犬と猫のフェルトアートにほっこり
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【ペットと一緒に vol.47】
羊毛を特殊な針1本で刺しからめて作り上げる、フェルトアートをご存知ですか? 今回は、フェルトアート作家の中山みどりさんの「ほっころび時間」と題された展覧会の様子をレポートしながら、羊毛フェルトの魅力を探ってみたいと思います。
リアルを追い求めて誕生した作品
フェルトアート作家の中山みどりさんのギャラリートークもあるということで、ワクワクしながら展覧会場(小田急百貨店 新宿店/8月31日~9月5日)に足を踏み入れた瞬間、筆者の顔はすっかり「ほころんで」しまいました。まるで生きているかのような小さな犬と猫たちが、愛らしい笑顔で筆者を出迎えてくれたからです。
美術大学で日本画を志し、美術教室で講師をしていた中山さんが最初に作ったリアルなフェルトアートの作品は、実家のビーグルのリキ。今回の展示会場にも、大小2サイズのリキの愛らしい姿がありました。
リキの姿を見た友人に頼まれて「うちのコ」をフェルトで作るようになり、さらにはペットに旅立たれた人たちからの依頼も増えるようになったそうです。
ギャラリートークで中山さんは、「オーダー作品のむずかしいところは、手元にあるペットの写真は平面でも、作品は立体的に仕上げなければならないところ。以前、『正面はそっくりだけれど、側面から見ると形が違う』というご指摘をいただいたりして苦心した経験もあります」と語っていました。
ペットを失ってしまった方の多くは、写真よりももっと身近に感じられる姿の「うちのコ」にそばにいてもらいたいとの思いがあり、フェルト作品をオーダーされます。中山さんは、その方々の思いに応えるべく、リアルを求めて、最大限そのコに近づけられるように工夫を重ねるのだそうです。
写真で鑑賞するフェルトアート作品
オーダー作品は当然のことながら、依頼者のもとへと納品しなければなりません。そこで、心を込めて仕上げた作品を、せめて写真という形で手元に残しておこうと、中山さんは作品とカメラを抱えて外へ出るようになったとか。
ギャラリートークで披露された数々の撮影秘話の中から、ひとつご紹介しましょう。
壁に展示されているのが、中山さんが撮影した写真。牧羊犬であるボーダーコリーらしい動きが見事に表現されています。実は、てぐすでフェルトアート作品を吊って、中山さんは芝生の上に腹這いになって撮影されたとのこと!
中山さんが撮影された写真は、「ほころび時間 フェルトアートの小犬たち」、「ほころび時間2 フェルトアートの小猫たち」(幻冬舎)の著書で見ることができます。
中山さんが写真撮影時に利用したセットを再現した展示もあり、筆者も「うわ~、これはベストマッチ! かわいい!!」と、心の中で絶叫していました。
キャンバスに絵を描くように
フェルトアートは、一般的なぬいぐるみと違って、柴犬などの切れ長の目や、犬や猫が目をつぶっている様子もリアルに表現できるのがおもしろいと、中山さんは語ります。
「目をつぶっている様子を形作っていく作業は、キャンバスに絵を描くのに似ています」と、中山さん。
フェルトアートならではの魅力は、色のグラデーションがつけやすい点とも。
もともと美大時代から日本画を描いていた中山さんにとって、フェルトアート制作は、「水彩画の感覚で、色を薄く乗せたところに濃く重ねていく」ものだそうです。
ギャラリートークでは、フェルトアートの手法も実演しながら解説してくださいました。
今回の展示会場で出会った約200点の作品と触れ合いながら、そのあたたかさとやさしさに心なごみ、筆者もすっかりフェルトアートに魅了されました。
さっそく中山さんに「うちのコ」をオーダーしたいと思ったのですが、現在、中山さんによるオーダー制作は募集ストップとのこと。ですが、中山さんのもとで学んだ「認定マイスター」によるオーダーは依頼できる可能性があるそうです。
詳しくは、フェルトアート協会までお問い合わせを。
フェルトアートを体験してみたい方は、「認定マイスター」が全国の教室で講師として活躍しているそうなので、飼い主さんの手による「うちのコ」を制作してみるのもよいかもしれません。
<中山みどりフェルトアート展>
会期:8月31日(木)~9月5日(火)
会場:小田急百貨店新宿店本館11階=催物場
入場料:一般500円、中学生以下無料
住所:東京都新宿区西新宿1-1-3
電話:03-3342-1111
主催:中山みどりフェルトアート展 実行委員会
※展覧会はすでに終了しました。
連載情報
ペットと一緒に
ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。