マツダという会社 不器用だけど一途(2)

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【報道部畑中デスクの独り言】

97年にわたるマツダ「波乱万丈」の歴史…その中で名を残したものはロータリーエンジンだけではありません。量産車初となったミラーサイクルエンジン。いまや当たり前の装備となったGPSカーナビゲーションもその嚆矢はバブル期に発売された「ユーノス・コスモ」です。

また北米一辺倒だった国内メーカーの中で、欧州路線をいち早く確立、バブル期に失敗に終わった拡大路線も、その時培われたデザインは欧州を中心に高い評価を受けました。「日本では東京から一番遠いメーカーだが、ヨーロッパからは一番近いメーカー」、広島に本社を持つマツダの幹部から以前こんな言葉を聞いたことがありますが、ジョークでなく、むしろそれを誇りとしているように感じました。

マツダ・デミオ

2014年に発売された「マツダ・デミオ」 中央は小飼雅道社長

そして、現在は「世界一の内燃機関」を目指し、まい進しています。いまから7年前、「SKYACTIV(スカイアクティブ)」という技術が発表された当時、電気モーターの助けを借りずにリッター30キロ(10・15モード燃費)の低燃費を実現したとして注目されました。内燃機関、特にガソリンエンジンの燃焼効率(燃料を燃やして発生したエネルギーが車輪を回すエネルギーに使われる比率)は当時25~30%と言われていました。

つまり7割以上のエネルギーは捨てられている計算です。内燃機関にはまだまだ「伸びしろ」がある…そんな考え方もあるのです。「内燃機関の自動車メーカーが世界で1つだけになってもつくり続ける。それがロードスターやロータリーエンジンを作ってきたメーカーの使命だ。内燃機関でぶち抜く」…かつてマツダの幹部はこう語っていました。そこには内燃機関への果てしなきこだわりと、まぎれもない熱いエンジニア魂がありました。

スカイアクティブ

「SKYACTIV D(スカイアクティブ ディー)」と呼ばれるディーゼルエンジンを搭載、リッター30キロ(JC08モード)の低燃費で話題になった

そして今月8日、トヨタとの資本提携が発表された翌週、マツダは次世代エンジン「SKYACTIV X(スカイアクティブ エックス)」の技術発表会を行いました。詳しいメカニズムは省きますが、ポイントだけご紹介します。

ガソリンエンジンはガソリンと空気を混ぜたもの(混合気といいます)を圧縮し、プラグの火花を飛ばして爆発させ、出力を得ています(火花着火)。一方、ディーゼルエンジンは空気を大きく圧縮して温度を上げたところに(気体は圧力を上げると温度が上がります)軽油を噴くことで爆発させ出力を得ます(圧縮着火)。一般に圧縮着火の方が燃焼効率は良く、ディーゼルの燃費がいいと言われるのはこのためです。

マツダはこの圧縮着火をガソリンエンジンで極低温時を除く広い領域で実現したというのです。これによってこれまでのエンジンよりも薄い濃度の燃料で爆発・燃焼させることが可能になり、新エンジンの燃費は現在の「SKYACTIV」に比べても最大で20~30%改善されるといいます。(なお、ガソリンエンジンの場合は圧縮着火の前にあらかじめ混合気をつくる「予混合」という過程を踏みます)

ガソリンエンジンによる圧縮着火という発想自体は各社にもありましたが、燃焼制御の技術的ハードルが高くてどこも実現に至っておらず、「夢のエンジン」と言われていました。こうしてみると、一度目を付けた技術に関してはモノになるまで決してあきらめない。思えばロータリーエンジンの時もそうでした。マツダにはそんなモノづくりのDNAが宿っており、そうした姿勢にトヨタが惚れたのかもしれません。

東京モーターショー

2015年東京モーターショーのマツダブース 今年は「SKYACTIV X」も出展される予定だ

次世代自動車のトレンドは自動運転、電動化技術で、この流れに抗っていては生き残れません。今回のトヨタ・マツダの資本提携はそれに対応した動きであるのは疑いないところです。マツダのような会社が単独で生き残るのは厳しい…昨今の自動車ビジネスの難しさでもありますが、内燃機関にこだわり「不器用だけど一途」…こんなメーカーも「あり」だと思うのです。

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