ラッカ奪回も残っていたのはISの下級戦闘員だけ 佐藤優

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10/19(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①

幹部たちは中央アジアや中東各地に脱出
6:30~ ニュースやじうま総研ズバリ言わせて!:コメンテーター 佐藤優(作家、元外務省主任分析官)

シリア民主軍

2017年10月17日、シリア民主軍(SDF)のメンバーがRaqaの象徴的なAl-Naim広場で旗を掲げている。 米国が支援した軍は、イスラム国家グループからラッカを完全に支配し、事実上のシリアの首都で彼らの粉砕された "カリフ制"の最後のジハード主義者を撃退したと述べた。 / AFP PHOTO / BULENT KILIC 写真提供:時事通信

クルド民兵組織『シリア民主軍』がラッカ奪還~幹部はすでに各地へ脱出

クルド民兵組織は、イスラム国が首都とするラッカでの軍事作戦を終え、完全に制圧しました。しかし幹部たちはすでに中央アジアや中東に逃げ出しており、いつ復活するかわかりません。民族問題が複雑となる中東情勢について、佐藤優さんに詳しく伺います。

高嶋)アメリカも肩入れをしていたクルド民兵組織『シリア民主軍』がラッカでの軍事作戦ほぼ終了と。毎日その映像が流れていますが、プロの佐藤さんから見ると今回の真実はどのようなことでしょうか。

佐藤)ラッカを中心とした地理的なイスラム国の支配は終わったということです。最後までラッカが残っていたのは自爆テロ要員だけですからね。

高嶋)6,500人が自爆要員?

佐藤)自爆テロのチャンスを狙っている下級戦闘員です。すべての幹部はすでに中央アジアや中東の各地に逃げてしまっています。

高嶋)ばらけただけということですか?

佐藤)そういうことです。今後危険なのは中央アジア、フィリピンのミンダナオ島、エジプトですね。種がばらまかれたわけですから、芽が出る可能性が十分にありますよ。

アサド政権をつぶしたいアメリカ、守りたいロシア

高嶋)ロシアが空爆し、アメリカもクルド民兵組織に武器を与えて応援している話ですけど。具体的な力関係はどうなっているのですか?

佐藤)力関係としては複雑なゲームとなります。一番大きな役はイスラエルで、意外と姿が見えませんがクルド民兵の背後にいます。軍事顧問などでかなり介入をしています。

高嶋)あまり伝わらないですね。

佐藤)見えないようにやっています。もしアメリカ人だけでやっているのであればラッカは落とせません。細かいやり方とかそういうことに関することはイスラエルの軍事顧問がいないとできないと思います。ロシアもアメリカもイスラム国は潰したいけど、トランプは力があればアサド政権を潰してもいいと思っていて、ロシアはアサド政権を何としても守りたいと思っています。さてイスラエルはどうなのかというと、実はロシアに近いです。アサド政権と4回戦争をしているわけですけども、お互いにどういうものか知っている。ゴラン高原をイスラエルが占領していますが、この状況を崩したりはしないと。だからアサド政権はいてくれたほうがいい。公にはそうは言えないからアサド政権ときちんと住み分けをする。クルド民兵組織というのは大変にプラスです。

高嶋)中東戦争はしたくないけど、アサド政権も潰しちゃったらちょっと面倒くさいことになる。

佐藤)アサド政権は悪い政権ですけども大混乱よりはマシだという発想ですね。今後深刻なのはトルコへの波及です。トルコのクルド人は独立したがっています。イラクで住民投票をやってトルコが独立国家宣言をした、そして今回、イスラム国をクルドが掃討したことになると、クルドのナショナリズムが勢いづきます。そうするとトルコの中にもその影響が及んできます。ですから中東の問題がしばらくクルド問題になってくると思います。

高嶋)クルドも国を持たない民族と言われて、右往左往して。相当過激で激しい人も多いそうで。

佐藤)そういうグループもいますね。中東情勢というのはイスラム国の拡散と今度は民族・部族の対立でまた混迷してくると思います。

高嶋)結局ロシアとアメリカの関係はどうなっていきますか?

佐藤)ロシアとアメリカの関係においては、中長期的にはアメリカの影響は減っていき、ロシアの影響が強まっていきます。先日サウジアラビアの王様がロシアを訪問して国賓として大切にされていますけど、あれを見ても構造が大きく変わっているのがわかります。

1つの民族が独立すると9つの民族が独立できない

高嶋)イスラエルは何となく不気味な国だと思いますが、冷静に見て遠慮なくやって手を打っているのですね。

佐藤)あの国はそういった情報の収集能力と、収集した情報をそのままファイルに入れて使いますから。それからいろんな非合法に対しての工作能力が高いです。しかも自分たちの存続にかかわる話ですから。これはもう何でもやります。

高嶋)あり得ない話ですが、クルドやロヒンギャとかをニュースで見ていると、みんな破壊されたところでうろうろしているだけで、国を持たない人たちに国を分け与えるというか何かできませんかね。

佐藤)その方向でやるべきですよ。それが独立国家なのか自治州なのか連邦制なのかともかく、集中してある民族が住んでいるところは高度な自治を認めないともたないですよ。

高嶋)そういう流れは感じられますか?

佐藤)例えばスコットランドであるとか独立住民投票を行っていますが、EUにスコットランドの代表を送っていますので、イギリスも自治は尊重しています。ベルギーではワロン人とフランドル人の間というのは県でかなり保障されていますから。

高嶋)そういう流れが加速して行けば世界が良い方向に進むと考えられると。

佐藤)そういう方向で安定してほしいですけどね。1つの民族が独立すると9つの民族が独立できないと言われていますから。これから民族問題は複雑になります。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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