカルを映画化した『ディア・エヴァン・ハンセン』。

ウェス・アンダーソン監督の新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』や、ベネディクト・カンバーバッチ主演のNetflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』など、バラエティ豊かな作品が勢揃い。

新型コロナの影響もあり、作品ゲストの来日は叶わなかったものの、話題の新作をいち早く観ようと、映画館には多くの映画ファンが詰めかけました。

私も会期中は時間の許す限り作品を拝見しましたが、なかでも印象に残ったのは次の3作品です。

『チュルリ』

■『チュルリ』

インド版『ミッドサマー』とも呼べる怪奇なムードに包まれた1作。

ホラーかSFか、はたまたコメディか? ジャンル分け不可能なその世界観。独創性あふれる“へんてこワールド”に、誰もが虜になってしまいそう。

『GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)』

■『GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)』

義足のため、日本でのプロボクサーの道を閉ざされた男が、フィリピンに渡って挑戦を続ける。実在のボクサーをモデルに、フィリピンの巨匠ブリランテ・メンドーサ監督が手がけたヒューマンドラマ。

ドキュメンタリーを観ているような臨場感に、ただただ圧倒される!

※写真は『GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)』舞台挨拶 左から山下貴裕プロデューサー、南果歩、尚玄、木佐貫まや、土山直純(原案モデル)

上映後のQ&Aには、主演の尚玄をはじめ、南果歩、木佐貫まや、土山直純(原案モデル)、山下貴裕プロデューサーが登壇。

台本を渡さないことでも有名なブリランテ・メンドーサ監督。その演出方法が斬新過ぎることは、あまりにも有名で……。

「ノートをビリッと破いたものにセリフらしきものが書いてあって。それを撮影の直前に渡されました」(南果歩)

「そもそもカメラが回っているのかどうか、いつ(撮影が)スタートするのかもわからない」(尚玄)

……と、経験豊富なキャスト陣もかなり面食らった様子。

それでも「“役を生きる”ということを体を張って教えてくれた現場」と、メンドーサ監督を大絶賛。登壇者からは、心血注いだ作品をお披露目できた喜びが伝わって来ました。

『フォークロア2:あの風が吹いた日』

■『フォークロア2:あの風が吹いた日』

シンガポール映画界の巨匠エリック・クーが企画・製作総指揮で、アジア圏の監督が各国特有の文化や社会に根差した伝承を題材に、ホラー作品を制作するアンソロジー企画「フォークロア」。

その一編となる『あの風が吹いた日』は、松田聖子初監督作品として映画祭開催前から話題となっていました。

ダンサーを夢見る女子高生と人気歌手が織りなす、悲しくも美しいラブストーリー。聖子さんが歌い継いでいらっしゃる愛や希望が作品のなかにもしっかりと落とし込まれており、ファンならずとも必見の1作です。

これらの作品はどれも、日本での公開は未定のものばかり。こうした良作にいち早く出会えるのも、映画祭の醍醐味ですね。

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

期待高まる! 映画祭同士のコラボレーション

アジア映画を中心に独創的な作品を紹介し続けている「東京フィルメックス」。東京で開催される二大映画祭が、今年も同時期開催となりました。

東京フィルメックスの会場は例年どおり、有楽町朝日ホール。東京国際映画祭が日比谷・銀座・有楽町エリアにお引越しして来たことで、それぞれの会場を行ったり来たりしながらさまざまな映画を楽しんだファンも多かったのではないでしょうか。

※写真は「第22回東京フィルメックス」授賞式 左から、審査委員長・諏訪敦彦、審査員・小田香、『偶然と想像』高田聡プロデューサー、審査員のウルリケ・クラウトハイム氏

最優秀作品賞はタイ、フランス、オランダ、シンガポール合作『時の解剖学』と、ドイツ、ジョージア合作の『見上げた空に何が見える?』。そして観客賞は、濱口竜介監督の『偶然と想像』が受賞。

今後は、ふたつの映画祭がうまくコラボしながら、それぞれがどのようなアイデンティティを確立して行くか。その動向に注目したいところです。

※写真は「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」より 左から永瀬正敏、ブリランテ・メンドーサ監督

青空の下で、映画を語る

東京ミッドタウン日比谷にある空中庭園、パークビューガーデン。目の前には、緑が生い茂る日比谷公園。都会の喧騒を忘れさせてくれる人気の癒しスポットが、今年は東京国際映画祭の会場のひとつとなりました。

パークビューガーデンで連日行われたのは、「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」。是枝裕和監督を中心とする検討会議メンバー企画のもと、アジアを含む世界各国・地域を代表する映画人と第一線で活躍する日本の映画人が語り合うトークシリーズ。

日本からは、濱口竜介監督や細田守監督、橋本愛、永瀬正敏、西島秀俊など、錚々たるメンバーが参加しました。

会期中はお天気にも恵まれ、開放的な空間で繰り広げられる“映画談義”に、トークゲストの方々も心なしかリラックスした様子。都会と自然が共存する日比谷・銀座・有楽町エリアの特性を生かしたイベントが、今後も増えるといいですね。

※写真は「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」より 左から橋本愛、バフマン・ゴバディ監督

「越境」をコンセプトに、コロナによるコミュニケーション断絶、男女差別、経済格差、国際紛争など“ボーダー”を乗り越えた先にある“映画の姿”を見せたいという思いで開催された「第34回東京国際映画祭」。

コロナ禍のため、映画ファンと映画祭ゲストとの交流の場は限られていたものの、映画を追いかけて日比谷・銀座・有楽町エリアへ繰り出してみると、「以前と比べて街に人が戻って来たな」という印象を受けました。

その和やかな光景を目の当たりにして、新型コロナウイルス感染拡大による最初の緊急事態宣言以降、何かと閉塞感を覚える日常を過ごして来た私たちに、一筋の光明が差し込んでいるようにも感じられました。

※写真は、審査委員長のイザベル・ユペール (C)TIFF2021

映画館に集って、一緒に映画を観る。「第34回東京国際映画祭」は、そんな当たり前だと思っていたことに改めて喜びを覚えさせてくれる、映画体験の場となったのではないでしょうか。

審査委員長のイザベル・ユペールの言葉が、すべての映画人の思いを表現しています。

「私たちには、映画が必要です。そして映画も、私たちを必要としています」

第34回東京国際映画祭

■第34回東京国際映画祭

会期:2021年10月30日~11月8日
公式サイト https://2021.tiff-jp.net/ja/

『ヴェラは海の夢を見る』

■ヴェラは海の夢を見る(コソボ、北マケドニア、アルバニア)

監督:カルトリナ・クラスニチ
出演:テウタ・アイディニ・イェゲニ、アルケタ・スラ、アストリッド・カバシ
原題:Vera Dreams of the Sea[Vera Andrron Detin]
(C)Copyright 2020 PUNTORIA KREATIVE ISSTRA | ISSTRA CREATIVE FACTORY

『ちょっと思い出しただけ』

■ちょっと思い出しただけ(日本)

2022年2月11日(金・祝)から公開決定
監督・脚本:松居大悟
主題歌:クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」(ユニバーサル シグマ)
出演:池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実、大関れいか、屋敷裕政(ニューヨーク)、尾崎世界観、渋川清彦、松浦祐也、篠原篤、安斉かれん、郭智博、広瀬斗史輝、山﨑将平、細井鼓太、成田凌、市川実和子、高岡早紀、神野三鈴、菅田俊、鈴木慶一、國村隼(友情出演)、永瀬正敏
英題:Just Remembering
制作・配給:東京テアトル
(C)2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

公式サイト https://choiomo.com/

『チュルリ』

■チュルリ(インド)

監督:リジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ
出演:ヴィナイ・フォート、チェンバン・ヴィノード・ジョーズ、ジョジュ・ジョージ
原題:Churuli [ചുരുളി]
(C)Movie Monastery

『GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)』

■GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)(フィリピン、日本)

監督:ブリランテ・メンドーサ
出演:尚玄、ロニー・ラザロ、南果歩
原題:GENSAN PUNCH
(C)2021 GENSAN PUNCH Production Committee

『フォークロア2:あの風が吹いた日』

■フォークロア2:あの風が吹いた日(日本)

監督:松田聖子
出演:森崎ウィン、高橋春織、モト冬樹、木村多江
原題:Folklore 2: The Day the Wind Blew
(C)2021 HBO Pacific Partners, v.o.f Folklore is a service mark of HBO Pacific Partners, v.o.f. All rights reserved.

第22回東京フィルメックス

■第22回東京フィルメックス

会期:2021年10月30日~11月7日まで。終了後、11月23日(火・祝)まで一部の作品をオンライン配信
公式サイト https://filmex.jp/
(c)2021 TOKYO FILMeX

『時の解剖学』

■時の解剖学(タイ、フランス、オランダ、シンガポール)

監督:ジャッカワーン・ニンタムロン
原題:Anatomy of Time
※2021年11月23日までオンライン配信

『見上げた空に何が見える?』

■見上げた空に何が見える?(ドイツ、ジョージア)

監督:アレクサンドレ・コベリゼ
原題:What Do We See When We Look at the Sky?
※2021年11月23日までオンライン配信

『偶然と想像』

■偶然と想像 (日本)

2021年12月17日(金)からBunkamuraル・シネマほかロードショー
監督・脚本:濱口竜介
出演:古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉
英題:Wheel of Fortune and Fantasy
配給:Incline LLP
配給協力:コピアポア・フィルム
(C)2021 NEOPA / Fictive
公式サイト https://guzen-sozo.incline.life/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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