【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第290回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、現在公開中の『エルネスト』を掘り起こします。
革命家チェ・ゲバラとともに闘った日系人の知られざる実話
弱者のために立ち上がったキューバ革命の歴史的英雄で、理想を追い求め、世界各国を駆け巡ったチェ・ゲバラ。比類なきカリスマ性の持ち主で、いまなお世界中の人々を魅了してやまない彼が、ボリビア戦線にて39歳の若さで命を落としてから、今年で50年になります。
本作は、チェ・ゲバラとともに“見果てぬ夢”を追いかけ、ゲバラのファーストネームである“エルネスト”を戦士名として授けられた日系人の物語。フレディ前村ウルタードの知られざる生涯を、日本とキューバの合作で、阪本順治監督が映画化しました。
日系二世として生まれたフレディ前村は医者を志し、国立ハバナ大学に留学。キューバ危機の最中に、チェ・ゲバラと出会う。彼の深い魅力に心酔したフレディは、ゲバラの部隊に参加。やがてボリビア軍事政権へと立ち向かっていくが…。
主人公のフレディ前村を演じるのは、日本のトップアクター、オダギリジョー。これまでにも『マイウェイ12,000キロの真実』『FOUJITA』などに出演し、国際派俳優としても評価が高い彼が、本作では全編スペイン語の芝居に挑戦。
キューバ人キャストの中にひとり身を置き、闘志を内在させた寡黙な姿は、さながら“革命のサムライ”。圧倒的な存在感を見せつけています。
また広島来訪時のゲバラに唯一取材した日本人、森記者を永山絢斗が演じています。
当時のフレディやゲバラを知る関係者に取材を重ねるなど約3年半にわたるリサーチの末、阪本監督自ら脚本を執筆。没後50年となる今年、ついに二人のエルネストが現代に甦りました。
チェ・ゲバラの命日である10月9日、有楽町スバル座では献花台が設けられ、多くのゲバラファンが花を手向けました。また同日開催された広島国際映画祭で、本作がヒロシマ平和映画賞を受賞しました。
映画の題名である『エルネスト』とは、“真剣”という意味。誰かに与えられるのではなく自らで目的を決め、その目的に向かって真剣に生きていく。
世界中が厳しい局面に立たされている現代、私たちが生き抜くヒントがこの映画には隠されています。
エルネスト
2017年10月6日から全国ロードショー
監督 阪本順治
出演 オダギリジョー、永山絢斗、ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ、アレクシス・ディアス・デ・ビジェガス ほか
©2017 "ERNESTO" FILM PARTNERS.
公式サイト http://www.ernesto.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/