仮想通貨事件で昭和の大事件・ペーパー商法と原野商法を思い出す

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メタボな表現者・大谷龍雄が駆ける「昭和時間」

近頃の気になる話題は「仮想通貨」だ。ビットコイン、暗号通貨とも呼ばれ、昭和時間世代には中々理解し難い仕組みである。各国政府が保証する貨幣や中央銀行が発行する紙幣などの通貨に対して、仮想通貨の利便性や投機的なメリットを流布する記事やニュース、CMや飲み屋での話がかなり増えては来ていたが、ここでは仮想通貨の詳しい成り立ちや仕組み、不正防止の為のブロックチェーンなどについて語るつもりは無い。

仮想通貨事件で昭和の大事件・ペーパー商法と原野商法を思い出す

1月26日にコインチェックが運営する仮想通貨取引所のシステムが不正アクセスを受け、約580億円相当の仮想通貨「NEM」(ネム)が流出したのはご存知だと思うが、その後、金融庁や警察が事情を調べ始めており、関係者や仮想通貨に詳しい者たちが様々な立場で、勝手な見解を流し始めていることが、とても興味深い。ハッキングや安全性に関する話が多いのだが、不思議なのはコインチェックが「約26万人の顧客には日本円で返還する」「自己資金で賄う」と早々と宣言した点だ。「今後も事業を継続したい」という思惑からだろうが、どこに大金があるのだろうか。

仮想通貨事件で昭和の大事件・ペーパー商法と原野商法を思い出す

一部の解説者によれば「手数料で充分収益があった」というのだが、仮想通貨とは商品取引のような部分があり、「金の採掘」「金の売買取引」を連想すると分かり易いのだが、金が採掘されなければ、或は金の売り物が少なければ「供給が減り」、金を買いたい人が増えれば「需要が増え」て、結果として金の価値、価格が上がるようなものだ。金の売買取引を行うだけで、多額の利益が生まれるのだろうか。今のところ確証は無いが、ハッキングとは関係ない、昭和時間に騒がれた二つの経済事件のような匂いがする。

仮想通貨事件で昭和の大事件・ペーパー商法と原野商法を思い出す

さて、コインチェックの実態解明は専門家や当局に任せるとして、昭和時間コラムニストとして、思い出した詐欺の手口がある。もちろん、仮想通貨やコインチェックを詐欺としているのではない。全く違う話だが「ペーパー商法」と「原野商法」を思い出したのだ。ペーパー商法の代表的な事件が「豊田商事事件」である。昭和50年代半ば頃に始まった豊田商事、及びグループ会社などによる「金の地金取引の特性」を用いた悪徳商法(現物まがい商法)を手口とする組織的詐欺事件で、高齢者を中心に全国で数万人が被害に遭い、被害総額は2千億円近くと見積もられ、強引な勧誘によって契約させられた挙句に老後の蓄えを失った被害者も多く、首謀者の結末は、昭和60年6月18日、豊田商事会長の永野一男が大阪府大阪市北区の自宅マンションで、報道陣が取り囲む“目の前で”殺害された大事件となった。テレビ中継された衝撃の事件を記憶していれば、ピンと来るのではないか。

詐欺の手口は分かり易かった。金の取引や仕組みについては前述したが、客は「金の地金を購入する契約」を結ぶが、現物は客に引き渡さずに会社が預かり「純金ファミリー契約証券」という“証券”を代金と引き替えに渡す形式になっていた。手元に金の地金が無いため、客は現物を購入したのかは確認出来なかったのだ。豊田商事が客から預かったお金で金の地金を実際に購入していれば問題の無い話だが、実態は地金を購入せず、客は「証券という名目の紙切れしか手許に残らない」現物まがい商法(ペーパー商法)であった。豊田商事の営業拠点には金の延べ棒がこれ見よがしに積まれていたが偽物であり、客を信用させる為、知名度がある企業名と同系列を装い、ブランド名を悪用したテレビCMを多数放映したほか、主催イベントでは芸能人も起用し、ブランド力を利用した「豊田商事」の社名こそが、詐欺商法の入口だったのである。

仮想通貨事件で昭和の大事件・ペーパー商法と原野商法を思い出す

原野商法は更に古い詐欺手口であり、虚偽のリゾート開発や計画段階の新幹線や高速道路建設などの大型計画とリンクさせ「土地の値上がりが確実である」との虚偽の説明を行うなど、勧誘する地域とは遙かに離れた土地が投機目的の理由で説明されることから、現地を訪問して土地を検証するのが困難であり、訪問しても売る土地とは違う他人の土地に案内するなど様々な手口が用意されて、実は近年でも「水源地」詐欺などが横行しているものである。

ペーパー商法、原野商法は、書類上だけで存在しない商品や無価値の土地などを詐欺的に売るものであり、仮想通貨の基本原理とはもちろん違うのだが、金で言えば採掘にあたる「ビットマイニング」が的確にされていれば、セキュリティも含めてある程度の問題は回避される筈だ。つまりは、今回流出させた580億円の暗号通貨「NEM」を本当に所有していたのかどうかに興味がある。もちろん、ペーパー商法などとは思わないが、知識の浅い昭和オヤジには「現物も購入していた割には、余りにも儲け過ぎだ」と感じる。単なるバブル期の証券会社手数料収入のような「バブル的な儲け」であるだけかもしれないが、事件の真相解明と同時に、マウントゴックスとは異なり、コインチェックが早々と事業を継続させるとした、美味しい儲けのカラクリと深層が知りたい。

<大谷龍雄プロフィール>
祝! 連載150回。ニッポン放送モバイル(携帯)サイト会員限定で発信して来たが、この機会に「ニッポン放送ホームページに同時掲載する」事になった。新聞社に約15年勤め全国紙、スポーツ紙、夕刊紙、地域紙に携わった取材、プロデュースなどの経験を活かして独立。経営者、政治家、行政との関わりやプロデュース業の傍ら、政治、経済、文化、歴史、スポーツ、芸能からIRゲーミング、地域創生、サブカルチャー、スピリチュアルまで、日本の精神文化と言論の自由を守るコラムニストとして、体型に合わせた幅広い経験と知識、ギョーカイ人脈やオープンソースなどを活用した情報を基に「昭和時間」をテーマとした様々なジャンルを自由に紐解き、時宜に適う話題を“本質”で切る。同時に「何故か気になる読む習慣化」のために、メタボらしく“体重の増減”を発表している。

「メタボな表現者・大谷龍雄が駆ける「昭和時間」」は、ニッポン放送スマホ携帯サイトで連載中。ニッポン放送携帯サイトのアクセス方法は以下になります。
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