気象庁の気象観測船「啓風丸」の乗船取材、最後は「船の食事」です。船には調理師の免許を持つ「まかない」担当が4~5名乗り、朝食・昼食・夕食・そして夜食の"4食"を振る舞います。
船内では「ゼロヨン(午前0時~4時と正午~午後4時)」「ヨンパー(午前4時~8時と午後4時~8時)」「パーゼロ(午前8時~正午、午後8時~午前0時)」という用語があります。当直者はこの3班に分かれ、1日に4時間勤務を2回行うローテーションが組まれています。カッコ内の時間はそれぞれの勤務時間。つまりこのローテーションに対応するため、4回の食事の機会が設けられているのです。食事の時間は勤務の都合で若干前後しますが、概ね、朝食午前7時20分~8時20分、昼食午前11時15分~午後0時30分、夕食午後4時~5時、夜食午後7時~7時30分。船員によっては3食しかとらない人もいます。
今回は体験取材ということもあり、私は4食すべてを食しました。(食事代は実費として支払っています)
午前からの乗船でしたので、最初の食事は昼食、「親子丼」でした。普通においしいです。お吸い物付き。カウンターに並べられ、セルフサービスでとっていただきます。
私は、親子丼は「一人暮らしの男が友人に振る舞う手料理ナンバー1」だと勝手に思っています。今回も「男の料理」でした。
なお、各食事セルフサービスのため、食後の食器は食べた本人が洗います。
魚のホイル焼き、昆布のマヨネーズ和え、煮物、大根のスープにごはん。結構凝っています。昆布とマヨネーズ、意外に合います。
ピザ。まさか観測船の中でイタリアンが食べられるとは思いませんでした。夜食はかつてリンゴ1個だけという時もあったそうです。
メインはごはんと油揚げの味噌汁、これに納豆と卵が二者択一でつきます。典型的な「日本の朝飯」ですが、これに漬物や佃煮、ふりかけなどがあるため、飯は進みます。
私がどうでもいいところで感動したのが海苔の佃煮。何と「アラ!」がありました。海苔の佃煮と言えば「ごはんですよ」に代表される桃屋が定番ですが、関西ではブンセン(本社は兵庫県)の「アラ!」が有名です。首都圏ではあまりなじみがなく、故郷で食して以来、久しぶりに甘めの味を楽しみました。
こうした食材は司厨長と呼ばれる「まかない担当」のリーダーが配慮するそうです。食事で近年変わったのは、冷蔵・保存技術の進歩で野菜室が充実し、生野菜が食べられる機会が増えたこと。塩分やコレステロールをひかえるよう健康管理に努める一方、食事は船員の楽しみ…変化をつけることを心がけているそうです。
ちなみに船長が話す一番うれしかったメニューは「ステーキ」!肉の量は約300gと、かなりの「ガッツリ系」ですが、海の上で食すステーキはさぞや格別でしょう。食事も研究の土台を支える要素の一つです。
気象庁の橋田俊彦長官が「地道だが大事な仕事」と話す海洋観測。今回はいわゆる報道向けの「体験乗船」でしたが、6月23日からは2隻ある観測船のうち「凌風丸」が東京・お台場を出発し、99日間の長い航海に旅立ちます。観測範囲は東経165度線に沿って、北緯50度から南緯8度。カムチャツカ沖からミクロネシアのポンペイまで南北のべ約6400キロの長旅です。途中給油で外国に立ち寄るため、乗組員はパスポートも携帯。給油滞在中の2日間は公休扱いで、街の散策のほか、ダイビングやシュノーケルなどで過ごすのがつかの間の楽しみだとか。ちなみにミクロネシアのポンペイはこしょうが高級品だそうです。