小池都政 ベビーシッター制度に新規予算を計上
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【新人記者あいばゆうなの取材記】
先週、東京都予算案の概要が発表されました。金曜日の知事の定例会見では、報道陣向けに予算概要の他、政策や事業に関する冊子が複数配られ、その厚さは合計3センチを超えていました。数多くの政策の中で目に留まったのが、新規で50億円計上された居宅訪問型保育事業いわゆるベビーシッター事業への予算です。この事業は、東京都が目指す3つのシティ(セーブシティ、ダイバーシティ、スマートシティ)の政策うち、ダイバーシティに分類され、待機児童の解消を目的とした政策です。
小池知事就任以来加速する待機児童対策ですが、日本で普及していないベビーシッターを活用するという発想は、知事の海外在住経験が活きているのかと感じさせます。
東京都のベビーシッター利用支援事業の予算案は、待機児童の保護者が認可保育所への入所が決定するまでの間、就労するためにベビーシッターを利用する場合、また、一年間の育休取得後、復職して、次の四月からの認可保育所等を申請する場合、一時間あたり1,750円、月28万円を上限として補助するというものです。
しかし費用面のハードルが下がったとしても、今の日本でベビーシッターが普及するかといえば、疑問も残ります。保育料金が高額であることの他にも、2つの理由があるだろうと考えます。
1つは、他人を自宅へ入れることへの抵抗感です。若いうちにルームシェアを経験することが一般的である欧米と、一人暮らしが普及する日本を比べてみるだけでも、留守中に面識が少ない人を、仕事とはいえ、自宅へ入れることのハードルは非常に高いと想像できます。
2つ目は、周囲に子育てから手を抜いていると思われることを恐れる人が多いということだと推察します。決してその批判は当たらないと思うのですが、なんとなく職場や近所の目が気になるという人もいるのではないでしょうか。ベビーシッター制度が普及する欧米では、夫婦で出かける時間を作るためにベビーシッターを利用することも普通で、抵抗感はないようですが、そういった利用の仕方は、日本ではまだ受け入れられないだろうという気がします。この事業がダイバーシティ政策の一貫と位置付けられていることも、このような事態が想定されているからかもしれません。
そもそもこのような保育に対する考え方の違いは、結婚しても夫婦は夫婦という欧米と、家を重んじる日本とでは、相容れないのかもしれません。その考え自体に善し悪しはなく、あくまで好みと選択だと思うのですが、教育水準や識字率も高い水準で保たれ、治安も良い日本では、他人は自分とは全く違う人間であるという根底の認識や危機感が薄く、自分の物差しで批判する人が多いのも現実です。悪気なく無意識ながらも、多様性を認めることに不得手だと感じます。
こういった中で制度を普及させるためには、制度と同様に力を入れて、多様性を認める精神性とパッケージ化してPRすることが必要になってくるのではないでしょうか。ベビーシッター制度をきっかけに、東京で子供を産み育てる人たちが、自由で多様な選択をし、フラストレーションなく生活できる住みよい東京に近づいていけばいいなと思います。