フルコースに蟻?『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第116回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』を掘り起こします。

世界一のレストラン、今度の舞台は東京です。

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2003年、デンマーク屈指のレストラン経営者 クラウス・マイヤーが、当時25歳だったシェフ レネ・レゼビとともにオープンさせたレストラン「NOMA ノーマ」。
100%地元の食材を使って生み出した創作料理の数々は、北欧料理に対する既成概念を打ち砕き世界中の人々を驚かせました。
一躍、首都コペンハーゲンの人気店となり、2010年から2014年にかけては、料理界のアカデミー賞とも言われる「世界のベスト・レストラン50」で4度にわたって第1位に選ばれるという快挙を成し遂げました。

そんな人気店が2015年、世界初の試みとして、東京・日本橋に「ノーマ・アット・マンダリン・東京」を期間限定で開店することを決定。
「ノーマ」を支える若き料理人たちの姿を描いたドキュメンタリー映画『ノーマ東京 世界一のレストランがやって来た』が、いよいよ日本で公開となります。

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2015年、カリスマシェフ レネ・レゼピが総勢77名のスタッフを引き連れ、来日。
しかもデンマークの本店を休業し、スタッフ全員で日本に行く…ということで、世界中で大きなニュースとなった。
本店と同様、その土地の食材を使用するというコンセプトを貫くレネ。
食材探しのために日本全国を巡る旅は1年以上の歳月を費やし、そのための来日は合計7回にも及んだ。

しかしレストランオープンの15日前、レネはレシピ開発チームを一蹴。
「作り直しだ、これじゃお客には出せない。」
果たして、レネが望む究極の一皿とは…。

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レネたち一行は、まだ土がついている状態の素材を口に含んだり、インスピレーションが働いたキノコに手を伸ばして「それは毒キノコだ」と同行者に止められたり、まだ熟していない白いイチゴを買い取ろうとしてイチゴ農家と揉めたり…。
食材探しの旅は大袈裟ではなく、ある意味、命がけ。
その姿はまるで、自然と調和し、生命の尊厳に触れているかのように映し出されていきます。

そういう過程を経て彼らが生み出したノーマの料理は、どれも繊細で美しく、鮮烈。
思わず、溜息がこぼれてしまいます。

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それにしても、ボタンエビにアリをトッピングするとは、誰も思いつきませんよね〜。
ちなみに日本のアリは、長野県産が絶品だそうです!?
しかしレネの手にかかれば、アリでも昆虫でも「食べてみたい!」と食指が動くワケですから。
いやぁ、恐るべし、人間の食欲!

個人的には、発酵食品という日本の伝統的食材を巧く利用していることに興味を覚えました。
聞けばスカンジナビア地方では、発酵は越冬材料に欠かせない伝統的な調理法なのだとか。
カリスマシェフが追求する食文化の可能性に、是非触れてみて。

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ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た
2016年12月10日からヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次ロードショー
監督:モーリス・デッカーズ
出演:レネ・レゼピ、ノーマのスタッフ ほか
©2015 BlazHoffski / Dahl TV. All Rights Reserved.
公式サイト http://www.nomatokyo.ayapro.ne.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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