さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、3月3日から公開の『ラビング 愛という名前のふたり』を掘り起こします。
これを、純愛ストーリーと呼ばずにはいられない!
このコラムが世に出る頃には今年度のアカデミー授賞式も終わり、どの作品が何部門受賞したか、セレブたちのファッションチェック…などなど、映画ファンの間では話題となっていることでしょう。
過去2回はアカデミー賞候補の演技部門に黒人などマイノリティー(人種的少数派)の俳優が含まれなかったことが物議を呼びましたが、今年度は過去最多の6人の俳優たちがノミネートされました。
その中のひとりが、本作のヒロインを務めるルース・ネッガ。
異人種間の結婚が違法とされていた1950年代のバージニア州で、自らの愛を貫くために戦ったラビング夫妻の感動の実話を映画化したヒューマンドラマです。
1958年、バージニア州。
大工のリチャード・ラビングは恋人のミルドレッドから妊娠を告げられ、大喜びで結婚を申し込む。
しかし当時のバージニア州では、異人種間での結婚は法律により禁じられていた。
しかし子どもの頃から深い絆で結ばれている二人にとって、別れることなど考えられない。そこで二人は、法的に認められているワシントンD.C.で結婚した後、地元で新居を構える。
ところがある日、夜中に突然保安官が現れ、二人を逮捕。
離婚か、故郷を捨てるかの選択を迫られてしまう…。
“LOVING(ラビング)”という名のとおり、ただひたすら愛を貫き続けることが法律に触れてしまう…というのは、いまからわずか60年前の出来事。
ごく普通の労働者階級のラビング夫妻による訴えによって、1967年に法律が変わったという驚くべき実話に感銘を受けた名優コリン・ファースがプロデューサーを名乗り出たことで、映画化が実現しました。
ラビング夫妻を演じたのは、ジョエル・エドガートンとルース・ネッガ。
スクリーンに映し出されるのは、実在する夫婦の慎ましくも美しい人生。
主演二人の曇りのない純真な演技は、観る者の心を揺さぶります。
真っ赤なドレスに身を包み、胸元にはブルーのリボンを付けてアカデミー賞授賞式のレッドカーペットに登場した、ルース・ネッガ。
これはACLU(アメリカ自由人権協会)へのサポートを表明するもので、ほかにもブルーリボンを付けてレッドカーペットを歩くゲストの姿が見られました。
ACLUは、アメリカ合衆国憲法により保障されている言論の自由を守ることを目的とした団体で、現在、ドナルド・トランプ米大統領のイスラム圏7か国に対する入国禁止令などに反対し、アメリカで暮らす難民や移民の権利を守るべきだと主張しています。
監督・脚本を務めたジェフ・ニコルズは、人種差別にまつわる社会派ドラマにはせず、徹底的に二人の愛の物語として描きました。
その結果、愛するとはどういうことかがシンプルに伝わってくる作品に仕上がっています。
自分たちの存在を人に認めてもらいたい、祝福してもらいたい。
誰もが望む当たり前のことを丁寧に紡いだラブストーリーです。
ラビング 愛という名前のふたり
2017年3月3日からTOHOシネマズシャンテほか全国順次ロードショー
監督・脚本:ジェフ・ニコルズ
出演:ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ、マートン・ソーカス、ニック・クロール、テリー・アフニー
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公式サイト http://gaga.ne.jp/loving/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/