平成29(2017)年も、「ライター望月の駅弁膝栗毛」をよろしくお願いします。
新年最初の1週間は、「とり年」にちなんで、「とりめし」駅弁スペシャル!
『真冬のみちのく・とりめし雪中行軍』と題して、北東北の「とりめし」駅弁を食べまくっていきます。
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奥羽本線701系電車
秋田~青森を結ぶ「奥羽(おうう)本線」にやって来ました。
朝日を浴びながら雪を巻き上げて走るのは、北東北のローカル線の主・701系電車。
平成5(1993)年から活躍している電車で、東北に多く残っていた客車列車を置き換えました。
秋田を中心に活躍する701系は、ピンクの帯を巻いているのが特徴。
普段は短い2~3両編成が多いものの、朝夕は5両編成で走る列車もあります。
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大館駅前ハチ公像
701系電車に揺られてやって来たのは、秋田県の大館駅。
駅前では「ハチ公」の銅像がお出迎えです。
うっすら雪をかぶって少し寒そうですが、渋谷のハチ公よりも凛々しさがありますよね。
さあ、今年は自分が主役・・・って、「戌年」には1年早かったか???
でも、大館には、「とり年」の今年だからこそ食べたい駅弁があるんです。
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花善
ハチ公像の背後に建つのは、大館駅の駅弁屋さん「花善」。
「花善」の名物といえば、何と言っても「鶏めし弁当」。
昭和22(1947)年からの大ロングセラーで、今年で発売開始70年の節目を迎えます。
もちろん駅弁膝栗毛でも、「去年4月」にご紹介していました。
もうお店に入る前から、「鶏めし」のいい匂いが漂ってきていて、食欲を抑えきれません!
そんな「花善」の弁当販売処を訪ねると、大きな垂れ幕が掲げられていました。
去年の秋に行われた東日本エリアの駅弁人気投票「駅弁味の陣2016」で、「花善」からエントリーした「比内地鶏の鶏めし弁当」が、見事1位の「駅弁大将軍」に輝きました。
5回目の「駅弁味の陣」で、同一業者による連覇は初めてのこと。
「鶏めし」は、大館駅弁の代名詞的な存在といっても過言ではありません。
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花善
「花善」の弁当販売処は、調製場所の一角に設けられています。
午前中などに立ち寄ると、奥で白衣を着た皆さんがテキパキと折詰におかずを詰めていく様子が見られます。
今回は特別に窓口の場所から、駅弁が作られていく雰囲気を撮らせていただきました。
この日は、お昼に向けて、団体さんから注文が入ったという「スペシャル鶏めし弁当」の調製中。
駅弁って、やっぱり1つ1つ手作りなのがイイんですよね!
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比内地鶏の鶏めし
さあ、今回は「駅弁味の陣2016」の駅弁大将軍、「比内地鶏の鶏めし」(1,180円)をいただきます。
当初は、去年10~11月の期間限定販売を予定していましたが、駅弁味の陣での人気を受けて、レギュラーに昇格を果たしました。
高級感ある手触りの掛け紙で、これまで販売されていた「特上鶏めし弁当」をバージョンアップ。
この駅弁では、地元・大館産の「比内地鶏」を使うことにこだわりました。
掛け紙にもしっかり「比内地鶏」の文字が躍ります。
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比内地鶏の鶏めし
掛け紙を外し、ふたを開けると・・・待ってました!実にイイ匂い!!
江戸時代からあまりの美味しさゆえに「年貢」として納めることを認められていた比内鶏の系譜を継ぐ「比内地鶏」。
日本三大美味鶏の1つにも数えられるという地鶏のうま味を一番引き出せるように、1つは塩焼き、もう1つは秘伝のタレを使ったそぼろに仕上げました。
「鶏めし」の米には、秋田・大館産&大潟村産の「あきたこまち」が100%使われています。
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比内地鶏の鶏めし
私が特に気に入ったのは、何と言っても「塩焼き」!
しっかりした歯応え、噛みしめるたびにジュワッと来る「比内地鶏」そのものの旨味、鶏めしとの相性が神レベルです。
一気に食べたい気持ちと、最後までとっておきたい気持ちが、心の中で天使と悪魔の大戦争!
でも、ご飯と肉をバランスよくいただきたいという気持ちも・・・。
この「塩焼き」に箸を伸ばすペース配分は、ずいぶん悩ましいかと思います。
加えて、「花善」の駅弁は、手に持った時の“ズシリ感”が素晴らしいのも特徴。
「お客さんにお腹いっぱいで食べられないと言ってもらいたい」というお店の方針もあって、折詰の縁ギリギリまで、たっぷり鶏めしを盛ってくれるんですよね。
あと、秋田杉の間伐材を使った割り箸も魅力の一つで、秋田杉のいい匂いと鶏めしの香ばしい匂いが口元でブレンドされるのがたまりません!
これは納得の「大将軍」でございました。
なお、「比内地鶏の鶏めし」は、作り置きを多めにしている今のところは予約なしでも購入可能。
ただ、作り置きが無い時は、調製に若干時間がかかり、お待たせしてしまうことがあるので、予約をしていただけたら確実です・・・とのことでした。
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花輪線キハ110
最近は秋田駅や新青森駅でも見られる「花善」の駅弁ですが、やっぱり大館で食べるのは格別。
輸送する駅弁は、保存性の観点からやっぱり「冷やされる」んです。
でも、現地で買えば、折詰を手渡された時、出来たての温もりを感じられる可能性が高くなります。
奥羽本線の701系電車でも、空いている時なら駅弁もイケそうですが、大館まで来て食べるなら、花輪線を走るディーゼルカーのボックスシートがベスト駅弁ポジションかも!?
平成29(2017)年・とり年は、東日本イチの「鶏めし」で“駅弁初め”はいかがでしょうか?
(取材・文:望月崇史)
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/