■犬の運動会主催の飼い主さんは、なんと「30歳過ぎまで犬が苦手…」
静岡で知る人ぞ知る運動会が開かれているのをご存知ですか?
「足柄運動会」と名付けられたこの運動会の主役は、犬とその飼い主家族。多い年では70組近い家族が全国から集まり、貸し切ったドッグランで体を動かし、飲んで食べて交流する…という楽しいお祭りのような運動会です。
運動会が始まったのは、2010年。以来、毎年2回(原則的に6月と12月)、欠かさず開催されてきました。
主催者は静岡県に住む大竹智さん・優子さんご夫妻とその友人御家族。ご自身も2頭のウィペット、レイチェル(9歳、メス)とブリジット(7歳、メス)の飼い主です。
こんな大規模な犬イベントを開催するなんて、筋金入りの犬好きなんだろうなぁ…と思いきや、実は智さんはレイチェルと出会うまで「犬はあまり得意ではなかった」とのこと。ウィペットという犬種の存在も知らなかったそうです。
「妻は犬が好きで飼いたがっていたのですが、住んでいた賃貸住宅の規約で飼えずにいました。9年前にペット可の住宅に引っ越したので、やっと飼えることに。短毛種で匂いがキツくない犬種を希望して探していたら、ある人に紹介されたのがウィペットでした。そして軽い気持ちで見に行ったペットショップで出会ったのが、レイチェルです」。
実はそのとき、もう1頭別のウィペットがいてご夫妻はどちらの犬とも決めかねていました。
「どちらにするか迷った末に2人でじゃんけん(笑)。適当に、僕が勝てばグレーの模様の方、妻が勝てばベージュのと決めたのですが、僕が勝って、レイチェルを我が家に迎えることになったのです。改めて考えると、あのとき僕がじゃんけんに負けていたら、レイチェルはショップに残ってお母さんになっていたはず。今、レイチェルのいない生活は考えられないので、あのじゃんけんに勝てて本当によかったです(笑)」。
そう、たしかに愛犬との出会いの多くは、奇跡のような偶然のたまものですよね。
■海へ、山へ。犬と一緒にできることは、こんなにたくさんある!
こうして大竹家の一員になったレイチェル。レイチェルは自立心が強く、クールな性格ですが、たまに甘えた表情も見せる「ツンデレ犬」。「犬が苦手…」だったはずの大竹さんもすぐに魅了され、平日も休日も犬中心の生活が始まりました。
1年半後にはレイチェルの遊び相手に…ということで、同じくウィペットのブリジットを迎え、週末は必ずと言っていいほど、犬たちと一緒に出かけるようになったそうです。
「犬のために出かけるようになったというより、犬を飼う前から夫婦でよく出かけていましたので、それに犬を連れて行くようになった…という感じです」という大竹さん。レイチェルもブリジットもお出かけは大好き。なんと沖縄以外の全都道府県を制覇しているというのですから、驚きです!
お出かけ先でも大竹さん夫妻と犬たちとの楽しみ方は実にバラエティ豊か。夏は湖でカヤック、冬はスノーモービルや雪遊び…と、いろいろなアクティビティに挑戦しています。
「やってみると、意外といろんなことが一緒にできるんですよね」という大竹さん。レイチェルもブリジットも1歳になるとルアー・コーシングというドッグスポーツにも挑戦させています。レイチェルもブリジットもこの競技が大好きで決勝大会にも毎年出場を果たしています。
「ルアーを追いかける競技なので、ウィペットの本能が掻き立てられる感じなんでしょうね。ものすごく真剣に走る姿は本当にかっこいいし、美しいんですよ」。
タイムを競う競技ですが「犬に無理をさせない」のが大竹さんのスタンス。過酷なトレーニングなどはせず、犬との遊びの延長として楽しんでいるそうです。
「遊びやコーシングを通していろいろな飼い主さんと知り合うことができ、犬たちと出かけるのがますます楽しくなりました。2010年に『足柄運動会』を始めて、仲良くしてもらっている飼い主さんと犬たちに、思いっきり楽しんでもらう機会になればと願って開催しています。たくさんの犬好きの家族が集まるせっかくの機会なので、運動会の中でチャリティのコーシングやマッサージ、バザーなども行い、寄付金や寄付物資を募り、補助犬協会や保護団体などに寄付する活動にも力を入れています」。
■ブリジット、もう一度、一緒に走ろう!
ところが、今年2016年冬の「足柄運動会」は残念ながら中止となってしまいました。10月末にブリジットが遊びの最中に左後ろ脚の靭帯を切ってしまい、入院・手術することになったのです。
結果としてTPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)法という高度な手術を受けて患部にプレートを入れることに成功したブリジット。上手くいけば2~3ヵ月で骨がつながることになるものの、以前のように走れるようになるには半年間くらい、リハビリを続ける必要があるとのこと。
「時間はかかりますが、ブリジットの脚が元通りになる可能性が高いことがわかって、ホッとしています」という大竹さん。この冬は夫婦で一緒にブリジットのリハビリに取り組む予定だといいます。
「目標は以前のように走れる状態に戻し、毎年7月に出場している大会に来年も出場すること。生き生きと嬉しそうに走るブリジットをもう一度見られる日まで、家族一丸になって頑張ります。もちろん来年は『足柄運動会』も再開したいと思います」。
持ち前の天真爛漫な性格で入院中も食欲旺盛、術後の経過も良好だというブリジット。リハビリを頑張って、また元気に走り回る姿を見せてくださいね。