この世でもっとも、物騒な名前の時計をご存じでしょうか。
その名も… 「世界終末時計」※Doomsday clock!
いったい、どんな時計なのか?
その名の通り世界の終末、──言い換えれば「人類絶滅の日」「地球最後の日」を表す時計です。
ただし、時計といってもホンモノの時計のように、機械仕掛けで自分から動く時計ではありません。
核戦争、あるいは環境の激変などによる「人類が絶滅する瞬間」を午前零時になぞらえて、その瞬間までの残り時間を「残りあと何分」というかたちで、象徴的に示す時計です。
(※要するに、有識者たちが熟慮に熟慮を重ねたうえで、この針を動かす訳です。)
つい先ごろ(1月26日)この「世界終末時計」の残り時間が「恐ろしく縮まってしまった」ということで、世界的な騒ぎとなっています。
つまり、この「世界終末時計」によれば、われわれ人類は今まさに史上最大級の危機に瀕している… というのです。
世界終末時計の詳しい仕組みとは?
そして、なぜ今、この時計の針が、破滅に向けて、大きく動いてしまったのでしょうか?
ちょいと、急いで説明していきましょう。
なんとなれば、「その時」が、いまこの瞬間にも訪れるかもしれませんから…。
このアメリカ生まれの「世界終末時計」なるものが誕生したのは、意外に古くて1947年のこと。
当のアメリカが広島と長崎に原爆を投下した2年後のことでした。
ちょっと意地の悪い言い方をすれば、当時のアメリカではまだ自浄作用が働いていたわけですね。
この時計を初めて発表したのはアメリカの一流科学雑誌『Bulletin of the Atomic Scientists』※「原子力科学者会報」。
この科学雑誌が組織している委員会が、政治、経済、宗教など、さまざまな要因を鑑みつつ、数年に一度、時計の針を進めたり戻したりするのです。
「ムムッ? 雑誌の委員会だなんて、なんだかインチキくさいなぁ…」なんて言っちゃいけません。
この委員会は、世界的な一流の科学者たちで組織されておりまして…
これまでに、のべ15人に及ぶ「ノーベル賞受賞者たち」も含まれています。
けしてチャランポランな人たちではなく、メンバーの素性、経歴が、実にシッカリしている──
だからこそ時計の針が動くたび、世界的なニュースになる… というわけなんです。
さて、この「世界終末時計」。
さきほど言ったように「滅亡の日」を深夜零時に見立てているわけなのですが…
誕生以来、これまで、どんなふうに針が動いてきたのでしょうか?
大きな動きがあった時を、順を追って振り返ってみますと…
■1947年「世界終末時計」登場:当初、時計の針は11時53分を示していました。つまり「残り時間7分」です。
■1949年 ソビエト連邦が初めての原爆実験に成功:針がググッと進み、残り時間は「3分」に…
■1953年 アメリカ、ソ連、ふたつの超大国が相次いで水素爆弾の実験に成功:人類絶滅までの残り時間はついにわずか「2分」に!
~ちなみに1962年にはアメリカとソ連が核戦争を起こす一歩手前までいった「キューバ危機」がありましたが… この際には意外にも(?)世界終末時計の針は進んでいません。
あの未曾有の危機の結果、ケネディとフルシチョフが歩み寄ったおかげ… とも言われています。
■1963年 アメリカ、ソ連、イギリスが「部分的核実験禁止条約」を締結:ケネディ大統領の呼びかけにより東西冷戦は「雪解け」に。終末時計の針は一気に戻され、残り時間「12分」となりました。
■1991年 ソビエト連邦崩壊 東西冷戦終結:さらに針が戻り、残り時間は「17分」に。これが一番「残り時間」があった頃…。
■1998年 インドとパキスタンが核保有宣言:残り時間は一気に進み「9分」に。
■2007年 北朝鮮による核実験に加え、地球温暖化が進行:残り時間は「5分」となりました。
■2010年 アメリカ・オバマ大統領による核兵器廃絶運動が開始:今世紀になって初めて針が戻り、残り時間が「6分」となりました。
■2012年 東日本大震災による「福島第一原発事故」勃発:意外と知られていませんが、あの原発事故で針が進み、残り時間は「5分」に!世界の科学者たちがあの原発事故を憂慮していたことが分かります。
■2015年 さらなる地球温暖化の進行、北朝鮮を始めとする核軍備競争:さらに時計の針が進められ残り時間は1949年以来の「残り3分」になりました。
そして… 今年1月。あのドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任したときのことです。
「世界終末時計」の残り時間が3分を切り…なんと「2分半」まで短縮されてしまいました!これは、米ソが水爆実験を行った1953年の「2分」に次ぐ恐るべき危機です。
今回、針が進んだ要因とされているのは、やはり例の「暴走発言」にありました。
ひとつには…トランプ大統領が、オバマさんの方針から一転、「核廃絶」に対し、消極的な発言を行なったこと。
そして、もうひとつ。気候変動対策に対しても、消極的な発言を行なったこと…。
かように、ドナルド・トランプは放っておくと人類全体、地球全体の危機にも繋がりかねない、タイヘンなタマなのかもしれない… ということなんです!
2月15日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より