昨年夏以来、半年ぶりの九州です。
いつもは東京から5時間かけて新幹線で行くんですが、今回は仕事の都合で飛行機。
福岡市営地下鉄空港線は、JR筑肥線と相互乗り入れを行っているため、JR九州の車両も時々、福岡空港にやって来ます。
この日は、平成27(2015)年デビューのJR九州305系電車による快速「西唐津」行きに乗車。
福岡空港で、白い車体に唐津の文字を見てしまうと、絶品の『呼子のイカ』が思い出されます。
もっとも、現地で食べると、もっと新鮮な“透明の”イカなんですけどね。
そのまま唐津まで乗っていきたい気分を押さえて、空港から2駅の博多で下車します。
今回は、博多駅近くにあるJR九州の本社へ・・・。
2月23日(木)に行われた「第12回九州駅弁グランプリ」の決勝大会を取材しました。
JR九州では、唐池恒二会長が営業部長時代に、この催しを立ち上げました。
大きな駅の大きな駅弁屋さんから、小さな駅の小さな駅弁屋さんまで参加して、九州ナンバー1の駅弁を決める『戦い』が、平成16(2004)年以来、12回にわたって行われているんです。
JR九州・青柳俊彦社長の開会の挨拶で、決勝大会が開幕。
今回から駅弁グランプリは若干ルールが変わって、全てが新エントリー(新作)となりました。
九州各地から全34駅弁がエントリーされ、平成28(2016)年10月からおよそ4カ月間、九州エリアで、アンケートはがきによる「投票」が行われてきました。
その中から10の駅弁が「決勝大会」に進出。
福岡を中心とした新聞・テレビなどのメディア関係者16名、特別審査員6名による投票が行われて、グランプリが決定していきます。
【決勝大会進出駅弁】
博多駅「娘(こ)てまり」(870円・中央軒)
長崎駅「ながさき鯨すき弁当」(1,296円・くらさき)
大分駅「なごり雪」(1,296円・寿し由)
人吉駅「椿べんとう」(1,100円・人吉駅弁やまぐち)
熊本駅「くまもとランチBOX」(1,200円・松栄軒)
鹿児島中央駅「黒豚三昧」(1,080円・松栄軒)
嘉例川駅「筍」(600円・森の弁当やまだ屋)
西都城駅「小さなかしわめし」(600円・せとやま弁当)
西都城駅「幸せ上々、みやこのじょう弁当」(1,080円・せとやま弁当)
宮崎駅「日向鶏べんとう」(760円・宮崎駅弁当)
果たしてどの駅弁が、九州ナンバー1駅弁の座に輝いたのか?
決勝大会・ベスト3を発表していきましょう!
第3位:肥薩線・嘉例川駅「筍」(鹿児島県)
「森の弁当やまだ屋」は、家族3人で製造から販売まで手掛ける小さな駅弁屋さんです。
鹿児島県の肥薩線にある「嘉例川(かれいがわ)駅」は、築100年以上の駅舎が残る無人駅。
この駅を一躍有名にしたのが、特急「はやとの風」も停車する、風情溢れる登録有形文化財の木造駅舎と、かつて「九州駅弁グランプリ」で3連覇を果たした「百年の旅物語 かれい川」でした。
今回は筍ご飯のおにぎりをメインに、かれい川コロッケや唐揚げ、地元では馴染みの「けせん団子」のデザートなどをコンパクトにまとめ、通常は土・日限定で販売しています。
実は嘉例川は鹿児島空港に一番近い駅で、妙見温泉、霧島方面への路線バスでも行けます。
鹿児島へ行ったことがあるのに、まだココに寄ったことが無い方は、少なくないハズ。
ぜひ立ち寄って、木造駅舎と懐かしくて家庭的な駅弁に癒されてください。
第2位:長崎本線長崎駅「ながさき鯨すき弁当」(長崎県)
長崎駅は国鉄時代からの駅弁が無くなり、今は長崎市内数社の弁当を販売。
その中の1つが、長崎市内の鯨専門店「くらさき」が手がける「ながさき鯨すき弁当」です。
鯨のすじ肉をすき焼き風に柔らかく煮込んで、甘辛い味に仕上げ、付け合わせにくらさき十八番の「鯨カツ」と「鯨の竜田揚げ」を添えています。
実はこの駅弁、1月の京王百貨店の駅弁大会でも、1週目のみ実演販売で登場していました。
小嶺取締役によると、1週間の短い期間ながら、リピーターになってくれた人が多かったそう。
それだけ「鯨好きにはたまらない!」駅弁といえるかもしれません。
博多~長崎間は、特急「かもめ」でおよそ2時間。
普通車でも革張りのシートに身を委ねながら、長崎の鯨文化を感じるのもアリでしょう。
さあ、栄えあるグランプリは、どの駅弁屋さんに・・・が、その前に!
会場審査員特別賞:日豊本線大分駅「なごり雪」(大分県)
実は今回、決勝大会の会場で最も評価が高かったのは、大分駅弁・寿し由の「なごり雪」でした。
そこで、急きょ「会場審査員特別賞」が設けられたというワケです。
この「なごり雪」、駅弁膝栗毛では、既に去年(2016年)の7月に「紹介」しています。
二宮代表取締役曰く、「大分は九州で唯一、瀬戸内海に面した県」とのこと。
だから、その特性を活かした駅弁で勝負したかったそう。
春が来て、その思いが特別賞という形で、報われる格好になりました。
元々、市場の寿司屋さんから始まった店だけに、二宮代表取締役の寿司屋の大将キャラもイイ!
そのアツい思いをいつまでも、大分駅弁に注ぎ込んでいただけることを切に願いたいものです。
さァ、お待たせしました!第12回「九州駅弁グランプリ」に輝いたのは?
第1位:日豊本線西都城駅「幸せ上々、みやこのじょう弁当」(宮崎県)
牛・豚・鶏と“日本一の肉の町”を標榜する、宮崎県都城市。
南国焼と角煮揚げの牛肉、塩麹焼の豚肉、豆腐ハンバーグと合わせた鶏肉を、地元名産の焼酎で炊いた発芽十八穀米ともち米を混ぜたご飯と一緒にいただきます。
特に豚と鶏は都城産で賄えるのが強みで、焼酎のご飯は、炊いた段階でアルコール分は飛んでしまい、雑穀米なのに、とてもまろやかな食感だけが残ります。
「肉の町」ならではの肉駅弁でありながら、ヘルシー感も兼ね備え、価格帯も1,000円+消費税に抑えた工夫と努力が詰まった駅弁です。
西都城という駅は、今でこそ、日豊本線の列車しか停まらない駅ですが、昭和の終わり頃までは、志布志線が発着しており、大隅半島への玄関口となっていた駅。
鉄道のターミナル機能は失われましたが、市街地への近さとバスターミナルに隣接した立地、さらに「せとやま弁当」の地域に密着した“不断の努力”が、「駅弁」を成り立たせてきました。
私自身、何度か西都城駅前にある「せとやま弁当」のお店を訪問したことがあるのですが、お昼時になると、地元の方が“普段づかい”感覚で、駅弁屋さんにやってくる様子が見られます。
これまでも「せとやま弁当」は、「九州駅弁グランプリ」に毎年、新作を引っ提げてエントリーしていたのですが、なかなか報われませんでした。
瀬戸山専務によると、今回は「駅弁で都城を盛り上げたい!」という思いから、都城市長に市のキャッチフレーズ「幸せ上々、みやこのじょう」を使わせてほしいと直談判したといいます。
ある意味、“勝負駅弁”で見事1位を勝ち取ったあたり、昭和23(1948)年創業、来年で創業70年を迎える、昔からの駅弁屋さんの意地といったところ。
JR九州が株式“上場”した年に、幸せ“上々”と銘打った駅弁を出したのも素晴らしい勝負勘です。
今のところ、西都城駅前の本店限定販売で、1日10個ほどの調製のみ。
ただ、グランプリに輝いてから、さっそく予約の入り方も“上々”の様子。
春休みなどの繁忙期には手に入りにくいこともありそうですが、ぜひ一度、美味しい駅弁を食べに、宮崎・都城という町へ、足を運んでみてほしいものです。
3月4日のダイヤ改正から、九州新幹線も熊本地震による徐行が終わり、平常運行に戻ります。
見どころは勿論、魅力的な駅弁がいっぱいの九州。
今月前半は、九州の駅弁を重点的にピックアップしていきますよ!
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/