伊東駅「ぼんかま」(1,050円)~実は伝統への思いが込められた華やかなちらし寿司!【ライター望月の駅弁膝栗毛】

By -  公開:  更新:

伊豆急リゾート21・黒船電車

伊豆急リゾート21・黒船電車

伊豆急行線の看板列車「リゾート21」。
JR伊東線~伊豆急行線を直通する「普通列車」として運行されています。
真っ黒に塗られた車両は、下田に来航した黒船にちなんだ「黒船電車」。
2月4日からは、この編成とは別の「リゾート21」が、東伊豆の味覚・金目鯛をモチーフとした赤い「きんめ電車」にリニューアルされ登場します。

E259系・特急「マリンエクスプレス踊り子」

E259系・特急「マリンエクスプレス踊り子」

「リゾート21」は、もう1編成の“アルファ・リゾート21”が新たな観光列車に改造中。
今シーズンの「リゾート21」は、特急「リゾート踊り子」としての運行は無く、いつもの週末・東京12:30発の列車は、「マリンエクスプレス踊り子」として運行される日が多くなっています。
コチラは成田エクスプレス用に作られたE259系電車を使用した「踊り子」号。
“NEX”は、東京駅の地下ホームを発着しますので、地上で観られるのはちょっと珍しい感じ。
全席電源付きですので、スマホ時代の今にピッタリの「踊り子」でもあります。

ぼんかま

ぼんかま

いつもとちょっと違う“非日常”の鉄道旅が楽しめるのが東伊豆。
そんな鉄道旅のお供にしてほしいのが、伊東駅弁の「ぼんかま」(1,050円)です。
調製元は、伊東駅弁としておなじみの「祇園」。
見た目も、手にとっても上品な雰囲気が漂うのは、掛け紙が「和紙」だから。
実はこの掛け紙、京都から取り寄せている上質なものだそうです。

ぼんかま

ぼんかま

優しくかけ紐をほどいていくと、彩り華やかなちらし寿司が現れました。
この駅弁、「祇園」で販売されている「上ちらし寿司」の位置づけ。
酢飯の上に肉厚な鯛が3枚、海老、蒲鉾、レンコン、椎茸、栗などがたっぷり載っています。
早速、箸を入れて頬張れば、甘めの桜海老が現れて、静岡らしい味わいに・・・。
これに鮭のほぐし身も入って、甘さと塩辛さ、酸味のバランスが絶妙です!

ぼんかま

ぼんかま

では、この駅弁名、なぜ“上ちらし”ではなく、「ぼんかま」なのでしょうか?
「祇園」によると、創業者の奥さんが子供の頃、町内の大人たちが年に一度、子供たちを集めて、ご馳走をふるまう「ぼんかま」という風習があったのだそうです。
この風習を「言葉」として残したいという思いから、昔ながらのご馳走が詰まったこの駅弁を「ぼんかま」と命名したというんですね。

そんな伝統への思いが「和紙」の掛け紙にも繋がっているんだと思いますが、最近、長年取引を行ってきた京都の業者さんが廃業してしまったそう・・・。
このため、和紙の掛け紙で「ぼんかま」を販売できるのは、現在在庫がある分のみとのこと。
今後はコスト面からやむなく、普通紙による別デザインの掛け紙になる予定だといいます。
ただ、祇園の守谷社長は「いつか、和紙の掛け紙は復活させたい!」と話しています。

ユネスコの世界無形文化遺産にも登録されている日本の「和紙」。
駅弁の掛け紙が和紙だと、海外からの人にもWで「日本文化」を感じて貰えるんですよね。
その意味でも、和紙を使った駅弁がもっと増えたらいいのに・・・と思います。

251系特急「スーパービュー踊り子」

251系特急「スーパービュー踊り子」

伊東駅随一の“華やか”な駅弁、「ぼんかま」。
花の季節を迎えたこの時期の伊豆の旅には、ピッタリの駅弁です。
そして実は名前にも、装丁にも、中身にも、作り手の「伝統」への思いが詰まった駅弁。
2月の伊東は、700年続く伝統の「大室山の山焼き」(今年は12日予定)もあります。
花見しながら、伊豆の海を眺めながら、あるいは伊豆旅の帰りに、和紙の掛け紙を外して、上品な味わいを感じてみてはいかがでしょうか?

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

Page top