渋滞にも科学!人間の心理を巧みに利用した渋滞対策の数々!
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今週末は3連休があったり、紅葉シーズンだったりと、どこかに出かけようと考えている方も多いかと思います。そんな時気になるのが“渋滞しているかどうか”ではないでしょうか。
以前から、高速道路では様々な渋滞対策を講じています。一体、どんな対策で、どんな効果があるのか?中には“人間の心理学”を巧みに利用した科学的な対策もたくさんあります。今回は、そんな渋滞対策を紐解いて行こうと思います。
まずは首都高。首都高が開通したのは昭和37年、1962年。50年以上経過して、以前は「渋滞でちっとも動かない」印象だったのが、最近は「あれ?混んでない」「流れている」と実感できることが多くなりました。ひとえに、渋滞緩和のための様々な対策が功を奏していると言えます。
首都高の渋滞対策で大きな効果を挙げているのが、「ネットワーク整備」と呼ばれる、新たな道路の開通です。
具体的に挙げますと、平成27年、ちょうど2年前に開通した、「大井ジャンクション」から「大橋ジャンクション」の中央環状品川線。山手通りの下のトンネルといえば、覚えている方も多いことでしょう。これで、大井から葛西まで、円を描くようにぐるりと環状線が全線開通、と相成ったわけです。年数はおよそ30年とだいぶかかりましたが、これによって内側の渋滞が、開通当初、なんとおよそ5割も減少!という結果になりました。
さらに、ドライバーさんなら実感していると思いますが、品川線の開通で交通が分散されて、渋滞の名所だった浜崎橋ジャンクションの渋滞もほぼ解消しています。トラックなどの物流だけでなく・・・他にも、リムジンバスで新宿方向から羽田に行く場合も大幅に所要時間が減少。以前は1時間程度かかっていましたが、今はその半分で着くというメリットも生まれています。
さらに注目される、新たな開通場所としては、ネクスコ東日本が手掛ける、東京外環自動車道の千葉県部分、『三郷南から高谷ジャンクション』。今年度中の開通を目指しています。
特に、南の終点・高谷ジャンクションでは、首都高湾岸線と東関東自動車道に接続することになるのが大きい。ネクスコ東日本によりますと、「開通によって、ディズニーランドへの渋滞がだいぶ緩和されるのでは?」ということでした。
“新しい道路を開通させたら、そりゃあ渋滞は減るでしょうよ”と減らず口を叩いている方!首都高で、人間の心理を利用した、ユニークな渋滞対策があるのをご存知でしょうか?
まず・・・渋滞が起こるメカニズムを抑えておきますと、「上り勾配で、クルマが速度を落とすことから、渋滞が起こる」。よくテレビで、1台の車が速度を落とし、続いて後ろの車がブレーキを踏み、それが連なって渋滞が発生、というリポートをしていますから、あなたも映像を見たことがあるでしょう。
だったら、なんとかして速度を落とさないような工夫が出来ないか?そう考えて取り付けられたライトがあるのです。「速度回復誘導灯」とか「エスコートライト」などと、呼ばれています。
首都高を走っていると、ある上り勾配の場所に来ると、壁に、縦型の棒状のライトが3メートル間隔で、備え付けられています。そのライトが時間差で点滅していて、車から見ると、先へ先へどんどん流れていくように見える。すると、人間の心理としては、“おいて行かれないようにしなきゃ”と思う。よって、上り坂でも減速せず、むしろ適度にアクセルを踏んで通過することが出来る、と言うものなのです。
こちらの動画を見てみてください。自分もドライバーだと思ってこのライトを見てみると、なるほど、スピードを上げたくなる気になるから不思議です。
エスコートライトは、『首都高3号渋谷線下りの池尻』と、『中央環状線内回り・中野長者橋』などに設置。その結果、池尻では渋滞損失時間が13%、時間にして3分、渋滞が減るという良い結果が得られています。
首都高では「エスコートライト」ですが、全く同じ仕組みで、ネクスコ東日本では別の名前「ペースメーカーライト」と呼ばれています。
4年前にペースメーカーライトが設置されたのは、東京湾の下を走る、渋滞の名所・アクアラインの上り線。川崎浮島ジャンクションに向かって、やはりここも上り坂になっている。
そこで、このライトが流れるように点滅。すると、千葉で遊んで帰ってくる車は、ライトに促されて速度を上げる、という仕組みで、“渋滞損失時間”という渋滞の度合いを示す目安が、8割も減少した、という非常に良い結果を生んでいます。
こうした人間の心理を利用した渋滞対策をもう一つ。
トンネル内で起こりやすい渋滞のメカニズムに、「明るいところから暗いところに入ったとき、反対に暗いところから明るいところに出たとき、視覚の差が大きくて、速度が落ちやすい」というものがあります。
そこでネクスコ東日本のトンネルでは、昔は“オレンジ色のライト”だったところを、今は、トンネルの内側と外側の明るさが近いLEDに変えた、ということです。こうすることで、目が慣れやすく、速度が落ちずに通過できる、という人間の心理を突いています。
こうしたライトを設置せずとも、「文字」で促すという方法もあります。首都高で、こんな大きな電光掲示板をみたことがないでしょうか?「まもなく渋滞終了」「速度回復お願いします」。現代らしく、“終了”、“回復”のところと“願い”のフォントをめちゃくちゃ大きく強調して表示。これなら、バッチリ目につきます。
また、渋滞を生むのは合流地点も多い。本線2車線・合流する側1車線、というのはよくあるケースですが、この合流する側を2車線に増やす、という対策も効果を生んでいます。中央環状線が5号池袋線に交わる板橋ジャンクションで、1車線だったのを2車線に増やしたところ、中央環状線の渋滞がほぼ解消した、ということです。こうした取り組みは、3車線を4車線にするなど、随時行っていくとのことでした。
さて、今まで話してきたのは、ハード面での渋滞対策。ソフト面で意外に効果を生んでいるのは「渋滞予想カレンダー」。ネットで公開されているのですが・・・
例えば、今週の首都高だったら、きょうあすの込み具合は「普通」。今週交通量が多いのは木曜日。金曜が休みですからね。反対に、翌日11月3日は交通量が少ない、という予想となっています。
ネクスコ東日本の予想ではさらに詳しく、東北自動車道や関越道など、どの自動車道の、どの区間で、何時ごろ、渋滞が発生しそうか載っているので、見ない手はありません。
首都高やネクスコで進む、人の心理を応用した科学的な渋滞対策。その一方、ドライバー側で準備できるのは「情報収集」。ネット上でかなり詳しく出ていますから、これを使わない手はないのではないでしょうか。
10月31日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より
高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00