あけの語りびと

1200年以上の歴史ある古道をマウンテンバイクで走り抜ける!西伊豆古道再生プロジェクト代表「あけの語りびと」(朗読公開)

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
上柳昌彦あさぼらけ 『あけの語りびと』

『僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る』

これは、高村光太郎の詩「道程」の一節ですが、自分の前に昔からあった道を探り当て、掘り起こした人がいます。静岡県賀茂郡松崎町にお住いの松本潤一郎さん、34歳。

松本さんは、海外を旅するのが大好きだったお父さんの影響で、いつか自分も世界を旅することを夢に見ていました。バックパックで海外に出かけるようになったのは、10代になってから。
まるで、水を得た魚のように、ヒマラヤのトレッキングを1カ月。オートバイで1年くらいかけて南米を走り抜けたのは、17歳の時でした。

こんな松本さんが、伊豆に来たのは今から9年前。風光明媚な山や海に魅せられたせいではありません。旅館で住み込みで働いて、日本料理の修業をするためでした。
日本料理の腕を身につければ、海外の街で職を探しやすい。ヨーロッパでもアフリカでも日本料理を作れたら、そこで貯金をして、次の旅を目指すことができます。

こんな経緯から、地元の人たちとの交流を重ねる中で、松本さんは、あるお年寄りから、気になる話を耳にします。

「ここの山には「炭焼きの道」といって、炭を運び出す道が沢山あったんだ」

この地域は江戸への炭の供給地として、古くから炭焼きが盛んでした。
(その道を掘り出したら、面白いかも知れない)
松本さんの中には、ひらめきが走りました。
(古い道は、トレッキングやマウンテンバイクのコースに使える!)
休みの日を見つけて、松本さんは山に入ってみました。

伊豆といえば、みなさんは海の方にばかり目を向けます。けれども、本当に面白いのは、山だったんですね。
倒れた雑木やうず高く積もった落ち葉に埋もれた道の跡が出てきました。
両側の斜面を削り取って、ハーフパイプのコースのようにした場所もあります。これは、ソリに炭を積んで運ぶのに都合よく作った道でしょう。
松本さんの中のひらめきが、希望に変わりました。

始めは、たった一人の作業でした。重たい倒木を切り、うず高く降り積もった落ち葉をかき出す。
ひとりぼっちの孤独な作業は大変でしたが、もう振り返ることは無く、それはむしろ「楽しかった」といいます。
松本さんは、町役場にも出向いて企画書を出しました。

「コースを作りたいんです。古い道は、きっと観光資源になります」

役場に道を管理する地元の区の紹介を受け、役員会に出向いて説明をしたり、個人所有の土地の契約書を交わしたりもしました。
「手入れもできずに困っていたんだ」と、快い了解も取り付けました。

やがて、こんな松本さんに一人、二人と同調する人が増えてきました。
そして、静岡県の森林整備の補助制度も利用して、これまで5年間に開いた道は、松崎町と西伊豆町のおよそ40キロ!
出来上がったコースの名前は『山伏トレイル』!山伏の持つ神秘性は、海外の人に響くに違いないと思ったからです。
ふるさと納税に3万円納めれば、1万円のトレイル代金がサービスという仕組みまで出来上がりました。

ツァーを開始したのは、2013年。ガイド料で稼げるビジネスも成り立つようになりました。
最初の参加者は、年間200人ほど。去年はおよそ1,200人と順調に増えています。
山伏トレイルの特徴は、自然を利用しているためトレッキングのような楽しみとマウンテンバイクの楽しみを兼ね備えていることです。

私有地も含むためガイド付きでないと走れませんが、山を下ればすぐに海。伊豆の地形を生かした海のレジャーや味覚を合わせたツアーも楽しみです。

伊豆市は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの自転車競技会場。山の風を切って走っているうちに潮の香りが満ちてくる『山伏トレイル』は、海外の多くの自転車ファンを魅了することでしょう。

2017年1月25日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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