国鉄時代、昭和40年代までは「気動車王国」といわれた千葉。
その名残を感じさせる、千葉のJR唯一の非電化路線が久留里線(くるりせん)です。
久留里線は、木更津と君津市の上総亀山の間・32.2kmを結ぶ路線。
5年前までは国鉄型の気動車でしたが、今は3ドアのキハE130系が活躍中です。
房総の里山の中をステンレス製のディーゼルカーが、軽快に駆けぬけています。
久留里線は、大正時代に「千葉県営鉄道」として始まりました。
その後、国有化され、木原線(現・いすみ鉄道)との接続を目指して工事が行われましたが、上総亀山駅まで作られて中断し、そのまま今の形になりました。
横田駅は、単線の久留里線の中では貴重な交換(列車のすれ違い)が出来る駅。
駅舎の駅名板にも懐かしいホーロー板が残っています。
大切な地元の足となっている久留里線。
これまで多くの人が通り抜けてきたであろう改札口も年季が入っています。
JR線で、このようなレトロな改札口が残っている駅は、ずいぶん少なくなりました。
でも、東京から2時間ほどで、こんな懐かしい風景に出逢えるのは、とても貴重なこと。
この久留里線と小湊鐵道、いすみ鉄道の房総非電化三線は、千葉が誇るべき立派な「鉄道文化遺産」ではないかと思います。
路線名にもなっている最大の途中駅・久留里は、水の町。
久留里駅周辺では、あちこちで掘り抜き井戸を見ることができます。
しかも、民家の軒先に当たり前のように井戸があって、一般に開放されているものもあります。
明治時代、千葉県内で「上総掘り」の技術が開発されたことで、各地に自噴井戸が出来ました。
久留里の水は、千葉では唯一「平成の名水百選」の1つにも選ばれています。
中でも歴史ある井戸といえば、「久留里の大井戸」。
この井戸は縦5メートル、横2.2メートル、水深およそ8メートルの大きな堀り井戸で、江戸時代の寛永年間に作られたといわれています。
掘られた当時は、久留里で唯一の水源だったそうで、今使用されていませんが、地元自治会が管理し大切に保護しているといいます。
ちなみに久留里には、この豊かな水を使った酒蔵が数軒あるので、地酒も楽しめるのです。
鉄道旅の醍醐味は、安心してお酒が呑めることです。
地酒が合うのは、やっぱり地元の食材なんですよね。
その意味では、ご当地駅弁は、地酒の最高のお供と言っていいでしょう。
そこで今回は、千葉駅弁の「千葉ご当地弁当」(1,000円)をご紹介!
調整元は、「株式会社リエイ万葉軒千葉工場」です。
【お品書き】
銚子産まぐろ煮
銚子産秋刀魚蒲焼
香取産佐原水郷赤鶏 佐倉味噌漬け焼き
千葉県産豚しゅうまい
匝瑳産鶏つくね けしの実添え
千葉県産卵の玉子焼き
房総産の太ひじきの金平
菜の花の落花生和え
刻み鉄砲漬け
あさりの生姜煮
野菜煮
国産米
千葉各地の名物がバランスよく入った「千葉ご当地弁当」。
千葉って米は美味しい上に、魚は獲れて畜産、酪農も盛んで、野菜も一大産地という食材の宝庫なんですよね。
弁当としては至ってシンプルですが、東京の隣が千葉でホント良かったと思わせてくれる駅弁。
のどかな里山や海を眺めながら、千葉のポテンシャルの高さを舌の上で感じたいものです。
現在、木更津~久留里間は、普通列車が概ね毎時1本されています。
ただ、久留里以遠はかなり本数が少なくなるダイヤ。
通常、久留里8:14発の後は13:50発まで、終着・上総亀山まで行く列車がありません。
このためか13:50発の上総亀山行は、2両編成での運行となっていました。
せっかく久留里線の旅を楽しむなら、久留里などで途中下車をしていくのがいいのかも!?
外房線の大原を目指して作られたものの、その計画は果たせなかった久留里線。
上総亀山駅の錆びた車止めが、哀愁を漂わせます。
多分にもれず減便が進む久留里線の末端部ですが、君津市の内陸部で暮らす年配の方や学生の皆さんにとっては大切な足。
そんな地元の足に、ちょこっと間借りさせてもらうのが、ローカル線旅の醍醐味というもの。
東京近郊にエアポケットのように残された長閑な風景を眺めに、週末の気動車旅を楽しんでみてはいかがでしょうか?
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/