試合は既に北朝鮮の勝利で決着がついている!佐藤優
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9/7(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③
既に局面は戦後処理へ?
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター佐藤優(作家・元外務省主任分析官)
安倍総理大臣がウラジオストクでプーチン大統領と会談~新たな制裁決議採択への協力を要請
安倍総理大臣は今日午後、訪問先のロシア極東ウラジオストクでプーチン大統領と会談します。会談で安倍総理は核実験などを強行した北朝鮮に最大限の圧力を加える措置を盛り込んだ国連安全保障理事会の新たな制裁決議採択への協力をプーチン大統領に要請します。
安倍総理はプーチン大統領に対しては国連安全保障理事会による最大限の圧力を盛り込んだ新たな制裁決議の採択に協力するよう要請します。その制裁決議の原案をアメリカが全ての理事国に配布しました。北朝鮮への石油の禁輸の他、北朝鮮政府と朝鮮労働党、さらに金正恩朝鮮労働党委員長の資産凍結などの措置が盛り込まれました。また外貨獲得の為海外に派遣された北朝鮮の労働者を国連加盟国が北朝鮮本国に送還することも規定されています。北朝鮮の出稼ぎ労働者は中国やロシアを中心に最大10万人とされています。
ロシアのプーチン大統領は昨日の韓国の文在寅大統領との会談で、その石油の輸出禁止について「病院など民間部門に被害を及ぼすことが懸念される」と消極的な考えを示しまして「政策や圧力だけでは朝鮮半島の問題を解決できない。政治的・外交的手段でなければ状況を変えるのは困難だ」としまして、対話による解決を訴えております。
一方アメリカは11日にこの制裁決議の採決をすると名言しており、トランプ大統領は6日、中国の習近平国家主席とおよそ40分間電話会談をしたのですが、習近平国家主席は「中国も北朝鮮問題については対話と平和的手段で解決する方針を堅持する」とこのように強調しています。
トランプ大統領は記者団に「軍事力行使を検討しているか」問われまして「その内に分かる。第1の選択肢ではない」と答えております。日本国内では自民党の石破元幹事長が昨日のテレビ番組で「非核三原則を念頭にアメリカの核で守ってもらうと言いながら、日本国内に置かないというのは議論として本当に正しいのか」と述べて、今後の議論になりそうな発言をしています。
石油禁輸しても政権に影響は無い?高嶋)まず国連の安全保障理事会ですが、安倍さんとプーチンさんがどんなにファーストネームで呼び合っても、プーチンさんの考えを変えることは難しいですよね。
佐藤)変わらないです。プーチンの考えはどういうことかと言うと理詰めなのです。
北朝鮮は軍用と北朝鮮の指導部、金正恩の一介の分の石油は既に十分に備蓄されていると。だからもし石油を禁輸するということになった場合には、それは病院や民生用の工場にしわ寄せがいくと。だから北朝鮮の中の飢餓、死者を増やす。人道的にこれをやっても良いのかと。この政権には影響は無いぞというのは1点。
2点目は制裁が長くなるということであれば、このままジリ貧に陥るよりも勝負を掛けるという、丁度山本五十六聯合艦隊司令長官のような感じですよね。アメリカが石油の全面禁輸を行った為に聯合艦隊はこのままだと石油が無くなったら動けない、その為には南方資源の石油を獲らなければいけない、アメリカとの戦争に構えなければいけないという形で行った。あれは暴発ではなくて論理的なのですよ。同じようなことが起きかねないのがプーチンの懸念なのです。
北朝鮮との試合は既に終わっている高嶋)国連の安全保障理事会の採決というのも結局ロシアと中国は反対で「何だったんだろう」みたいになってしまうのですかね?
佐藤)ロシアと中国が反対に留まれば良いですが、拒否権を行使して完全に潰すという可能性すらありますね。
高嶋)そうすると佐藤さんが先程もおっしゃったのですが、良く言えば話し合いで、悪く言えば北朝鮮の言い分がかなり通り、そしてアメリカのわがままとのセットで事は解決していくというような。
佐藤)そういうことです。率直に言うと、私自身もあまり言いたくないのですがリスナーの皆様に現実を伝えたいので言いますが、この局面で試合は終わりました。北朝鮮が勝ちました。今はもう戦後処理です。つまり色んな圧力だとか軍艦を動かす等していますが、そのいずれも効果が無いという形で潰していって最終的に平和解決になる、その手続きが始まっているということです。
高嶋)佐藤さん、一応トランプ大統領だって「軍事作戦があり得る」というような、気を持たせるようなことも言っているわけですよ。
佐藤)気を持たせるようなことを言っていますが、それはもうできないから口にしているわけです。
ただ唯一危険なのは、例えばグアム周辺にミサイルを撃ったら、いい加減なミサイルの精度でそれがグアムに命中して人が死ぬようなことになるとこれは別です。
だからそこを見越しているのが石破さんの先の発言なのですね。要するに日本は核武装できない、中距離弾道ミサイル(IRBM)が日本全域を射程に収めるとなると、アメリカの核を持ち込ませなければいけないではないかと、非核三原則を二原則にしろと言うのですが、僕はこれでは無理だと思う。高嶋)アメリカの「核の傘」で守ってもらうと言いながら日本国内には置かないというのは議論として本当に正しいのかと。「持たず・作らず・持ち込ませず」を議論もせずに良いのかという。
佐藤)議論をして持ち込ませると決めても、アメリカはどこに核兵器を配置しているのかを明らかにしないというのが方針なのです。だから日本に持ち込まれているというのを確証できないのです。つまり抑止力としてあまり強まらない。
だからもっと“踏み込む”ということがあると私は思いますよ。要するにアメリカの核兵器を自衛隊と共同運用すると。つまり「持つ」を少し緩めると、すなわち“非核一・五原則”です。作らないけれどアメリカが持ち込んだ核兵器については一緒に使うと。高嶋)共同運用というのはどういう意味ですか?
佐藤)今は「アメリカにお任せします。我々は核兵器に触りません。どういう風にすればミサイルが飛ぶのかも知りません」ということですよね。それを「そこについては一緒にやります。一緒にボタンを押します」ということです。そうなると日本の自衛隊の技術を以ってということならば、日本に持ち込まれているということが前提になりますから。こうしなければ結局は「持ち込ませる」は担保できないわけですよ。
これは国内では大変な議論になりますよ、しかし論理を詰めていくと政府はそちらの方向に動いていくと思う。
日本が不利な状況に陥らない為には北朝鮮との国交正常化も視野に入れる必要がある高嶋)今日の産経新聞の一面に中国の高官の発言で「次はミサイルの東京上空通過もあり得る」というようなことを言っていて、今の話などを伺っていると、結局アメリカもあれだけのことをいろいろと言いながらも文字通り“アメリカファースト”で、日本を見切るような政策をやりそうだし、ロシアはロシアで安倍さんがどれだけ熱っぽく説得しようと北朝鮮に対しての制裁は元より頭に無いと。結局割を食うのは日本だけのような感じになってしまう。
佐藤)今のところはそうですね。だから割を食わないような仕組みを作るというので考えているのが一歩先を行く石破さんで、あるいは北朝鮮との関係を正常化してどんどん企業が進出していくのです。あそこは賃金が1日2$ですから、そうすると皆物を外国から買うようになるでしょう、そうすると北朝鮮の国民は配給制に感謝をしなくなるのですよ。国民が面従腹背になってきて自分たちの生活を優先するようになって国策に本気にならなくなると結局は核兵器を使えなくなる。最終的には民意にそっぽを向くことは独裁者にもできないのですよ。だからこういう構造転換を考えていく時期に至っていますね。だからこの「核ゲーム」の局面は北朝鮮に軍配があがって今は戦後処理に入っていると思います。
高嶋)すごく重大な発言で、要するに“レッドライン”はとっくに超えていると。
佐藤)レッドラインなんて無かったのです。要するに弾道ミサイルを作り始める段階がレッドラインであればもう空爆をしていなければいけないのです。核開発がレッドラインであればもう空爆をしなければいけないのです。つまりレッドラインは無かったのです。もう土俵も無かったのです。
高嶋)でも今の将軍様のお慈悲で食べているのではなくて、豊かになっていくと国の内部から考えが変わっていくと。
佐藤)それも2年くらいで変わってきます。
高嶋ひでたけのあさラジ!
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