プレゼンテーションを成功に導く方法とは?
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2025年の万国博覧会開催を目指して
今月16日(日本時間)、フランス・パリの博覧会国際事務局で4か国のプレゼンテーションが行われました。立候補しているのはフランス、ロシア、アゼルバイジャン、そして日本。プレゼンでは大阪市のイケメン市長、吉村洋文市長がPRに参加しました。50歳以上の方には大阪万博(1970年)をなつかしいと思う方も多いでしょう。日本は2005年の「愛・地球博」以来、20年ぶりに万博に手を挙げることになったのです。ところで、日本人は、奥ゆかしさを良しとすることや阿吽(あうん)の呼吸といった独自の文化もあり自己PRがおそろしく苦手です。また大勢の前で話をすることには緊張するという方がほとんどではないでしょうか。プレゼンテーションの成功で思い出すのは「お・も・て・な・し」が話題になった東京オリンピック・パラリンピック招致のためのIOC総会です。4年前のあの時は滝川クリステルさんが左手を使い、「おもてなし」を一語一語ゆっくりと発音した姿がメディアにも大きく取り上げられました。しかし、プレゼンならいつでも「おもてなし」方式が通用するわけではありません。では具体的に何に気をつけたらいいのでしょうか。
プレゼンテーションの演出を考える
プレゼンの場面では多くの人が「何を話すか、どんな内容を伝えるか」に注意を払います。それはもちろん大事です。しかし、アメリカ心理学者メラビアンも触れているように、言葉以外の情報が少なからず影響を与え、内容の良し悪し以上に人間の脳を支配すると考えられるのです。
例えば、服装です。公の会議の場に短パンやTシャツは不釣り合いです。また髪型も寝起きのボサボサ頭や、寝癖がついた状態ではやる気がないと思われます。さらに、装飾品の金ピカ高額時計やサングラスのような眼鏡はふさわしいとは言えないでしょう。スーツやネクタイ、ワイシャツの形など、その場に適したモノがあるのです。そして、盲点なのは「笑顔」です。大勢の中でスピーチをする際に緊張しない人はいないと思います。緊張がマックスになると人は顔が引きつり、眉間にしわが寄ってしまいます。それを防ぐには、常にニコニコ、前後左右に笑顔、話ながらも意識して笑うこと。話しながら笑う…結構難しいですよね。笑顔は口角を上げるだけではなく、頬の筋肉を使い、目そのものを笑わせないと素敵な笑顔を作れません。皆さんはどうでしょうか。「話す以前」の時点でプレゼンの演出は始まっているのです。
日本人は身振り手振りが苦手
さて、もうひとつ滝川クリステルさんに学ぶことがあります。それはジェスチャーです。プレゼンテーションの際には、手を使ったり、腕を広げたり、大きく体を使うことで、目を引き、印象に残すことができます。外国人は身振り手振りで表現するのがとても上手です。OKのサインでウィンクされたりするとドキッとすることさえありますね。「お・も・て・な・し」も同じことが言えます。また、ジェスチャーを上手に使うと、声のトーンもつられて変わります。例えば、大きな声を出すときに、両手のひらを口の周りに添えて声を出しますよね。人指し指1本を口の前に持ってきて、「シー」の形にすると、何となく声が小さくなっていたりしませんか。声と体は連動しているのです。いかがでしょうか。ビジュアルを最大限に活用すること。これがプレゼンテーション成功の第一歩と言えるでしょう。
コメントは短く
最後にメディアの特徴をお話しておこうと思います。
「サバの缶詰が売れている」と11/30の日本経済新聞電子版が報じました。日本水産をはじめ大手の売上高が前年を3割~5割上回り、10月のサバ缶の市場規模が前年に比べて6割増えたというのです。記事内で食品部長のコメントを一言載せています。「安く簡便、健康にもよいと引き合いが増えている。」様々な記事を読むとお分かりのようにメディアのインタビュー記事はとても短く、一言であることがほとんどです。それが見出しになるからです。であれば話す方も見出しになるような、しかも話の全体像を表す、印象に残る言葉を発しなければなりません。編集作業を通じて意図とは違うこと、あるいは別の意味で情報がひとり歩きしないためにも、短くシンプルに話そうと心がけることが大切です。
このショート&シンプルは、私たちの普段の会話でも十分に通じるテクニックです。話が長い、何を言っているのかわらない。全然違う方向に話が発展してしまうと感じている人にはお勧めです。そういえば、小泉進次郎さんのスピーチテクニックはよく話題になりますが、最もマネしやすいのは、一文が短い。これに尽きると思います。
冒頭の話に戻りましょう。2025年の万博の開催国が決定するのは来年の11月ということです。大阪万博では入場者を約3000万人と想定し、ITやVRを駆使した体験型の万博を目指しています。環境負荷が少なく自動運転の技術を取り入れた次世代の車やロボットなどが普通に登場するようです。私はこれを機に、そうしたテクノロジーに負けない「日本人の表現力」も磨いて行ければと思います。2020年オリンピック・パラリンピックもやってきます。まさに日本の発信力が問われる機会が立て続けに訪れるのです。
1970年の大阪万博では最先端テクノロジーとしてSFや漫画に描かれた未来の生活に人々は熱狂しました。ロボットとジャンケンをしたり、座っているだけで体を洗ってくれる「人間洗濯機」などは、現実にはあり得ない空想のものでした。2025年の日本と私たちはどのように変わっているのでしょうか。
連載情報
柿崎元子のメディアリテラシー
1万人にインタビューした話し方のプロがコミュニケーションのポイントを発信
著者:柿崎元子フリーアナウンサー
テレビ東京、NHKでキャスターを務めたあと、通信社ブルームバーグで企業経営者を中心にのべ1万人にインタビューした実績を持つ。また30年のアナウンサーの経験から、人によって話し方の苦手意識にはある種の法則があることを発見し、伝え方に悩む人向けにパーソナルレッスンやコンサルティングを行なっている。ニッポン放送では週1のニュースデスクを担当。明治学院大学社会学部講師、東京工芸大学芸術学部講師。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修士
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