さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、5月19日から公開の『あの日、兄貴が灯した光』を掘り起こします。
兄弟のアツく強い絆を描く、韓国発のブロマンス・コメディ
国家代表の柔道選手としてオリンピックを目指していたコ・ドゥヨン。
しかし試合中の不慮の事故で、視力を失ってしまう。
元コーチのスヒョンがパラリンピックの柔道選手として復帰させようと尽力するも、まるで引きこもりのような生活を送るドゥヨン。そんなドゥヨンの兄コ・ドゥシクは、詐欺罪が前科10犯で服役中。
塀の中で弟の事故のことを知らされた彼は、なんと、弟をダシにして刑務官の前で涙ながらの名演技を披露。
期限付きで仮釈放されることになった。こうして15年ぶりの再会を果たした兄弟だったが、2人は積年の憎しみをぶつけ合うばかり。
しかしドゥヨンの口にしたある言葉をきっかけに、2人の葛藤が解けていくように見えたが…。
他人よりも遠い存在で、お互いに再会を望んでいなかった兄弟が、憎しみ合いながらも徐々に心を通わせていく。
どこか不器用で微笑ましい兄弟の絆を描いた感動作『あの日、兄貴が灯した光』は、韓国ではブロマンス・コメディとしてスマッシュヒットを記録しました。
ブロマンスとは、男同士の厚い友情や信頼関係のことを「ブラザー・ロマンス」と呼ぶことから派生した造語。
アメリカでは海外ドラマなどの影響で、ここ数年で辞書に載るほど一般に定着している言葉なんだとか。
韓国発のブロマンス・コメディ、柔道一筋で真面目な弟ドゥヨンを演じるのは、D.O.。
アジアを中心に活動する次世代グループEXOのメインボーカルで俳優としても活躍中。
本作では夢を失い挫折する少年という難しい役どころにチャレンジし、繊細な感情を見事に表現しています。
一方、詐欺師として生きてきたチンピラの兄貴ドゥシク役は、日本でも根強い人気を誇るチョ・ジョンソク。
さらに失明したドゥヨンを支える柔道コーチ役で美貌のパク・シネが物語に華を添えるなど、魅力的なキャスティングが実現しました。
監督は『裸足のギボン』でも家族の物語を描いたクォン・スギョン。
コミカルな中にも涙を誘う演出力がキラリと光ります。
ヤクザな兄貴と、全盲の真面目な弟…という、ベタな設定に、いかにも韓国映画らしいベタな展開。
この“ベタ”という言葉は、普通はあまり良い意味ではないかもしれませんが、この作品についてはこのベタさ加減に快感を覚える人も多いのでは。
あぁ、こんな“泣かせますよ〜”ってストーリー展開、アリなの???
…と、思いながらも、兄弟がお互いを思い合う心は清々しく、いちばん身近な存在の大切さに改めて気付かされます。
いつの時代も変わらない、人の優しさや温かさに包まれた一作です。
あの日、兄貴が灯した光
2017年5月19日からTOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
監督:クォン・スギョン
出演:チョ・ジョンソク、D.O.(EXO)、パク・シネ ほか
©2016 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.
公式サイト http://aniki-themovie.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/