関西のJRのエース「新快速」。
「新快速」は大阪万博直後の昭和45(1970)年10月、「快速より速い列車」として東海道・山陽線の京都~西明石間にデビューしました。
現在は223系電車と新鋭の225系電車(画像)が、最高時速130キロで京阪神地区を快走。
運行区間も時代と共に拡大され、北は福井県の「敦賀」から、西は兵庫県の「播州赤穂」まで2府3県に運行エリアを拡大しています。
中には敦賀から播州赤穂まで250キロ以上を、およそ4時間かけて直通する列車もあります。
この「新快速」のモチーフになったとされるのが、首都圏ではおなじみ中央線の「特別快速」。
昭和42(1967)年に「快速より速い列車」としてデビュー、現在は主に「中央特快・青梅特快」の2本立てで運行されています。
中央線の「特別快速」が誕生した背景には、ライバル・京王の「特急」がありました。
関西に「新快速」が誕生した背景にも、阪急、京阪などの「関西私鉄王国」がありました。
現在「新快速」「特別快速」といった種別があるJR線には、たいていライバルとなる大手私鉄が存在しています。
参考:「産経新聞」(2010年11月6日付)
「特急並みに速い」画期的なサービス、「新快速」の登場から45年あまり。
ほぼ同じ時代を駆け抜けてきたロングセラー駅弁が神戸駅(新神戸駅)にあります。
その名もずばり「肉めし」(1,030円)。
発売開始は昭和40(1965)年ですので、既に歴史は半世紀を超えました。
調整元は神戸を拠点に西明石、大阪、京都など多くの「新快速」エリアで駅弁を販売している「淡路屋」です。
牛のもも肉をブロックのまま伝統の「たれ」に漬け込んで、丁寧に焼き上げたという「ローストビーフ」がメイン。
そのローストビーフをサフラン風味のご飯に敷き詰めた、シンプルでボリューム感ある駅弁です。
当時はまだまだ「幕の内」的な駅弁が多かった時代、牛肉自体が庶民には高嶺の花。
そもそも、牛肉駅弁が初めて登場したのも昭和34(1959)年のこと(紀勢本線・松阪駅)。
そんな時代の「ローストビーフ」駅弁、それはそれは画期的なモノだった筈です。
開発者の皆さんの「今までにない特別なものを・・・」という思いが時代を超えて伝わってくるような気がします。
神戸といえば「神戸ビーフ」「但馬牛」に代表されるブランド牛の街。
そのイメージを大事にしながら、今なお丁寧に作り続けられている「肉めし」。
都市部の駅弁にはデパ地下、駅ナカなど、多くのライバルがいることも見逃せません。
私鉄とのライバル関係から生まれてきた「新快速」同様、厳しい競争を生き残ってきた神戸の名物駅弁「肉めし」。
「新快速」と「肉めし」、もしかしたら相通じるものがあるのかもしれません。
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/