フツーのクルマ、でも最先端のクルマ…「技術の日産」鼻息荒く
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【報道部畑中デスクの独り言】
「世界が本格的にEV=電気自動車の時代に動き出したところ、このタイミングで技術の日産の粋を詰め込んだ新型リーフをお届けできること、素晴らしいチャンスをいただいたと思っている。新型リーフは今後の日産のコアとなる実力を持った商品だ」…日産自動車・西川広人社長からは鼻息の荒さが伝わってきました。
9月6日午前9時半、千葉市・幕張メッセのホールで開催された電気自動車「新型リーフ」の発表会。「ワールドプレミアイベント」と銘打っただけに、海外の報道陣も詰め掛け、外国人案内用のプラカードも持つスタッフもいました。オープニングは迫力の重低音とともに、ライブコンサートさながらの雰囲気。ステージでは白を基調に屋根の部分が黒のツートーンカラーに彩られた3台のリーフが自在に動き、冒頭の西川社長の発言となりました。
二代目となった今回のリーフ、技術的なハイライトは航続距離が旧型の280キロから400キロに伸びたこと(JC08モード)。開発スタッフによると、バッテリーを改良し、エネルギー密度が向上したことで実現できたといいます。バッテリーの大きさはほぼ旧型並み。重量増加も10キロ未満に抑制。車両ほぼ中央の床に搭載され、旧型の美点であった低重心のどっしりした安定感はそのままということです。航続距離400キロはいろいろな例えがありますが、東京から名古屋まで余裕で行けそうな距離です。
そして、もう1つは「プロパイロット・パーキング」と呼ばれる自動運転技術を使った駐車システム。4つのカメラと12個のセンサーを組み合わせることで、アクセル、ブレーキ、ハンドル、シフトチェンジ、パーキングブレーキも自動で制御。人間はスイッチボタンを押すことで、切り返しなどもクルマ任せという仕掛けです。会場では体験スペースも設けられていましたが、体験できるかは報道陣を含めて抽選。私はあえなく「はずれ」でした。またの機会に挑戦してみようと思います。
こうした最新技術のみならず、“見た目”も新型は大きな変貌を遂げました。チョイ乗り程度ではありますが、室内は最近のトレンドに沿って艶やかなデザイン。質感も高く、アームレストなど手に触れる所に柔らかな素材がふんだんに使われていました。一方、旧型のシンプルさが醸し出す清潔感、未来感は影を潜めた印象です。
外観も大きく変わり、これまでの小動物のようなファニーフェイスから、シャープなラインを多用。旧型は、これはこれで個性的でしたが、私は日本事業担当の星野朝子専務に思わず「デザインがようやく…」と申し上げてしまい、星野専務は苦笑い。意識したかはわかりませんが、「フツーのクルマになった。でも最先端のクルマだ」と語りました。そして、星野専務は「きょうは日産にとって、世界の電気自動車のリーダーとして、日本のDNAを持つ会社として誇れる日となった」と力を込め、国内の販売目標を今までの2~3倍とぶち上げました。具体的な台数は明らかにしていませんが、旧型は年間12,000台=月間平均1,000台程度でしたから、ざっと月販2,000~3,000台を目標としているようです。
自動車業界のトレンドは言うまでもなく電動化技術と自動運転技術、特に電気自動車の国際的な開発競争は俄然激しくなってきました。ヨーロッパではディーゼル車の排出ガス規制逃れの問題をきっかけに電気自動車への転換が進められ、フランスやイギリスでは2040年にはガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を明らかにしています。ただ、これまでは航続距離や充電施設などインフラの整備に課題があり、伸び悩みにつながっていました。
この分野における日産の意欲は並々ならぬものがあり、世界的に普及が加速することで、先行する日産は「追い風になる」(星野専務)ことを期待しています。その一方で、家電の液晶テレビのごとく、コモディティ(汎用品)化するのも早いのではないかという指摘もあります。「未来の車を決してコモディティにしたくない」「EVは特徴を出しづらい。課題はクルマの『味づくり』」と話していたのはトヨタ自動車の豊田章男社長でした。
日産は初代リーフの発売以来、電気自動車の分野では7年の蓄積を持つ「先駆者」的存在ですが、競争激化の中でその優位性を保てるかどうか…加えて国内市場ではハイブリッド車、軽自動車で月販10,000台前後を記録する車種が目白押しの中、電気自動車が今度こそそれらと肩を並べるような勢力に成長するのか…大いに注目したいと思います。