突然ですが、1リットルの牛乳パックを想像してみてください。
二つの辺が斜めに下がった切妻屋根型で、これを「ゲーブルトップ」と呼びます。
ゲーブルトップは1915年にアメリカでその原型が発明されて、日本に導入されたのは1956年と言われています。
その後、スーパーでの販売が拡大したことが後押しして、1964年の東京オリンピック前後にはこのゲーブルトップの紙パックが広く普及しました。つまり、牛乳は50年以上、ほぼかわらずこの形を保ってきているのです。50年です!
牛乳パックを開封するには、一番上に書いてある「あけぐち」を丁寧に破って開く。
しかし、時々きれいに開けられなくて失敗もする!
また、あけぐちではない方から開けてしまったりもする!
そんな「ちっっ」という舌打ちしたい気持ちにさせられてきたこの開け方が、まもなく大々的に変わるかもしれないのです!
日本の牛乳市場で、一番シェアが高いのは「明治おいしい牛乳」。
(ちなみに、「おいしい牛乳」が商品名ではなくて、「明治おいしい牛乳」というワンフレーズが商品名なんだそうです。)
この「明治おいしい牛乳」の九州でのパッケージが、この9月から大きく変わりました。
なんと、キャップ式になったのです。
こちらに、そのパッケージがありますが…
2つの屋根になっていたところが、新しいのは斜面が一つ。
その斜面に、広い口のキャップが取り付けられている。
ねじって開けると、新鮮さを保つためのプルリングがあって、それを持ち上げると牛乳が見える。
このキャップ式にしたことで、メリットがいくつもあります。
◯何といっても開けやすい!」「そして、注ぎやすい!
◯密封なので牛乳の美味しさが長持ちする!
◯うっかり倒してしまってもキャップを閉めていれば牛乳の海が広がる心配もない!
◯開けたり閉めたりするたびに注ぎ口に手が触れることがないので、清潔!
パッと見、キャップだけに目が行きがちですが、同時に改良された点がいくつもあります。
◯内容量は1リットルから900mlへと減らしました。
その理由は…国民の牛乳を飲む量が減少していて、1リットルを飲みきるまでにかかる日数が伸びているからです。また飲みきれずに捨ててしまった経験がある人が多く存在するというデータもあります。よって、1人1日当たりの飲用量である180mlを5回分、つまり牛乳一本を「無駄なく、おいしく飲む」計算で900mlとなったのです。
◯容器も従来のモノより、横幅が5mm小さくなりました。
これで筋肉への負担が1割軽減されて、子供や高齢者でも注ぎやすくなったとか。
◯また、開封するまで中身が直接空気と触れにくいように、目いっぱい充填する方法で、牛乳の香りを開封まで閉じ込める設計に。
さらにはパッケージの原紙が厚くなり、光を通しにくいコーティングが施されているため遮光性が向上。
こうした見た目にはわからないパッケージの変化で新鮮な牛乳のおいしさが長持ちするようになったそうです。
いつぐらいから、この「キャップ式」にしようと開発が始まったのか?
まず2013年に「明治ブルガリアのむヨーグルト」の容器が変更されて、キャップ式になりました。これが大ヒットとなり「のむヨーグルト市場」が大きく伸びるきっかけに。
そしてこの年、“牛乳でも”!と、キャップ式導入の研究が始まったのです。
そして完成した牛乳パックのキャップバージョン、なぜ九州から先行販売することになったかと言いますと…良質な生乳の生産基盤があることが大きな理由です。
まだいつになるかは決まっていませんが、今後、首都圏へと広がってくることは間違いないでしょうし、他のメーカーも大きく注目しています。
そして、フタが変わってきているのは、牛乳だけではありません!
来週木曜日、今年のボジョレー・ヌーボーが解禁されますが、最近のワイン、ねじって開ける「スクリューキャップ」が増えていると感じませんか?
その理由は、コルクに対するワイン醸造家たちの根強い不満が元になっていました。
そもそも、世界全体のワイン生産量が増え続けているのに反して、コルクの生産が追いついていないという現状があります。
需要に対応するため、十分に成長していないコルク樫の木の皮を使うと、目の詰まっていない不良コルクが生まれ、ワインの酸化を引き起こすのです。
こうした不良コルクは、ワインの2~5%、ある調査では5~8%、つまり、多いときには12本に1本の割合でコルクに汚染されていると言われています。
またコルクは製造過程で漂白されますが、その薬品が残留してコルク汚染となることもあります。
丹念に造った自慢のワインが不良コルクのために台無しになってしまうことに、醸造家たちは大きな憤りを感じた!
こうしたことから、2000年ごろから、プラスチックでコルクそっくりの「合成コルク」とねじって開ける「スクリューキャップ」が普及し始めました。
しかし「合成コルク」の方は、結局プラスチックのニオイが移るとか、酸化が進みやすいので長期保存に向いていない、などの問題点が生まれ、コルクの救世主とはならずにいるようです。
その点、スクリュー型のメリットは…まずは「コルク汚染の問題が解消される」、それから「開ける時にテクニックが全く不要」。さらに、コルクのワインは酸化を防ぐために、横置きが原則ですが、スクリュー型は縦におけるので場所を取らない。
これも大きなメリットだと言えます。
これらの事情に詳しい、国内のワイン生産トップメーカーの『メルシャン』に聞いたところ…
◯今年メルシャンで扱う輸入の「ボージョレ・ヌーボー」12アイテムのうち、6アイテムがスクリューキャップとなっています。
どんどん普及してきているとのこと。ニュージーランド産のワインにおいては、実に9割がスクリュー型です。
◯また、品質に関しては…スクリュー型はワインの香りや味には一切影響を与えない!
スクリューキャップを使ったワインは30年以上も前から造られていて、世界のあちこちに貯蔵されているこれらの古いワインが官能検査された結果、ワインはいたってよいコンディションで熟成していることがわかりました。
つまり、スクリュー型は開けやすく、残しても保存しやすく、品質もお墨付き、というわけです。
…とはいえ、まだまだコルクを好む人が多いのが実情です。
あの「シュポッ」というコルクを抜くときの音とロマンチックで優雅な儀式とたまらないというのがその理由でしょう。しかし専門家には「ロマンチックなのはワインの方であって、儀式ばかりに重点を置くべきではない」と言っている人もいます。
しかも、メルシャンによりますと、今後の流れとして、ワインは「軽さ」や「取り扱いやすさ」など利便性の観点から、『ペットボトル』がもっと普及してくるであろう、との読みで、光を遮断するペットボトルの開発に成功。事実、生産量もぐんぐん増えています。
スクリューキャップとコルク、ペットボトルと瓶、どちらがいいという事ではなく、用途やシーンに合わせて多くの人がワインを楽しむ選択肢を提供する。
メーカーとしては、そこに生き残りをかけていると言えます。
11月8日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より