【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第286回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、10月7日から前篇、10月21日から後篇が公開となる2部作『あゝ、荒野』を掘り起こします。
魂をゆさぶる、怒濤の305分!
1960年代後半、演劇、映画、文学と様々なジャンルにわたって、多くの作品を発表した寺山修司。時代の先駆者であり、いまなおカルチャーアイコンとして支持され続けている彼が遺した唯一の長編小説を大胆に再構築し、2部作として映画化しました。
生まれも育ちも違う2人の男がプロボクサーを目指す姿を追いながら、都会の片隅に生きる人々の“心の荒野”を鮮烈に描きます。
2021年、新宿。兄貴分の劉輝を半身不随にした元・仲間の裕二への復讐のチャンスを狙っている、少年院あがりの新次。
吃音と赤面対人恐怖症に悩む“バリカン”こと健二。2人はひょんなことから“固め”と呼ばれるホリグリからボクシングジムに誘われる。新次は復讐を果たすため、バリカンは内気な自分を変えるため、それぞれの思いを胸にトレーニングを開始する…。
主人公の新次には、今年だけですでに4本の出演映画が劇場公開されている菅田将暉。もうひとりの主人公・バリカンには、『息もできない』で映画賞を総なめにしたヤン・イクチュン。日韓実力派俳優による魂と魂がぶつかり合う芝居は、さながらボクシングの試合のような熱量。
さらにユースケ・サンタマリア、木村多江、木下あかり、高橋和哉、モロ諸岡、今野杏南、山田裕貴、でんでんと魅力的な顔ぶれが揃いました。
長編デビュー作『二重生活』で第14回ウラジオストク国際映画祭最優秀監督賞に輝いた岸善幸が監督を務め、寺山修司の聖地である新宿を舞台に、闘うことでしかつながることの出来ない苛烈な青春を鋭く映し出しています。
原作小説の舞台となっている1966年と、映画で描かれている2021年。どちらも“東京オリンピック後”という共通点があり、そこに東日本大震災といった現代日本を彷彿させるキーワードや寺山修司の世界観をリンクさせることによって、新たな物語として生まれ変わった本作。
ひとが生きることの難しさや哀しさ、そして喜びは半世紀以上の時を経ても変わらない。だからこそ、懸命に生きる主人公たちの生き様にヒリヒリとした痛みと愛おしさを覚えます。
本作は劇場公開に先駆けて、動画配信サービスU-NEXTで独占配信中。映画館で、ネット配信で、お好きなスタイルで堪能して下さい。
あゝ、荒野
10月7日(土)前篇、10月21日(土)後篇
2017年10月7日から前篇、10月21日から後篇、新宿ピカデリーほか2部作連続公開
監督:岸善幸
原作:「あゝ、荒野」寺山修司(角川文庫)
出演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、木下あかり、モロ師岡、高橋和也、今野杏南、山田裕貴、でんでん、木村多江、ユースケ・サンタマリア ほか
©2017『あゝ、荒野』フィルムパートーナーズ
公式サイト kouya-film.jp
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/