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255系特急「しおさい」
日本本土では最も早い初日の出が拝める場所、千葉・銚子の犬吠埼。
銚子へのアクセスを担う列車は、JR総武本線の特急「しおさい」です。
東京を出ると錦糸町、千葉、佐倉、八街、成東、横芝、八日市場、旭、飯岡の順に停車し、終点・銚子までは2時間弱の旅。
現在は平成5(1993)年デビューの255系電車がグリーン車付の9両編成で充当され、日中はおよそ3時間おきに運行されています。
255系に始まった青と黄色を基調としたカラーリングの電車は、千葉を走る列車のスタンダードになりました。
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万葉軒千葉工場
「しおさい」が停まる千葉から各駅停車で1駅、東千葉の駅前にあるのが、駅弁屋さんの「万葉軒」です。
「万葉軒」は昭和2(1927)年の創業で、千葉駅の駅弁を手がけており、駅名票と動輪のモニュメントが設置され、駅弁屋さんの鉄道愛が感じられる社屋。
現在は「株式会社リエイ」の一部門となっており、調整元の表記も「株式会社リエイ 万葉軒千葉工場」となっています。
千葉駅が昭和38(1963)年に移転したことを考慮すれば、元はほぼ千葉駅前にお店を構えていたことが伺える立地です。
国道126号に面しており、台数は少ないながら駐車場もあって、クルマでの立ち寄りも可能です。
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万葉軒千葉工場のイートインスペース
「万葉軒千葉工場」の素晴らしい点は、売店内にイートインスペースを設けているところ。
しかもJRから廃車になった183系電車のグリーン車の座席を譲り受け、お店で列車気分を感じながら駅弁を食べられるのです。
”グリーン席”は4席のみですが、他にも普通にテーブル席が数席あって、昼どきは近所にお勤めの方がプチ駅弁旅気分を味わっていく様子が見られます。
窓枠には、ファン垂涎の「成田ー千葉」「千葉ー相模湖」と書かれたサボ(行先案内板)が!
駅弁屋さんや駅の売店は数多くあれど、買ってすぐに「イートイン」出来る所って、実はとても少ないんですよね。
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サービスの味噌汁とお茶
さらに駅弁をイートインでいただくと、みそ汁とお茶(コーヒー)が1杯ずつサービス!
セルフサービスで用意されており、寒いこの時期は、とてもありがたい存在です。
特に味噌汁は具だくさんで、駅弁と一緒にいただくと丁度よくお腹にたまります。
これなら千葉から1駅、足を伸ばした甲斐があるというもの。(営業時間7:00~17:00、16時以降割引あり、年末年始の営業時間は変更あり)
さあ、千葉でいただくならどんな駅弁でしょうか?
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菜の花弁当
千葉駅を代表する駅弁といえば「菜の花弁当」(650円)。
千葉の県の花「菜の花」ゆかりの駅弁です。
レトロながら明るい雰囲気の紙ふたが今も健在。
黄色い綴じ紐を外せば、紙ふたには昭和初期の新民謡「房州よいとこ」の一節も・・・。
実はこの駅弁、天皇陛下が皇太子時代の昭和45(1970)年、浩宮さま(皇太子殿下)と千葉へお越しになった際、一緒にお召し上がりになった駅弁なのです。
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菜の花弁当
紙ぶたを外すと、菜の花をイメージした煎り玉子の黄色がパッと広がります。
まるで陽光が差し込んだような眩しさです。
陛下がお召し上がりになったと訊けば、それはロイヤルな輝きにも見えます。
鶏そぼろと煎り玉子ですから、大人も子供も大好きな昭和のテッパンそぼろご飯。
箸ではなく、楊枝一体型の先割れスプーンが入っているのも”昭和後期感”がありますよね。
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菜の花弁当
卵とそぼろを区切るように、一本添えられているのは「あさり」の串。
甘めの卵としょっぱめの鶏そぼろ、それを中和してくれる白いご飯。
紅生姜と漬物でアクセントを付ければ、バランスよくいただけます。
以前、ある駅弁屋さんの方と話していた時にも出てきたんですが、売れる駅弁はやはり「バランスがいい」のだそう。
昭和の家族旅行を想起させてくれる、ほのぼの系の駅弁です。
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太海からの初日の出、2011年筆者撮影
千葉は初日の出、初詣スポットもいっぱい。
そして年明けから、南房総は早春の花の季節を迎えます。
暖かいエリアではいちご狩りも始まることでしょう。
温め機能は無くても、不思議と心が温まる懐かしい駅弁片手に、千葉へ春を探しにのんびり旅に出かけてみては?
(取材・文:望月崇史)
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/