シリア内戦~勢力争いはまるで戦国時代

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3/1(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!②

ISが落ちた空間を取り合う新段階へ
7:02~高嶋ひでたけのニュースガツンと言わせて!:コメンテーター佐藤優(作家・元外務省主任分析官)

人道的休止 シリア 反政府勢力 モスクワ ダマスカス 反政府武装集団ドゥマ

2018年2月28日にダマスカス郊外Ghouta東部の反政府武装集団ドゥマ(Douma)が包囲する街で、政権崩壊以前に破壊された建物の瓦礫の中、シリアの民間人が生存者を探す様子。
ロシアは2日前に、市民が安全に逃げるために毎日5時間の「人道的休戦」を発表。反政府勢力とロシア政府の人道的な膠着状態に対し双方を非難し、シリアの東部Ghouta地域の民間人は2日目にしてこの申し出を忌避することになった。 / AFP写真/ハマ・アル・アズウィ 写真提供:時事通信

シリア内戦が新たな段階に~イスラム国の空白を取り合う戦国時代に突入

イスラム国が退潮し沈静化するかと思われたシリアの内戦は未だに混乱状態が続き、北朝鮮がシリアに向けて化学兵器製造に関わる物資を輸出しているとの情報も確認されている。元外務省主任分析官の佐藤優はシリアはもはや国家として機能しておらず、この内戦状態は日本の戦国時代と同じ状況に入っていると指摘する。

高嶋)シリアの内戦ですが、戦力争いが新段階に入っています。何やら停戦とかで上手くいっているのかなと思ったら、反体制派攻撃を政権側はむしろ強化しているという面もある。
そしてもうひとつのニュースで、北朝鮮がシリアに対して化学兵器の製造に使えるという物資などを輸出して、ミサイル技術の開発にその金を充てていると、国連の北朝鮮制裁委員会が発表しました。
ここまで混乱してしまうと、表も裏もどのように判断して良いのか分からないというような状況なのですよね。

佐藤)まず“シリア”という国はもう存在していないと考えた方が良いです。シリアの中にいくつかのグループがあるだけであると、こういう風に考えた方が良いです。その中で、今まではその全体において一番の脅威だったイスラム国が無くなった。真空ができたらどうなるか、皆そこの取り合いになりますよね。こういう状況になっているということです。

高嶋)日本で言うと戦国時代みたいなイメージですか?

佐藤)まさに戦国時代なのです。それで群雄割拠の状況になって、ある大名が潰れてしまったと。そうしたらその空白を取れということになる。こういう状況が生じているわけですね。

高嶋)今そういう感じですか?

佐藤)シリアという国はもはや存在していない。地図上にシリアの残骸にあたる部分のところに“シリア”という名前が書いてあるだけと見た方が良いと思います。だからこの状態が続きます。
それでお互いの力の近郊線が決まったところでまたしばらく平穏になるという感じで、それでまたどこかの勢力が潰れるとまたその空白を埋めるということが続いていくという、血を血で洗うような戦国時代が相当続くというようなことだと思います。

高嶋)平和でこうなったわけではないと?

佐藤)違います。

高嶋)今はむしろ大変なストラグルがあるのだということですね。

シリア内戦~勢力争いはまるで戦国時代

北朝鮮がシリアに化学兵器物資を輸出~武器商人が暗躍する混乱状態のシリア

佐藤)その中で北朝鮮というのは儲かれば何でもやるのです。だからミサイルと核の開発の為に少しでも外貨を得られれば何でも良いという形で、毒ガスの材料になる物でもミサイル技術でも何でも売るのですね。

高嶋)もう人道も平和も蜂の頭も無いと。

佐藤)そういうことです。そういう状況になっているということで、大混乱のところは使えるのです。
あともうひとつ、日本の報道ではほとんど出ていないのですが、こういう混乱をすると武器商人が暗躍するのです。犯罪組織に流す武器というのは今シリアで簡単に調達できるのですよ。だから武器商人に流す武器というのもおそらく北朝鮮のような国にとっては良いビジネスチャンスになるでしょうね。だから混乱は金になるのです。

高嶋)北朝鮮にとっては国連の制裁決議、それから各国が協力していろいろ締め付けをやっていますが、蛇の道は蛇というか、いろんなことで生き延びることができるということですね。

佐藤)北朝鮮にとって重要なのは目的が合理的なのですね。核兵器とアメリカまで到達する大陸間弾道ミサイルを持てば生き残れるから、それができることなら何でもやるという話なのですよ。

アサド政権の立ち位置

高嶋)アサドさんというシリアの大統領も、結局ロシアの助けで何だかんだ言って生き伸びてしまいましたね。

佐藤)ロシアと、あと静かに助けている国がもうひとつあるのですね。これがイランです。それから「このままで良いよ」というメッセージを出している意外な国があるのです。イスラエルです。
イスラエルとシリアは過去4回戦争をしていますけども、イスラエルの底力を知っていますから現状を絶対にアサド政権は変えないです。イスラエルはゴラン高原を占領している状態にあるのですが、この失地回復とか絶対にやらないですから。これがまた別の政権ならやる可能性があるわけですね。

高嶋)ある意味で“不安定の安定”みたいなところに入ったということですかね。

佐藤)そういうことです。だからダマスカスとシリアの北西部、この山岳地帯はアラウィー派といってアサドさんと同じ宗教グループが握っているところなのですが、ここは安定していますから「ここだけ安定していればとりあえず良い。ここまで混乱にならないでくれ」ということが、とんでもない政権を生き残らせる原因になっているわけですね。

高嶋)調べると人口は1,800万と出て来ますけども。

佐藤)アラウィー派と他のドゥルーズ派を入れて16%。クリスチャンも10%いますからね。74%の国民は率直に言うと国民と考えていないと。だから毒ガスを平気で使うという、こういう体質の国なのですね。あれは国ではないです。

高嶋)国は消滅したと。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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