八雲ふみねが選ぶ2017年ベストムービー<洋画編>

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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第334回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、八雲ふみねが選ぶ2017年ベストムービー<邦画編>を掘り起こします。

個人的には洋画の当たり年だった2017年。
それだけにベストを選ぶのは、迷って迷って…というよりも、ひとつひとつの作品を思い返しながら楽しかったひと時を改めて噛み締めるような作業でした。
そんな中から敢えて選んだベスト5とは…。


ベイビー・ドライバー:ミュージカル・音楽映画の決定版!

八雲ふみねが選ぶ2017年ベストムービー<洋画編>
『ラ・ラ・ランド』『SING/シング』『美女と野獣』など、今年はミュージカル映画や音楽映画のヒットが目立ちました。その中でも観る人が感嘆の声をあげたのが『ベイビー・ドライバー』。

映画公開時期には、私も周囲の人から「『ベイビー・ドライバー』面白いね!」と話しかけられることが多くあり、確実に観客のハートを掴んでいる映画なんだなぁ〜と、改めて感じたものでした。

本作の魅力は、やはり音楽の素晴らしさ。エドガー・ライト監督がこの映画を作るために事前に楽曲をセレクト、曲それぞれのイメージからストーリーを作り出していくという“逆転の発想”は、彼がいかに天才肌かということが窺えます。

現在、続編の企画が進行中というニュースも耳にしましたが、こだわりにこだわり抜いた世界観で我々を再び楽しませてほしいですね。


新感染 ファイナル・エクスプレス:ゾンビ映画の新たな潮流に驚愕

八雲ふみねが選ぶ2017年ベストムービー<洋画編>
まず、上手いタイトルを付けたな…という印象。韓国でも英語でもオリジナルタイトルは「釜山行き(の電車)」を意味するなか、邦題は日本の高速鉄道“新幹線”と“新たな感染物”とを掛け合わせたキャッチーさ。

本作はハリウッド・リメイクも決定しているとのことですが、ハリウッド版のタイトルはどうなるのでしょうか。オリジナルタイトルも邦題も興味深いトコロです。

公開当時は“泣けるゾンビ映画”として話題となった本作。「ゾンビ映画に家族愛なんて邪道だ!」なんて論争が何年か前に聞こえてきた記憶もありますが、この映画ではちゃっかり家族愛を盛り込みながらも、ジョージ・A・ロメロ監督の伝統を受け継ぐ正統派ゾンビ映画の香りが。

偉大なるゾンビ映画の創造者ロメロ監督が逝去した今年、ゾンビ映画というジャンルが確実に成長し、また新たな潮流を生み出しているということにも目を向けずにはいられません。


カフェ・ソサエティ:ウディ・アレン好きにとっては極上の映画

八雲ふみねが選ぶ2017年ベストムービー<洋画編>
男女の心の機微を繊細に描き、人生の酸いも甘いも噛み分けた風情さえ漂う本作。それはまさに“ウディ・アレン節”と呼べるものであり、ストーリーも演出も華やかな美術・衣裳もオシャレなジャズも、すべてが“ウディ・アレンらしい”という言葉で埋め尽くされてしまうのは、もはや“ウディ・アレン映画”がひとつのジャンルとして確立しているとしか言いようがありません。

さて御年81歳、毎年精力的に新作を発表し続けているウディ・アレン監督。その尽きぬアイデアは、一体どこからやって来るのでしょうか。

最新作はケイト・ウィンスレット主演の『ワンダー・ホイール/Wonder Wheel』で、11月から全米公開。日本にやって来るのが待ち遠しいですね。


ワンダーウーマン:女性ヒーローものとして大成功を収めた一作

八雲ふみねが選ぶ2017年ベストムービー<洋画編>
アメコミ・ムービーに限らず、シリーズものの続編に良作が多かったのも今年公開された洋画群の特徴でした。そんな中、この10数年間映画界を席巻してきたアメコミ・ヒーロー映画において久しぶりの女性ヒーロー作品となったのが『ワンダーウーマン』。

本作の世界的な大ヒットは今後のアメコミ・ヒーローものの製作にも変化が生まれ、女性ヒーロー主人公にした作品が増える予感大です。

さて先日、放送映画批評家協会から『ワンダーウーマン』主演のガル・ガドットに#SeeHer賞が授与されることが明らかになりました。これはステレオタイプに陥らない女性像を描いた人に贈られる賞なのだとか。

今年は女性への性差別問題の暴露が相次いだハリウッド。『ワンダーウーマン』の誕生は映画界だけでなく社会全体に大きな影響を与えたようです。


ダンシング・ベートーヴェン:「第九」をバレエを表現する

八雲ふみねが選ぶ2017年ベストムービー<洋画編>
今年は邦画洋画問わず、ドキュメンタリー映画の秀作が多くありました。この年末に公開となったのが、フランスの天才バレエ振付家モーリス・ベジャールの代表作「第九交響曲」の舞台裏をとらえたドキュメンタリー映画『ダンシング・ベートーヴェン』。

ベジャール・バレエ団と東京バレエ団、世界的指揮者ズービン・メータ率いるイスラエ ル・フィルハーモニー管弦楽団が奇跡の共演を果たした東京公演に密着。

度重なるリハーサル風景、舞台に挑むダンサーたちの悲喜こもごも。21世紀バレエ史上最高傑作と称されるステージが完成するまでを鮮やかに映し出しています。

日本の年末の風物詩“第九”を、ベジャールが作り上げた愛の世界とともに堪能してみてはいかがでしょう。
 

今年も「しゃベルシネマ」をご愛読いただき、ありがとうございました。
来年もより楽しんでいただける連載になるよう、努めてまいります。
良いお年を!

 

<作品情報>

ベイビー・ドライバー
2018年1月24日ブルーレイ &DVD&ULTRA HD発売!
監督・脚本:エドガー・ライト
出演:アンセル・エルゴート、ケヴィン・スペイシー、リリー・ジェームズ、エイザ・ゴンザレス、ジョン・ハム、ジェイミー・フォックス ほか
公式サイト http://www.babydriver.jp/

新感染 ファイナル・エクスプレス
2018年1月24日ブルーレイ &DVD&デジタル配信リリース、1月1日デジタルEST先行リリース
監督:ヨン・サンホ
出演:コン・ユ、チョン・ユミ、マ・ドンソク ほか
©2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.
公式サイト shin-kansen.com

カフェ・ソサエティ
Blu-ray&DVD&デジタル配信リリース中
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、ブレイク・ライブリー、スティーヴ・カレル、パーカー・ポージー ほか
©2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.
公式サイト http://www.longride.jp/movie-cafesociety/

ワンダーウーマン
Blu-ray&DVD&デジタル配信リリース中
監督:パティ・ジェンキンス
出演:ガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライト ほか
©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
公式サイト wonderwoman.jp

ダンシング・ベートーヴェン
2017年12月23日からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
振付:モーリス・ベジャール
監督:アランチャ・アギーレ
出演:マリヤ・ロマン/モーリス・ベジャール・バレエ団:エリザベット・ロス、ジュリアン・ファヴロー、カテリーナ・シャルキナ、那須野圭右、オスカー・シャコン、大貫真幹/東京バレエ団:上野水香、柄本弾、吉岡美佳/クリスティン・ルイス、藤村実穂子、福井敬、アレクサンダー・ヴィノグラードフ、栗友会合唱団、ジル・ロマン、ズービン・メータ
©Fondation Maurice Béjart, 2015 ©Fondation Béjart Ballet Lausanne, 2015
公式サイト http://www.synca.jp/db/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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