さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回の「しゃベルシネマ」は、おかしくて懐かしいテイストの人情ムービー『ぼくのおじさん』を掘り起こします。
困った人だけど、みんなおじさんが大好きです!
北杜夫と言えば、「どくとるマンボウ」シリーズなどの児童エッセイや小説など、誰もが一度は触れたことがある作家ではないでしょうか。
純文学からユーモアエッセイまで幅広い才能を見せた彼の作品群の中でも、児童文学の金字塔とも呼べるのが、この映画の原作となった「ぼくのおじさん」。
しっかりものの甥っ子の目線から語られる、ダメ人間だけどどこか面白おかしい“おじさん”の物語を、山下敦弘監督が実写映画化しました。
「自分のまわりにいる大人について」をテーマに、作文コンクールの宿題を課せられた小学生のぼく(=春山雪男)。題材探しに苦心した挙げ句、居候の「おじさん」を題材に作文を書くことに。
おじさんは、大学で哲学を教える臨時講師。
いつも屁理屈をこね、時には雪男をダシに母から小遣いをもらい、万年床でマンガばかり読んでいる。そんなある日、親戚からの薦めでおじさんに見合い話が持ち上がる。
相手はハワイ日系4世の絶世の美女、エリー。
お見合いにはあまり乗り気でなかったおじさんだったが、エリーに一目惚れしてしまい…。
ぐうたらで変わり者のおじさんには、松田龍平。
おじさんを叱咤激励するしっかり者の雪男には、オーディションで選ばれた子役の大西利空。
とにかくダメダメな空気の読めないおじさんを、雪男がツッコミながらも温かく見守る…という構図が微笑ましく、名コンビぶりを発揮しています。
雪男の両親役が宮藤官九郎と寺島しのぶ、さらにマドンナ、エリー役には真木よう子…と、なんとも味のあるキャスティングが実現しました。
それにしても、松田龍平はコメディからシリアスなものまで変幻自在。
個人的には本作のような飄々としたキャラクターがツボに入ることが多く、龍平“おじさん”は実に親しみやすく愛すべき存在です。
マイペースで変わり者、おまけに女性に惚れやすく…って、どこかで見覚えがあるなぁと思ったら。
コレって、平成の寅さん???
それならばいっそのこと続編を作って、おじさんにはどんどん新しいマドンナに恋してもらいたい!
雪男の成長と共に少しずつ変化していく、おじさんと甥っ子との関係性をじっくり観察したいっ!!
…なぁんて妄想にニマニマ。
おじさんのユル~いノリに癒されること、間違いなしですよ。
ぼくのおじさん
2016年11月3日から全国ロードショー
監督:山下敦弘
原作:北杜夫「ぼくのおじさん」(新潮文庫刊『ぼくのおじさん』所収)
出演:松田龍平、大西利空 (子役)、真木よう子、戸次重幸、寺島しのぶ、宮藤官九郎、戸田恵梨香 ほか
©1972 北杜夫/新潮社©2016「ぼくのおじさん」製作委員会
公式サイト http://www.bokuno-ojisan.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/