昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。
そんなアナタのためにドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が「ぜひ手元に置きたい一枚」をアーティスト別・ジャンル別にご紹介していきます。
2/26は、サッカー界にとって歴史的な一日になりそうです。J2の開幕日であり、同時に横浜FC・三浦知良選手の50 歳のバースデー。開幕戦にカズがゴールを決めれば、Jリーグ史上初の「50代ゴール」になります。実は私もカズと同じ1967年2月生まれなのですが、同世代の選手がまだ現役でプレーしているのはとても励みになります。個人的にもぜひ「五十路のカズダンス」を見てみたいものですが、実は同じ1967年2月に生まれ、しかもまだ芸能界で活躍している女性アーティストが3人もいるのです。
そこで今回は、カズへのエールも込めて、3人が1980年代に発表したシングル盤と近況をご紹介しましょう。
【その①】・・・『少女人形』伊藤つかさ(1981)
伊藤つかさは、1967年2月21日生まれ。幼い頃から子役として活動していましたが、彼女が脚光を浴びたのは何と言っても『3年B組金八先生』(第2シリーズ)の赤上近子役でしょう。沖田浩之、直江喜一、ひかる一平、川上麻衣子らと共演していましたが、まだ「萌え」という言葉がなかった当時、まさにその先駆となったアイドルでした。八重歯がトレードマークで、当時、同い年の中学生だった私ですら「どんだけロリなんだよ!」と思ったくらい、その純情可憐さは際立っていましたが、その魅力を(確信犯的に)MAXまで引っ張り出したデビュー曲がこの曲です。
作曲は南こうせつが担当。事務所の狙い通りヒットしましたが、当時まだ14歳。労働基準法の絡みで『ザ・ベストテン』には生出演できず、VTR出演していた彼女がもう50歳かと思うと、月日の流れを感じずにはいられません。
決して上手くはないですが、どこかはかなげな独特の歌声が作家魂をくすぐったようで、安井かずみ・加藤和彦夫妻が手掛けた第2弾『夕暮れ物語』、原由子作詞・作曲の第3弾『夢見るSeason』など佳曲も多いです。ベスト盤も出ていますから、機会があればぜひ聴いてみてください。
近年の彼女は舞台を中心に女優活動を続けていますが、現在もこのジャケットの幼い佇まいを残しているのは“才能”だなあと思います。『少女人形』は売れたので、300円程度で入手可能です。
【その②】・・・『とまどいの週末』堀ちえみ(1982)
ドラマ『スチュワーデス物語』の“ドジでノロマな亀”で一世を風靡した堀ちえみは、1967年2月15日生まれ。ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリに輝き、アイドル豊作イヤーの1982年に15歳でデビュー。中森明菜、小泉今日子らと同期デビューです。この年4枚のシングルをリリースしましたが、第4弾がこの曲。本曲を挙げたのはワケがあります。
デビュー曲の『潮風の少女』から『真夏の少女』、そして竹内まりや作の『待ちぼうけ』と、彼女の少女性を強調していたホリプロが、この曲から突如、作詞を業師・森雪之丞に依頼。ベタな歌謡曲路線に舵を切ったのです。そもそも彼女は大阪・堺市出身の関西人。清純派路線の枠に閉じ込めておくには無理があり、スタッフは「アップテンポな曲も行けるんちゃうか?」と冒険したくなったのでしょう。
この試みは成功し、オリコン最高14位でしたが、セールスは初めて10万枚を突破。次作の『さよならの物語』から11曲連続でオリコン10位以内にチャートインし、ベストテン番組の常連となっていきます。しかし、20歳を迎えた87年、秋元康&小室哲哉コンビの『愛を今信じていたい』を最後に、突然芸能界引退を宣言。いったい何があったんだろう?と思いましたが、わずか2年後に芸能界復帰。…かと思ったら、すぐに医師と結婚し、3人の子供を出産。その後も2度の離婚と再婚を繰り返し、7児の母になるとはまったく予想していませんでした。少し前に「8人目にもチャレンジ」という記事を見掛けた気がしますが、そんな波瀾万丈な私生活はともかく、この人も伊藤つかさ同様、表情の中にまだ「アイドルの矜持」を維持しているところは、同い年として拍手したいです。本曲、300円〜500円くらいで手に入るかと。
【その③】・・・『恋はバランス』プリンセス・プリンセス(1987)
日本のガールズバンドで初めて商業的に大成功を収め、ガールズロックのパイオニアとなったプリンセス・プリンセス。女の子が普通にバンド活動をやるようになったのは彼女たちのお陰と言っても過言でありませんが、その中心メンバーだったリードボーカル・奥居香(現在は「岸谷香」)は1967年2月17日生まれ。先日、50歳のバースデーを迎えました。震災復興支援のため、5年前に期間限定でプリプリを再結成。会場を埋めたファンの盛り上がりぶりは、記憶に新しいところです。
そのプリプリも、最初から順風満帆だったわけではありません。もともとTDKレコード(懐かしい!)のオーディションで集められた5人は、当初『赤坂小町』というバンド名でデビュー。その後、事務所移籍、レコード会社移籍、バンド名変更と紆余曲折があって、86年にCBSソニーからプリプリとして再デビューしたのがこの曲です。
残念ながらヒットしませんでしたが、初々しさがパックされたジャケットは超貴重。ジャケットを見ると、アイドル性も求められていたことが分かります。このシングルが出たとき、私は大学生でしたが、ボーカルの奥居がメンバー中最年少で、しかも同い年と聞いて急に親近感が湧いたものです。現在、2児の母ですが、今なお現役ロックアーティストとして活動する彼女の原点はここにあったのです。あまり市場に出ないレア盤ですが、1,000円以上かと。
なんだかんだで、同い年が活躍していると、自分もまだまだ頑張らないと、という気になります。今後もドーナツ盤を探しに…って、その前にとっとと原稿書けよ(笑)。
【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。